大いなる謎
第十九章~ウェルシュコーギーのパピーの巻
チェリー・ビーンズは郊外にあるこじんまりとしたショットバーで、店長は辻というバーテンダーが務めている。
サンバーバンとアキュラSUVで乗り付けた僕らが入店すると、客はまだまばらだった。
ジュークボックスが置いてあるオシャレなバーで店長・辻氏のこだわりがうかがえる。
「いらっしゃいませ。今日は随分とまた大勢なのですね」
辻氏が言うと露草氏が「まあな」と軽く返した。
「辻さん、こんばんは。私はいつものね?」
天海{あまみ}氏が続く。二人はここの常連なのである。
「ほかの方は?」
「うーんと、あたしはカルピスのカクテル、ノンアルで」
「吾輩はキンキンに冷えたビールを貰おうか」
「僕は、えと、何か炭酸あります?」
ミサキ氏、大道少尉、僕は揃ってオーダーする。残るは露草氏だがさっそく煙草を咥えていた。
「うちは喫煙スペース利用して、一人静かにバドでも飲んどくわ」
オーダーが出そろったので辻氏はバーカウンターに引っ込んだ。
と、天海氏がスマホを取り出して動画を見せてきた。
「うちのパピー、可愛いでしょう!」
スマホの中ではウェルシュコーギーの小型犬が走り回っていた。河川敷でフリスビーを投げて、それをキャッチする、という繰り返しは、確かに可愛らしかった。
「真実{まなみ}ちゃんはパピーよりも男つくれ」
ライダースジャケットを羽織ったミサキ氏が返した。エアコンばては随分とマシになったようで、店内空調を堪能していた。
「そうね、それもいいかも。て、そっくりそのまま返すけれどね」
くく、と含み笑いで天海氏が応える。
二人とも、ミサキ氏も含め相当の美人だが、不思議と浮いた話は聞かない。大いなる謎の一つである。




