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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第3章:視野を広げる

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第27話:≪メイクアップ≫なりきり疑似スキル発現!

「イチャつくのはそのあたりにして、次の話に移らない?」


 せっかくバカップル気分を満喫していたのに、平然と水を差しやがった。

 とはいえ、湊は俺たちのイチャつく姿を見ても楽しいはずがない。

 むしろ有意義な雑談の時間を中断しただけに過ぎない。

 ここは湊の言う通り、次の話題に移るか。


「そうするか」

「そうだね」


 俺とエスネアは互いに離れて、それぞれ元の位置に座った。


「で、湊さんは何か話したいことがあるのか?」

「アタシのスキルの使い方」


 そういえば湊はスキルを全然活用してなかったな。


「そもそもスキルをどう扱いたいんだ?」


 湊の≪メイクアップ≫は自分自身を魅力的に見せるスキルだが、元より湊は顔面偏差値が高い。

 その上、男尊女卑の意識が強いこの世界では、男を魅了しても思い通りにはコントロールできない。

 結果として≪メイクアップ≫は死にスキルと化していた。


「何でもいいから、もっと活かしたいじゃん」


 活用したいこと自体が願望になっているのか。


「とりあえず一度スキルを再確認したいから、ステータスの共有をしてくれないか?」

「いいよ。エスっち、映し出して」

「おっけー」


 エスネアは湊のステータスを映し出す。


 名前:湊(みなと) 愛華(あいか)

 レベル:20

 HP:251 / 251

 MP:46 / 46

 力:73

 防御:50

 魔力:24

 魔法防御:57

 素早さ:65


 スキル≪メイクアップ≫

 成長補正・追加効果

 ・即席メイク

 ・身体伸縮

 ・キラキラ加工

 ・衣装チェンジ


 状態:普通

 所持金:0ゼビー

 その他:なし

 次のレベルまでに必要な経験値:32,195


 前に見た時はレベル19だったはずだが、いつの間にか20にレベルアップしたんだな。

 それに衣装チェンジという追加効果も増えている。

 チェンジする衣装は事前に準備しておく必要があるのだろうか?

 それともスキルによって一時的に生成されるのだろうか?

 個人的にはその点が気になる。


 また、これまでに確認した湊の≪メイクアップ≫の追加効果は、説明するとこんな感じだ。


 ・即席メイク

 場所を選ばずスキルでメイクできる。


 ・身体伸縮

 体型を一時的にコントロールできる。

 痩せているように見せるのはもちろん、ロリ化することも可能だ。

 ただし、性別や種族を変えることはできない。


 ・キラキラ加工

 スマホで行う画像加工を再現するスキルだ。

 一見すると即席メイクの上位互換のようだが、加工された姿は1メートル以上離れている相手にしか見てもらえない。

 実際会ったときは加工した姿を見せられない。

 そんな現実がスキルに内包されているかのようだ。


「どう?」


 異性の気を引くには優秀なスキルだと思うが、やはり問題は使用者が湊であることだ。

 スキルを使う理由がまるでない。


「アイドル活動するのはどう?」


 エスネアの提案は良いかもしれない。

 アイドル活動をするなら、より魅力的に見せる意味がある。


「アイドルはなし。この世界で不特定多数の男に媚び売るとか、何されるか分かんないじゃん」

「えっ、そんなことは……あったかも」


 エスネアは思い当たる節があるのかよ。

 しかも言い切らないってことは不審死や失踪か?


「それじゃ特撮ヒーローはどうだ?」


 特撮ヒーローなら性的な目で見られることはあるまい。


「特撮ヒーローになってどうするの?」

「なりきるんだよ」

「なりきってどうするんだよ!」


 上手くなりきることには興味なしか。

 せっかく衣装チェンジできるのに勿体ない。


「上手くなりきれば、元ネタのスキルを再現できないか?」

「アタシのスキルにそんな効果ないから」


 それは知っている。

 でもあえてこの提案をすることで、追加効果の取得条件を満たせると思ったんだよ。


「あっ!」


 エスネアがこのタイミングで声を上げたということは、俺の予想が的中したみたいだ。


「なりきることで疑似的にスキルを再現できるようになったか?」

「うん」

「えっ?」


 湊は自分のスキルが増えたことにまだ気づいていないんだな。


「湊さんは俺の提案によって、スキルの取得条件を達成したんだよ」

「そんなことあるの?」

「ああ、俺とエスネアはすでに一度そういう経験をしている」

「へぇ、そうなんだ。でもアタシ、特撮ヒーローとか全然知らないよ」


 なんとなくそんな気はしていたよ。


「じゃあ魔法少女はどうだ? 湊さんも小学生の頃は、そういうアニメに触れたことがあるだろ?」

「あるけどさ、高校生にもなって魔法少女になりきるのは恥ずいっしょ!」


 恥ずかしがりながら魔法少女を演じる湊の姿は一度見てみたいな。


「スキルや魔法のある世界なら、そこまで目立たないだろ」

「目立つ目立たないの問題じゃねーよ」


 正攻法じゃ説得できないか。


「湊の演じる魔法少女、エスネアも見てみたいだろ?」


 エスネアを引き込めば、多数決は2:1になる。


「うん。見てみたい」


 よし、エスネアも乗ってくれたな。


「エスっちー。もしアタシが可愛い魔法少女を演じたら、佐伯は気移りしちゃうと思うんだよねー」


 そう返してくるか。

 やはり湊を言い包めるのは簡単じゃないな。


「そ、そんなことはないよね?」


 案の定、エスネアは心が揺らいでいる。


「もし不安なら、エスネアも湊と同じように演じればいい」


 魔法少女を演じることで俺が気移りすると思うなら、エスネアも同じことをすればいいだけだ。

 これでエスネアが納得すれば、湊もやるしかあるまい。


「じゃあ佐伯もね」

「は?」

「エスっちも佐伯が魔法少女を演じるの見てみたいっしょ?」

「うん、見てみたい」

「……」

「はい、じゃあ決まりね!」


 俺まで魔法少女を演じるのかよ。

 湊の≪メイクアップ≫を活用しようってだけの話だったのに、どうしてこうなった?


「魔法少女のスキルってどんな感じなの?」


 魔法少女と言っても、色々いるんだ。

 どんなスキルを真似るのかは湊次第だ。


「めっちゃ派手なレーザー攻撃だよ」

「じゃあスロウスタートルのいる橋の下まで行こうか」


 ここで湊のなりきり疑似スキルを試したら、エスネアの家を壊しそうだもんな。


「いや、ちょっと待って。街の中でなりきりプレイするとかあり得ないっしょ」

「俺も街の外でやったほうがいいと思う」


 さすがにここは湊に同意する。

 ターゲット自体は街中にいるスロウスタートルでも良かったが、魔法少女を演じている姿を他のクラスメイトに見られるのは避けたい。

 だから人目に付きにくい街の外でやるのは当然だ。


「じゃあ外まで行こうか」


 俺たちは魔法少女を演じるため、街の外まで向かう。

 その途中、湊はこんな質問をした。


「そういえばエスっちに確認するけどさ、スキルってその人の願望が形になったものだよね?」

「うん、そうだよ」

「アタシはなりきりプレイなんて恥ずいだけなのに?」


 言われてみればそうだ。

 俺の目から見ても、湊になりきり願望があるとは思えない。


「≪メイクアップ≫ってユニークスキルじゃないもん」

「それがどうかしたの?」

「愛華さんの願望にオーダーメイドされてないってことだよ」

「えっ、どゆこと?」


 俺はエスネアの説明で納得したよ。

 湊のスキルは「こういう願望を持つ人向け」といったラベリングに基づいて発現したわけだ。

 だから当然、本人の願望とは関係ない要素だって入り混じる。

 オタク向けのコンテンツだからと言って、太田や緋色が何でもは楽しめないのと同じだ。


「佐伯はエスっちの言ってることが分かった?」

「ああ」


 俺はエスネアの言葉をかみ砕いて湊に説明した。


「あー、そういうことなんだ」


 湊の疑問は無事解消したようだ。

 ならば検証用の獲物を探し始めるか。


「あっ、あそこの高台!」


 枯れた草むらを突き進んでいたとき、エスネアが高台を指差して声を上げた。


「高台がどうしたの?」


 湊は疑問を口にした。


「あそこにゴブリンが座ってるじゃん」

「えっ?」

「はっ?」

「二人とも見えないの?」


 エスネアは視力の差を考えてくれ。

 俺も湊もこの距離からじゃゴブリンが座っているなんて分かるはずがない。


「遠くに緑色の塊が見えるくらい」

「俺も湊さんと同じ認識だ」

「それだけ分かれば十分だから、早速試してみよっ!」


 この距離から攻撃が届くのか?

 ここから50mは離れていると思うのだが……


「はーいはい!」


 それでも湊はやる気か。


「≪メイクアップ≫」


 湊の全身が光に包まれ、身に付けていた服が少しずつ別物のように変わっていく。

 まさに魔法少女の変身シーンだ。

 変身を終えた湊は黒いフリルドレスに身を包んでいた。

 額にはティアラ、髪は銀髪に変わり、手には派手な装飾が施された杖が握られている。

 この姿はまさにリバティーガールのブラックエーテルだ。

 原作よりも扇情的に見えるのは、湊の胸が大きいからだろうか?


「深淵に潜みし偉大なる王よ。憎悪の力をもって、脆弱なる愚者どもを討ち滅ぼせ! アビスディザスター!」


 ブラックエーテルになりきった湊が詠唱を行うと、物凄い勢いで黒く巨大なレーザー状の魔法が放たれた。

 ロイゼンに向けて放てば、街を丸ごと滅ぼせそうにも見える。

 少なくともゴブリン一匹に対して使う魔法ではない。

 哀れゴブリン……


「おー、すっごい再現度じゃん」


 湊も自分の放った魔法に満足げだ。


「すっごい魔法に見えたけど、威力は全然出てないみたい」

「えっ?」

「はっ?」


 エスネアは具体的にどうやって判断したんだ?


「だってさっきのゴブリン、まだピンピンしてるもん」

「アタシが外したんじゃないの?」

「そこまでは分からないけど、近くの草木も多分そのままだよ」


 そんなに威力が出てなかったのか?


「そこの木にもう一発放ってみないか?」


 エスネアの言う通りなら、何もまずいことは起きないだろ。


「えー、またやるの?」

「湊さんだって使うならきちんと使いこなしたいだろ?」

「まあそりゃね」


 湊はめんどくさがりながらも、目の前の木に向けて再びアビスディザスターを放った。

 しかし、ターゲットとなった木は一切傷つくことがない。

 どうやら本当に見掛け倒しな魔法だったようだ。


「えー、これじゃ宴会用のスキルじゃん!」


 見せかけだけなら街を滅ぼせそうな勢いだったし、宴会で使うには刺激が強すぎると思う。


「短い詠唱時間、しかも消費MPはたったの10だよ。それであの長射程、範囲に放てるなら、威力が低いのは仕方ないよ」


 言われてみればその通りだ。

 しかも湊は魔力が24しかない。

 ステータスを考えても、威力が発揮できないのは当然だ。


 それでも俺は若干羨ましいよ。

 魔力が283もあるのに、今のところそのステータスを活かす方法が一切ないんだからな。

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