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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第1章:異世界生活を軌道に乗せる

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第6話:思念ダンジョンと幻獣

 自分が所有者である。

 もしくは所有者の許可を得た。

 これが道具と≪ロイヤリティ契約≫を結ぶ条件として導き出された仮説だ。

 そして、この仮説は検証の末、ほぼ間違いないという結論に至った。


 問題はどうやって利益を得るかだ。

 経験値であれば、魔物と戦う者に。

 お金であれば、大金を稼ぐ人間に。

 そうしたスペシャリストに、自分の道具を選んでもらう。

 この目標が達成できたならば、それはもう職人として大成した後だ。

≪ロイヤリティ契約≫を活かしたいだけで、据える目標ではない。


 許可を得ることも難しい。

 相手の所有物なのに、俺に対価として支払えと要求するのだ。

 こんな要求を呑むのは、先行投資と称して近づいてきたエスネアだけだろう。

 俺の≪ロイヤリティ契約≫は間違いなく優秀なスキルだ。

 しかし、有効活用するにはハードルが高すぎた。


「せめて契約解除ができたらいいんだけどね」

「契約解除できればなんとかなるのか?」

「うん。だって経験値なら、お金で買えばいいじゃん」

「どういうことだ?」

「ゼビーを払えば、経験値を吸わせてくれる冒険者はいっぱいいると思うよ」


 Sランク冒険者の武器に≪ロイヤリティ契約≫を結ぶ。

 その武器でたくさん魔物を倒してもらう。

 対価として俺たちはゼビーを支払う。

 これがエスネアの提示したスキルの活用方法だった。


「……対価で支払うゼビーはどこから出てくるんだ?」

「そこは先行投資してあげるからさ」


 ……また、頼りきりになってしまうのか。


「とりあえずは契約解除を覚えるため、レベルを上げろってことだな?」

「うん。後は何か覚えられそうな体験だね」


 スキルの取得には、レベルを上げるだけじゃダメなのか。

 ややこしいな。


「ならば、またスロウスタートルの駆除に向かおう」


 スロウスタートルの経験値は1匹あたり15しか得られない。

 それでもまだ俺のレベルなら、悪くない狩場だろう。


「途中まで一緒にいこうか」

「途中まで?」

「うん。だってスロウスタートルなら、佐伯くん一人で十分じゃん」

「それはそうだが、変異種にはどう対応すればいい?」

「同じように倒せばいいよ」

「えっ……」

「スロウデスタートルも陸には上がってこないもん」


 ……変異しても根本は同じか。

 あいつらの防衛本能はどうなっているんだ?

 生物としての欠陥があるとしか思えない。


「はははっ、なら安心だな」

「じゃあ、行こう」

「ああ」


 俺たちはそれぞれの目的地へ向かう。


「あっ!」


 その途中、エスネアは何かに気づいたようだ。


「どうした?」

「思念ダンジョンを見つけたよ」


 エスネアは俺にこっそり耳打ちした。


「思念ダンジョン?」

「恨みつらみが実体化したダンジョンだよ」

「……それってめちゃくちゃ危険じゃないか?」


 当然魔物はいるし、人を襲うこともあるだろう。

 魔物が外へ溢れ出す危険性もある。

 それなのにどうしてエスネアは嬉しそうなのか?


「大丈夫だよ。ダンジョンマスター以外は、佐伯くんでも対処できそうだもん」

「もう≪鑑定≫済みかよ!」

「うん。場所はあの建物だよ」


 エスネアは再び耳打ちする。


「……何で普通に話さないんだ?」

「決まってるじゃん。先を越されないためだよ!」

「いや、先を越されるってなんだよ!」

「まずは中に入ろっ!」


 エスネアは俺の手を引っ張り、近くの一軒家に駆けこんだ。

 とりあえず今日の予定は、変更となったようだ。


「はっ?」


 引っ張られながら入ったダンジョンには、俺のよく知る光景が広がっていた。

 高校近くの最寄り駅だ。

 まさか地球に転移したのだろうか?


「どうしたの?」


 エスネアは不思議そうに訊ねた。


「俺はここを知っている」

「えっ?」

「どうせなら、俺の通っていた高校まで案内しよう」


 今度は俺がエスネアを引っ張るように先頭を歩いた。

 信号のある横断歩道、そこで俺は信号が青になるのを待っていた。

 車は一台も通っていない。

 人も全く歩いていない。

 いるのは電線に止まっているカラスだけだ。

 そのカラスたちは、なぜか全員で俺に視線を注いでいた。

 あまりに不気味な光景だ。


「佐伯くん、注意して!」


 注意を促すエスネアの声を聞いて、俺は気づいた。

 ここは俺の知っている地球ではない。


「ああ、分かった」


 エスネアに返事をすると、電線に止まっていたカラスたちが次々と俺のほうへ向かってきた。

 こいつら、魔物に違いない!

 俺は槍を握って、カラスたちに応戦した。

 カラスたちはクチバシで突いてくるが、不思議と痛みは感じなかった。

 これが低レベルの魔物と戦う感覚か。


 俺が襲い掛かって来たカラスたちを殲滅すると、その肉体は煙が上がるように分解されていった。

 ゲームで魔物を倒したときのような演出だ。


「同じ魔物でもスロウデスタートルとは、根底から違う存在みたいだな」


 変異体のスロウデスタートルは、死んでもその場に肉体が残り続けた。

 正直、同じ魔物とは思えない。


「思念ダンジョンの魔物は幻獣だからね」

「幻獣?」

「魔物って三種類いてさ──」


 エスネアは魔物の分類について説明してくれた。

 元々は普通の動植物だった存在が、魔素によって変異した変異体。

 思念ダンジョンによって生み出された幻獣。

 人工的に作られた物体や魔力で生み出された無機生命体。

 この三種類に分類されるらしい。


 幻獣は死亡するとそのまま消えるため、皮や爪を剥ぐことはできない。

 一方で全く違うアイテムを落とすこともあるらしい。

 その特徴はゲームに出てくる魔物そのものだ。

 元々が普通の動植物だった変異体と違って、血が飛び散ることや、臓器が破裂することもない。

 純粋な生命ですらない。

 まるで好き放題殺していいと、認められたかのような存在だった。


「ところでさ、佐伯くんはここを知ってるんだよね?」

「この光景はな」

「じゃあ、ダンジョンマスターが誰か分かる?」

「恐らくは日之影だ」


 昨日出会った片浜の話では、追放されなかったクラスメイトは全員生きていた。

 もちろんダンジョン化の話もなかった。

 この時点でダンジョン化したのは、湊か日之影の二択に絞られる。

 湊なら思念でパパ活現場、もしくはコスメやファッションを映すだろう。

 消去法で考えたら、ダンジョンマスターは日之影以外にあり得ない。


「その人のスキルや性格って分かるかな?」

「ああ……」


 俺は日之影の人柄をエスネアに説明した。

≪鑑定≫で見てきた人々の傾向をもとに、日之影のイメージを固めておくらしい。


「それじゃ高校ってところまで案内をお願いね」


 エスネアは日之影が高校にいると睨んだのだろう。

 その判断は恐らく間違っていない。

 この付近で彼が恨みつらみを募らせる場所は高校しかないからだ。


「分かった」


 思念ダンジョンの高校へ向かう途中、俺はエスネアが言っていた「先を越される」の意図を確認した。

 どうやら思念ダンジョンの最奥にあるコアが競争の原因らしい。

 高値で取引されるからだ。

 コアはダンジョンの核であり、機能を停止させると崩壊が始まる。

 だから当然、コアを手に入れられるのは一人だけだ。


「なんか気持ち悪い魔物ばっかりだね」

「同感だ」


 蜘蛛やミミズ。

 この思念ダンジョンには、気持ち悪い、不吉といった悪印象を与える幻獣ばかりだった。

 日之影の内面が影響しているのだろう。


 俺は出来る限り、自分の手で幻獣を始末していた。

 自分の経験値にするためだ。


「ここが俺たちの通っていた高校だ」


 とはいえ、この一帯は明らかに現実のものとは違う。

 まるで魔界を彷彿とさせる紫色の空が、辺りを覆っていたからだ。


「ビンゴだね」


 エスネアは≪鑑定≫で、内部の状況を把握したのだろう。

 ここから先は彼女に案内してもらったほうがいい。


「日之影がどこにいるか分かるか?」

「入り口のすぐ近くにいるよ」


 エスネアが指を差した方角は一年次の教室だ。

 日之影の思念体──ダンジョンマスターはそこにいるのだろう。

 俺たちは昇降口前に立ちはだかる幻獣を打ち倒しながら、日之影の思念が籠った教室へと進んだ。

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