レズビアン
第二十九話~女の子のほうが気持ちいいの巻
「五千円じゃあガールズバーには行けないよなあ」
唐突に言うので僕ら二人は吹き出した。
「だから貴様はアホなのだ、鳩羽よ。男に興味を持てと鳳{おおとり}も言っておっただろうが」
「だってぇ、女の子のほうが気持ちいいんだもん。仕方ないじゃんか」
僕は店内に誰かいないかきょろきょろした。若い集団が一組だけいるが、まさか声は届かないだろう。
「てか、あたしはレズだもん。やっぱり、にひひ」
「薄気味の悪い笑い方はやめい。アホの鳩羽には公衆道徳観念が欠けておるな。飯を食いつつの話題か? それが」
「んなこと言って、少尉だって風俗くらいは利用――」
「せんわ! 吾輩はな、その昔、死に別れた恋人に義理立てをしておる」
「ええ? それって嘘だろう」
「まあ嘘なのだが、女になんぞ興味はない吾輩の、唯一の同業が、アホの鳩羽、貴様であるとは既知であろう」
「おお、少尉の事務所にエアコンが付いたら、また以前通り入り浸ってゲーム対戦でもしようぜ」
なんだかんだ言って仲良しなのである、この二人は。
僕もよくお邪魔させてもらっているが、両事務所には最新ゲーム機とレトロゲーム機が置いてある。
延々とゲームをする二人の姿は、ゲーマーの言葉が相応しかった。
さて、今の会話には一つタロンに関するヒントがあった。「あたしはレズ」の部分である。
チェリービーンズでのタロン、阿久津礼二{あくつ・れいじ}なるあのナンパ男の誘いを断っていたことがそれだ。
ミサキ氏は二枚目男には興味がなく、女性が好きなのだった。いわゆるレズビアンというあれである。
「しっかし、いいよなぁ、三百万はさ」
「アホの鳩羽よ。金を貸せなどと言い出すなよ。鳳の所での会話、忘れた訳はなかろうて」
「友達同士での金の貸し借りはすんなって、あれ?」
「うむ。今回の獲物は見つけたのこそアホの鳩羽が先だったが、結果的に吾輩の拳で決着したのだ。報酬は吾輩が受け取るのが筋というものだろう?」
二人の会話とは別で僕はミサキ氏とどこかの女性との濡れ場を想像していた。だって学生なんだもの、とか。




