インテリ版の大道少尉
第十一章~熱中症アラートの巻
「ごちそうさまでした」
三人揃って露草氏の所に戻り、一礼した。
「ええねん、あれくらい。困ったときの何とやらや。若い三人が腹空かせてるのを見るんも忍びないしなあ」
ラッキーストライクをぷかぷかさせつつ、露草氏は、何でもないといった風に言って見せた。美人の上に優しいとは最早完璧ではないか、そう思う、心から。
「それにしても、熱中症アラート出てる最中でエアコンないとか、あんたら死ぬで? 少尉はともかく美咲は気ぃつけんと」
僕はそれに対してはははと笑って見せるだけだった。だからエアコンを買ってくれ、などと言いかねない大人二人を制するために。
「そういえば露草よ。お前、懐具合はいかがな――」
「蘭子ちゃんところのコーヒーは旨いねー!」
大道少尉がいきなり言い出しそうになったのでミサキ氏が慌てて遮る。全くこの方は、食堂での会話をすっかり忘れてしまっているのか、或いはわざとなのか知らないが恐ろしい男である。
「なんだあ? 俺だって長らく飲んでいるが、別段普通だぞ? もっと上等なのを出す店は幾らもあるだろうに」
マルボロ・マイルドを咥えた乾氏がミサキ氏に返す。この乾源一{いぬい・げんいち}という男性は、インテリ版の大道少尉といった印象であるが、比較的無口なので存在感はやや薄いのだった。
「ああ、いや、そっかなー? ははは」
濁すミサキ氏に、乾氏は怪訝な表情でマルボロ・マイルドを吹かしている。
「変な二人ね」
メンソールを咥えた白衣の鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏が、こちらもコーヒー片手に割って入った。全くである。




