喫茶店
第十二章~うち、今月は懐具合がええねんの巻
時刻は十八時過ぎになっていた。さすがにこれ以上、研究所で粘るのも限界かと思えた。
「それじゃあ僕らはそろそろ……」
ミサキ氏と大道少尉がぎろりと睨んできた。しかしである。仮に今日ここに泊めてもらったとして、明日以降はどうするつもりだろうかと。まさかそのまま居つく訳にもいかないし、鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏がそれを許してくれたとしても、大人として駄目だろう。
「あら、もう帰るの? まだまだ外は蒸してるわよ?」
鳳氏がやさしく声を掛けてくれるが、それに甘える訳にもいかない。
「なんだい。みんなそろっておいとまかい?」
乾{いぬい}氏も煙を吹きつつ言う。
「ほなら、うちもそろそろ退散しようかいな」
露草氏が椅子から立ち上がる。そしてこう続けてくれる。
「自分ら、金欠なんやろ? 外はまだ暑いし、うちが喫茶店にでも案内したろか? 当然、奢りで」
何度目か忘れたが、露草葵{つゆくさ・あおい}氏はなんていい人なのだろう。僕らはうんうんと頷いた。
「葵{あおい}ちゃん、サイコー!」
「見直したぞ、露草よ」
対する二人は、特に大道少尉は、もっと感謝してもいいと僕は思った。
「ではお言葉に甘えて、ごちそうになります」
僕は最大限の感謝を述べた。
「お茶くらいでそんな、大袈裟やな。うち、今月は懐具合がええねん。せやからご馳走するんも問題あらへんで」
美人でグラマーで白衣が素敵な露草葵氏は、僕には女神に見えた。




