シャワー滝行
第十章~お願いですからまともに働いて稼いできてくださいの巻
「吾輩思うのだが、このままここの宿泊施設を利用させてもらうというのは妙案であろう。事務所に戻ってもこの猛暑だ」
大道少尉がとんでもない発言をしだしたので僕とミサキ氏は飽きれて食べかけをこぼしそうになった。それでは文字通り居候である。
「いやいや、まてよバカ少尉。さすがにそれは人としてどうかと思うぜ。あたしは一刻も早くエアコンを購入するために、蘭子{らんこ}ちゃんからお金を借りるってのに一票だな」
こんどは僕だけが飽きれた。
「美咲さん。友達同士でのお金の貸し借りは良くないって、僕の先生が言ってましたよ?」
至極当然な節理を解く僕に対して、ミサキ氏は、ぶーぶーと反論する。
「んじゃあ乾{いぬい}さんは?」
何が、んじゃあ、なのか。この人は人の話を全く聞いていないのだろうか。
「ああ、葵{あおい}ちゃん。彼女、気前いいからさ」
「誰であれ一緒ですよ。お願いですからまともに働いて稼いできてください」
答えたのは大道少尉だった。
「それがかなわぬからこそ、我々はここにおるのだぞ、少年よ。さすがの吾輩もシャワー滝行だけで越せる夜は限られておる。切迫しておるのだ」
「……ああ、ここで蘭子ちゃんからアラートが出れば、万事解決なんだけどなあ」
アラートとはタロン警報のことだが、この人は発言が物騒なのだ。
「諦めて事務所に戻って、何かしら依頼が入るのを期待しましょう、そうしましょう、はい」
「少年よ、世の中そんなに甘くないのである。吾輩の預金残高が幾らか、教えてやろうか? 泣けてくるぞ」
タロンを退治するエクソシストと言えば英雄扱いなのだが、実際はこの始末である。世の子供の夢を壊しかねないこの大人二人はやはりダメ人間だな、僕は思った。




