アキュラSUV
第十八章~月詠六郎は物静かの巻
僕らが談笑していると「ラストオーダーなんですが……」とカフェ店員が申し訳なさそうに呟いた。
時刻はもう二十時だったので当然だろうが、一人、大道少尉だけが不満げだった。
「ねえ、私、飲みにいきたいんだけど? 合流してまだいくらも経っていないしね」
天海{あまみ}氏が提案してくる。この人は車だが運転手兼執事の月詠六郎{つきよみ・ろくろう}氏がいるので問題ないらしい。
「うーん。せやったらうちは真実{まなみ}の横に乗せてもらって、ラベルダちゃん、置きっぱなしは心配やけど、まあ問題ないやろ。みんなはどないする?」
露草の提案にみな、しばし思案。我らがミサキ氏は実は下戸であり、かつエアコンばての最中。大道少尉は全く問題がない。かくいう僕は運転手なので飲めない。が、外が熱帯夜だと分かっているので全員が天海氏の提案に乗ることにした。
「辻さんのバーでいいわよね? そうれ、レッツゴー!」
「テンション高っ。うちはここの会計すましてくるから、みんなは外でといてえや」
こうして僕らは露草葵氏の主催のカフェ巡りを終え、今度はバーにくりだすことになった。
僕ら三人はまるで蒸し風呂のようなサンバーバンで待機し、アキュラSUVに乗る月詠氏と目が合ったので会釈した。
僕はこの月詠という初老とは会話したことがないが、物腰が柔らかくて無口、印象は悪くない。
皆で向かうのはカフェ・ビーンズの姉妹店でもある、チェリー・ビーンズというのだが、スマホなどで「ビーンズ行こう」とやり取りしているといちいち説明しないと困るので厄介なのだった。




