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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第3章:視野を広げる

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第22話:潔癖大国・日本出身の俺たちは衛生管理の意識を怠らない

 異世界生活することになったら、まず最初に何を学ぶべきか?

 こんなアンケートを取ったら、かなりの人が狩りを選ぶと思う。

 異世界もののラノベなら、冒険者になるのが鉄板だからだ。

 倒した魔物を解体して、皮や骨を売り捌き、肉を食べる。

 そのために狩りの知識を欲するわけだ。


 魔物なら俺たちはすでに十分体験しているが、解体は未だにやったことがない。

 そのため、今日はエスネアから解体作業を学ぶことにした。


「ターゲットはスロウスタートルでいいか?」


 以前レベル上げの目的で狩ったスロウスタートルは、武器さえあれば誰でもお手軽に倒せる。

 生息しているのはロイゼンの街中であり、すぐ近くには水場もある。

 解体の練習をするにはもってこいの存在だ。


「スロウスタートルでもいいけど、どうせやるなら実際の狩りに近づけようよ」


 エスネアの言いたいことがよく分からない。


「どういうことだ?」

「あそこだと練習の環境が整い過ぎてるじゃん!」

「なるほど、そういうことか」


 外壁に守られた街の中。

 舗装された平地。

 見晴らしの良い空間。

 すぐそばを流れる川。

 確かに言われてみると、実際の狩場とは環境が違い過ぎる。


「愛華さんもおっけー?」

「おっけー!」


 エスネアは湊の意志も確認すると、先頭に立って街の外に出た。


「こっち来て!」


 エスネアが手招いた先は、街道から大きく外れた草むらの中だ。

 獣たちはあまり街道に近づかないらしく、狩りをするなら草むらの中を歩くのが鉄則らしい。

 街道付近では地の利がないと獣たちも分かっているのだろう。


「あっ、あそこになんかいるじゃん!」


 俺たちが草むらを歩いていると、湊は遠くでガサゴソと動く獣の姿を発見した。

 距離があってよく分からないが、赤い毛色をした生き物のようだ。


「レッドウルフだね」


 エスネアはその距離からでも分かるのか。

 草むらの中、しかも10メートルは離れている。

 パソコンやスマホに浸かりきっている俺たちとは視力が違い過ぎる。


「それじゃっ、まずはアタシがやる!」


 レッドウルフとの距離を詰めた湊は、ためらうことなく一突きした。

 上手く急所を突いたのか、レッドウルフはすぐに動かなくなった。


「犬みたいな動物だったのに、よく平気でやれたな」


 湊の仕留めたレッドウルフは、20センチ前後の小型犬サイズだ。

 顔つきも狼のような険しさはなく、まるで可愛らしい子犬のようだ。

 それなのに平然と突き刺した湊は犬嫌いなのか?


「だって野良犬に噛まれたらやばいじゃん」


 だから駆除したほうが良いと思ったのか。

 発想が過激すぎる。

 お前の自宅付近には、危険な野良犬がいたのか?


「まあ、そうだが……」


 ……とはいえ、俺がスロウスタートルの駆除をためらわなかったのも似たような理由だ。

 何か言うつもりはない。


「まずは私が解体するから、二人ともこっち来て」


 エスネアは湊の仕留めたレッドウルフを抱え、開けた場所まで移動した。

 俺と湊も彼女を追うように草むらから出た。


「それじゃ始めるから、きちんと見ててね」


 エスネアは解体用の包丁を取り出し、レッドウルフの毛皮を削ぎ始めた。

 その動作は明らかに手慣れている。


「二人とも順番にやってみて」

「ああ」


 まずは俺の番だ。


「……」


 エスネアから手渡された解体用の包丁を当てたが、刃物がまるで通らない。

 これも俺が非力なせいか?


「あっ……」


 ならばと思って力任せに包丁を動かしたら、今度は毛皮が裂けてしまった。

 これはもう明らかな失敗だ。


「へったくそ!」


 湊は笑い過ぎだ。

 お前だって上手くできるとは限らないからな!


「じゃあ次は湊さんの番で」

「ほいほーい」


 解体用の包丁を手渡された湊は、さくさくっと毛皮を剥いでいった。

 動作は素早いものの、毛皮の裏側には脂身や肉がへばり付いたままだ。

 人のことを言える立場じゃないが、あまりにも雑過ぎる。


「えぇー、二人とも何でこうなるの?」


 エスネアは呆れた様子だ。

 さすがにここまで酷いとは思わなかったのだろう。


「とりあえず渡して」

「ほいよ」


 湊から毛皮を受け取ったエスネアはへばりついた脂身や肉を削ぎ落とすと、あろうことかそのままカバンに仕舞い込んだ。

 毛皮にはノミやダニだってたくさん付着している。

 まだ血も乾いていない状態だ。

 衛生管理が杜撰にも程がある。


「お、おいエスネア……」

「どうしたの?」

「毛皮を仕舞う前に、せめて水洗いすべきじゃないか?」

「今は近くに水場がない想定だよ」

「ならば、せめて使い捨てられる袋に保存してくれ!」

「そうだよエスっち、さすがに汚いって!」

「えぇー、そんな気にするの?」

「当たり前だろ!」

「うん、当たり前!」


 俺たちは潔癖大国である日本の出身だが、さすがにエスネアの判断は万国共通であり得ないと信じたい。

 ……というかエスネアの感性だと、このまま生肉を食べようと言い出しそうだ。

 先手を打っておくか。


「生肉を食べるのも当然なしな」

「そんなことするわけないじゃん!」


 ほっとしたよ。

 ただ、エスネアの衛生管理意識が低いのは明らかだ。

 今後獲物を狩ったとしても、彼女一人に任せることはないだろう。


 いつかマジックオーブに手が届く日が来たのなら、その時は水魔法を覚えることにするよ。

 解体した素材を保存する度に、カバンの中身を汚すのは御免だからな。

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