バリソンナイフ
第二十三話~真・カイザーナックルの巻
「ふふふ、やってくれますねぇ。ではこれはどうです?」
アルマーニ男の手にはバリソンナイフがあった。これには天海{あまみ}氏の悲鳴があがる。
「ふむ、アホの鳩羽よ。前言撤回で、こやつは吾輩が始末してくれるわ」
言いつつ大道少尉が手にしたのは純銀のメリケンサックであった。
「お、おう。お手並み拝見といこうじゃないか。でもヤバくなったら撃つからな?」
ミサキ氏は返しつつカクテルを片手にくつろいでいた。
ちなみに、こういう事態での僕の役割は民間人の避難誘導などであったりする。
「そら!」
バリソンナイフが空を切る。大道少尉はそれをかわし……。
「見よ! 吾輩の必殺! 真! カイザァァァ!……」
拳をためる。
「ナックルゥゥ!」
ずどん! と鈍い音がして、今度はアルマーニ男の体が宙に浮く。そして、一拍置いてから「それ」は出現した。
地獄の使者、背翼と鉤爪を持つ怪物、タロンである。
悲鳴はまたもや天海氏と、他に辻店長からも。まあ当然であろうが。
「出おったか、タロンめ。吾輩に会ったが最後と思うがいい。真!――」
タロンの鉤爪が迫るが、大道少尉は構わず続ける。
「カイザァ! ナッコゥ!」
ボクシングでいうストレートのように拳はタロンの顔をとらえた。ダメージがあったらしくタロンはあからさまにひるんだ。
終始、シャアシャアと悲鳴をあげるタロンは鉤爪を振り回して暴れ出すが、大道少尉は攻撃をスウェイでかわしつつ、拳を叩き込み続ける。
「ふん。吾輩にそのような攻撃は通用せぬわ。冥途に帰るがよい! 真・カイザーナックル!」
ちなみに、いちいち技名を叫ぶのは彼の美学である、念の為に。
どすん! と一撃が決まると、タロンはバーカウンターにぶち当たり、大人しくなった。
「なんやえらい騒ぎやんなあ。ここは静かに飲むお店やで?」
露草氏がやってきて、ラッキーストライクをタロンの額にぎゅう、と当てた。
一方の天海氏は目が点になっていた、それはそうだろうが。
「ふむ。これにて一件落着であろう。店主よ、冷えたビールを一杯貰おうか。無論、あやつのおごりでな」
見るとタロンは既に灰化を始めていた。タロンは死滅すると消滅するので、その死骸を研究することができないのである。
「おお、おみごと……って、あたしの活躍はなしかよ!」
ミサキ氏は叫び、僕はほっとしたりやれやれと思ったりした。




