三百万円
第二十五章~我がカイザーナックルに栄光あれの巻
「さて、鳳{おおとり}よ。今回の報酬だが、現金一括で至急頼まれたい」
「報酬? 防犯カメラも見ていないのに、まだよ」
大道少尉氏の言い分に鳳氏はそっけなく返した。
「も、目撃者がおるであろう、天海{あまみ}嬢にそこの店主、アホの鳩羽と。どうだ?」
「なんだか必死だわね。真実{まなみ}は酔っ払いだし、辻さんは隠れてたらしいし、唯一は美咲だけだけど……」
「あたしはきっちり見たぜ? 蘭子{らんこ}ちゃん」
ミサキ氏がカクテル片手に返した。ガンベルトは装着されたままだった。
「君は?」
僕はとわれて、はい、と答えた。
「あれはたしかにタロンでしたよ。以前僕が襲われたのと同じ姿でしたし」
「ちなみに葵{あおい}は?」
「うちは煙草吸うてたから、最後にちらりと見た程度やで?」
各々の意見を聞き、鳳氏はうーんと唸った。
「タロンアラートが出てEMRドップラー装置に反応があったのは事実だし、多数決でどうやら間違いないというところね」
よっしゃ、とガッツポーズは大道少尉。
「吾輩は遂に栄光とエアコンを入手したのであった! 我がカイザーナックルに栄光あれ!」
「ただし――」
鳳氏が制して、一拍置いて続ける。
「三百万もの現金を一括で、となると急には用意できないわよ、さすがのウチでも」
三百万円? 僕は驚いた。ミサキ氏と大道少尉はそんな大金を稼ぐ仕事をしていたのか、と。タロン退治とはそれくらい危険な仕事なのだな、とも。
「な、なるべく早く頼むぞ、鳳よ。吾輩の命に関わる大事なのだ」
「なんや、気前のええ話やんな。ええ具合のバイクが買える金額やんか、それ」
咥え煙草の露草氏がのんびりした調子でバドワイザーを飲んでいた。
「ちぇっ、今回は出遅れたぜ。折角の獲物だったのになぁ。てか、譲るんじゃあなかった」
ミサキ氏がぶつぶつ文句を言っている。気持ちは分かります、ええ。




