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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第3章:視野を広げる

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第25話:私怨を晴らす代行依頼

 ヘズンを訪れた翌日。

 ロイゼンに戻ってきた俺たちは、朝早くから冒険者ギルドを訪れていた。


「ありがとうございました」


 俺は当初の予定通り、依頼の受注者に報酬を手渡すことができた。

 これで一件落着だ。

 ついでに成長したステータスを確認しておこう。


 名前:佐伯(さえき) 豊(ゆたか)

 レベル:92

 HP:791 / 791

 MP:1810 / 1810

 力:22

 防御:157

 魔力:283

 魔法防御:162

 素早さ:79


 ユニークスキル≪ロイヤリティ契約≫

 成長補正・追加効果

 ロイヤリティ契約(生命・物質)

 契約解除(遠隔)

 還元率調整

 還元要素調整

 還元形態(割合還元・定額還元・一括還元)

 最大同時契約数:35(割合)/247(定額)/無制限(一括)

 ※現契約数:2(割合)/1(定額)/0(一括)

 最大還元率:20%(割合)/一日16,000ゼビー(定額)/450,000ゼビー(一括)


 状態:普通

 所持金:202,150ゼビー

 次のレベルまでに必要な経験値:19,251,664


 数字の変化はあるが、特に新しいスキルは増えていない。

 順当に強くなっただけのようだ。


 ウィンドウショッピングの感覚で依頼掲示板も眺めてみたが、特に面白い情報はない。

 さっさと帰るか。


「ちょっといいかな?」


 冒険者ギルドを出ようとした時、後方から俺たちを引き留める声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある甘い男の声だ。


「はい?」


 後ろを振り向くと、そこにいたのは以前依頼を引き受けてくれたロジーだ。

 ドミーとトラブルを起こした件で、咎められるのだろうか?

 互いに口外しない条件で示談が成立したとはいえ、あの手の人間が約束を守る可能性は低い。

 自業自得とはいえ、彼と話すのは気が重いよ。


「君宛てに手紙を預かってるんだ」

「誰からです?」

「ドミーさんからだよ」


 何でドミーが俺たちに手紙を寄こすんだ?

 呪いの手紙でも書いたのか?


「ところでドミーさんとはいつ接点を持ったんだい?」


 ロジーは本当に何も知らないんだな。

 きちんと約束を守っていたことに驚かされるよ。


「以前ちょっとしたトラブルになっただけです」

「それは大変だったね。後で僕のほうから注意しておくよ」

「ロジーさんは気にしなくても大丈夫ですよ。あの件は俺たちにも非がありますんで」

「そうかい」


 やっぱりこの男は人間が出来ているよ。

 王宮のクズどもにロジーの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


「それでは失礼します」


 ロジーと別れた俺たちは、エスネアの家に帰ってからドミーの手紙を開封した。


「なにそれ」


 さっきまで寝ていた湊が、預かった手紙に目を向けた。


「ロジーから預かった手紙だ。差出人はドミーらしい」

「へぇー」


 歓楽街のウェルス通りに来い。

 お前にだってメリットのある話だ。

 私のいるタイミングなら、時間はいつでもいい。


 手紙に書かれていたのは、たったこれだけだ。

 どうせ用件はその場で伝えるつもりだろう。

 人の時間を奪うことをまるで考えていない手紙だ。


「アタシたちに復讐するつもりじゃない?」


 ドミーの手紙を読んだ湊はすぐに報復を疑った。

 あの時起こしたトラブルを思えば、その考えに至るのが普通だ。


「いや、多分そういう意図はないと思う」


 ただ、俺はそう思わなかった。


「何でそう思うの?」

「報復が目的の割には、日時の指定が曖昧すぎる」


 もし傭兵を雇って俺たちを殺すつもりなら、日時はできるだけ正確に指定すべきだ。

 そうでなければ、適切なタイミングで傭兵が動けない。

 雇用費だって嵩むことになる。


 俺だけを呼び出そうとしているのも不自然だ。

 ドミーはからかい続けた湊を殺害しようとした。

 エスネアへの嫌悪感もかなりのものだ。

 なのにロジーは俺個人に宛てたものだと言い切った。

 手紙の文中でも「お前"たち"」とは書かれていない。

 その理由は復讐が目的じゃないからだろう。


「佐伯くんは何のために呼び出したと思う?」


 エスネアは俺に見解を求めた。


「≪ロイヤリティ契約≫の解除が目的だと思う」


 ドミーは一日に何度も収入の機会がある。

 当然≪ロイヤリティ契約≫によって、その都度俺に還元されている。

 しかもドミーは契約を結ばされた自覚がある。

 このことを考えたら、ドミーは俺のスキルをすでに理解している可能性が極めて高い。


「いやいや、それこそあり得ないっしょ!」


 湊は俺に異論を唱えた。


「どうしてそう思う?」

「だって佐伯に契約解除する理由がないじゃん。しかもあの性格じゃ、上手く媚びることもできないっしょ」

「それもそうだな」


 湊の意見には特に指摘できるポイントがない。

 じゃあドミーは一体何が目的なのか?


「とりあえず行ってみるか」

「危ないよ」

「安心しろ。ドミーに傭兵を雇うだけの金があるとは思えない」


 エスネアの心配は杞憂に終わる。

 何せ、以前エスネアがドミーを≪鑑定≫した時は、所持金が25万ゼビーしかなかったのだ。

 しかも今は俺の≪ロイヤリティ契約≫によって、収入の12%を日々搾取されている。

 今頃、貧困まっしぐらだろう。

 とてもではないが、実力ある傭兵を雇えるとは思えない。


「実力者に汚れ仕事をさせるなら、30万ゼビーでも足りないだろ?」

「それはそうかも」


 エスネアは納得してくれたみたいだな。

 ならば移動する時間帯の提案に移ろう。

≪ロイヤリティ契約≫を通じて、収入を得ているタイミングはすでに分かっている。

 それは活動時間を分かっているのも同然だ。

 だから日時の指定がなくとも場所さえ分かれば、顔を合わせることは別に難しくもない。


「なら、日が落ちる頃になったらウェルス通りに向かおう」


 ドミーの活動時間が分かる理由を伝えると、二人は俺の指定した時間帯に納得してくれた。

 そしてその時間が訪れた時、俺たちは歓楽街のウェルス通りを訪れていた。

 そこには路上に座り込むドミーの姿があった。


「あー、ほんとにあのオバサンいるじゃん」


 ドミーを見た瞬間、湊は平然と煽るような言い回しを始めた。


「煽るのはやめてくれ」


 前回会った時と違って、今日の目的は交渉なんだ。

 むやみやたらに煽るべきじゃない。

 それにお前はその煽りが原因で刺されかけたんだ。

 少しは身の安全を考えた方がいい。


「ちっ、何でガキンチョとクソビッチまで来るのよ!」


 口の悪さは相変わらずだな。


「俺を呼び出したのは何のためだ? 別に復讐したいわけじゃないだろう?」

「いいえ、復讐よ」


 本当か?

 辺りを見回しても、怪しい人物は見当たらないのだが……


「それなら俺たちが近づいてきた時点で、傭兵をけしかけるものじゃないのか?」


 そもそも攻撃前からターゲットに復讐の意図を伝えるものじゃないだろ。

 やり方が杜撰すぎる。


「お前たちにだって復讐してやりたいわよ。でも今潰したいのはあの醜い豚よ」


 ああ、ターゲットは俺たちじゃないのか。

 ようやくドミーの意図が理解できたよ。


「なるほど。俺のスキルを利用して、陥れたいって魂胆か」


 俺のスキルなら復讐の証拠が残らないもんな。

 要は俺が傭兵として求められたわけだ。


「そうよ。人の金を奪うスキルがあるお前なら、雇用費だっていらないわよね!」

「タダで汚れ仕事を請け負うわけないだろ!」


 そもそも危ない橋を渡るのは嫌だから!


「だが、今回は条件を満たせばタダで協力してやる」


 俺のスキルを理解してしまった被害者を共犯者に巻き込めるのだ。

 これは願ってもいない申し出だ。

 ただ、それでも無条件というわけにはいかない。

 発生し得るリスクは出来る限り事前に潰しておくためだ。


「何を要求するつもりよ?」

「俺のスキルによる被害を自覚させない条件を整えるんだ。お前のように理解されると厄介だからな」


 スキルによる被害を自覚させてしまったドミーとの契約は、明らかに失敗だった。

 だから同じ失敗を繰り返さないよう、これからの契約は慎重になる必要がある。


「だったらまずお前のスキルを詳しく教えなよ」

「発動条件だけは教えてやる」


≪ロイヤリティ契約≫の発動条件は、大前提として相手に契約の許可を求める必要がある。

 ただし、その過程には幾つかの抜け穴や制約が存在する。

 そのポイントは嘘さえつかなければいいということだ。

 契約内容に嘘があれば無効化されるが、説明しなかったり、印象操作するだけなら契約は問題なく交わされる。

 つまり、詐欺じゃなければセーフだ。


 相手の許可を求めるアクションにも抜け穴がある。

 それは金品の受け取りを、許可したとみなすケースだ。

 事前に「こちらを受け取った場合は、許可したとみなします」などの前置きは必要だが、許可したことを自覚させない有効な方法の一つだ。

 なお「生きている限り、契約の許可を認めたことになる」などの理不尽な脅しでは成立しない。

 許可として認められるのは、相手の自発的な行動が絶対的な条件だ。


 所有権を先に握ってしまう手もある。

 というのも、自分の所有物に限っては契約を結ぶための許可が必要ない。

 もっとも販売、譲渡の過程が挟まると、結んだ契約は白紙になってしまう。

 そのため、この手順を取る場合は自分で所有権を握った人や物を貸し出す形になる。


「これだけ分かれば十分だろ?」

「ええ、十分よ。これであの豚野郎に一泡吹かせてやるわ」

「ならばターゲットの情報と手順を教えてくれ」

「分かってるわよ」


 ドミーはターゲットに対する罵倒を延々と喋り続けた。

 これじゃ俺たちが愚痴を聞いているだけだよ。

 相手憎しの感情が先行して、正しい情報を伝えられているかも怪しい。


「相手のフルネームは分かるか?」

「ブガース・ドロワよ」

「よし、その情報だけ分かれば十分だ」


 エスネアの≪鑑定≫があれば、名前を照らし合わせるだけですぐに特定できる。

 デブ、キモイ、臭い、不快、醜い、ハゲといった情報はもはやノイズでしかない。


「後は契約の影響を匂わせないよう、手順を示してくれ」


 一番肝心なのはここだ。

 この過程で契約を意識させてしまえば、俺のスキルの実態を知られてしまう。

 とはいえ、いきなり手順を示せというのは無茶振りが過ぎるか。

 契約の影響を匂わせないよう、台本を作れと言っているのだ。

 普通に考えたら、即席で思いつくはずがない。


「明日の予約をキャンセルするから、お前が代理人としてブガースと手続きするのよ。次の一回は安くするとでも言っておけば、真意を悟られずに契約できるはずよ」

「今の一瞬でよく思いついたな」

「お前はスキルの詳細を隠してる癖して、わざわざ契約を迫ってきたのよ。その時点でめんどくさい制約があるのは予想できたわよ」


 事前に考えてきたのなら納得だ。

 しかし、ここまでスキルの詳細を見抜かれていたとはな。


「代わりの予約日が決まったら、その時間を伝えにまた来よう」

「分かったわよ」


 翌日の昼過ぎ。

 俺たちは再び歓楽街のウェルス通りを訪れていた。

 ブガースがこの辺りに現れる予定だからだ。


「あの人みたい」


 どうやらエスネアはブガースを見つけたようだ。

 俺はエスネアと同じ方向に視線を向けた。


「ドミーはこんな男に抱かれていたのか」


 体型からして、体重は100キロを余裕で超えているとしか思えない。

 顔はしみや皺が目立ち、青髭が顔全体の1/3を覆っている。

 立派な服を着ているものの、酷く汚れている。

 髪はぼさぼさに伸びている上、部分的にはハゲている。

 あまりにも不潔感に満ちている。

 娼婦を不快にするために生まれてきたかのような外見だ。

 俺はそんな男に恐る恐る近づき、声を掛けた。


「あなたはブガースさんでしょうか?」

「あぁん? なんだおめぇ!」


 体臭はきついし、喋り方には品の欠片もない。

 まさかドミーの罵倒が全部事実だとは思わなかったよ。


「ドミーさんが体調を崩してしまったので、次回の予約を取り次ぐよう承っております」

「売れ残りの分際であのアマがぁ!」


 お前も売れ残りじゃないのか?


「契約にさえ応じてくれれば、お詫びも込めて次回のサービスは半額にさせていただきます。いかがでしょうか?」

「おめぇ、ほんとにあのアマの使いか?」


 なんか疑われるようなことを言ったか?


「はい、そうですよ」

「まあいい。安くしなかったら、特別サービスを要求するまでだ」


 とりあえず契約の許可は出したな!


≪ロイヤリティ契約≫


 これでこいつは収入の20%を俺に還元し続けるわけだ!

 自分の醜さを弁えず、女を貪ってきたんだ。

 その代償を支払うのは当然だろう。


「それでは失礼します」


 俺はブガースに一礼をして、エスネアたちと共に歓楽街を後にした。


「佐伯さぁ、丁寧に喋り過ぎっしょ」


 その帰り道、湊はよく分からない指摘を始めた。

 上手くやり取りするなら、丁寧に話すのが定石じゃないのか?


「何か変だったか?」

「ドミーの代理人なら、もっと崩して喋るもんでしょ。実際ブガースは佐伯のことを疑ってたじゃん!」


 疑われたのは俺の態度が原因だったのかよ。

 ブガースの真意は分からない。

 でも、あながち間違いじゃない気がするよ。

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