お嬢様
第十六章~AMAMIブランドの巻
大道少尉がホットドッグを貪る。アメリカンスタイルの実にボリューム感あるホットドッグだった。
天海{あまみ}氏について少々。
私立桜桃{おうとう}学園理事の彼女は、いわゆるお嬢様なのである。
家族が服飾関連大手のAMAMIブランドと飲食業を営んでおり、実家にはメイドさん、普段は月読{つきよみ}という初老の付き人がおり、実際のところ働かずでも遊んで暮らせる身分なのだ。
そんな彼女、天海真実氏が肩をバキバキにさせているのは、これはもう彼女の生き方なのだろう。
AMAMIブランドを羽織るがそれ以上過剰にブランド志向ということもなく、実に清楚である。こういう人を人格者と呼ぶのではないか、僕は思った。
ちなみに天海氏へのNGワードは「お嬢様」。彼女はそう呼ばれることを極端に嫌っていて、これは幼少期のトラウマらしい。
鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏と露草葵{つゆくさ・あおい}氏、そして我らが鳩羽美咲とはもう随分と長い友人らしく、大道少尉とも交流がある。
「少尉さんたら、美味しそうに食べるのね。私、ご飯まだだから何か注文しようかしら」
天海氏がにこにことしつつ、メニューを見ていた。
「ああ、今日は葵のおごりだったかしら? じゃあこのレタスピラフでも頂こうかしら」
「ん? おごりでええけど今度は割り勘な?」
露草氏はアイスコーヒーを一口、また立ち上がった。
「葵ったら、まだ煙草? いいことなんてないわよ? 喫煙なんて」
「そんくらい自由にさせてえや。好きで吸うてるんやし、ニコチン切れたら、うち、倒れてまうがな」
そう言い残し露草氏は再び灰皿へと消えた。




