第21話:楽しむための『真面目』禁止令
俺はもっと異世界生活を楽しみたい。
そのため、俺はもっと強くなりたい、お金を稼ぎたいと考えていた。
弱さや貧乏は挑戦意欲を阻害する枷になるからだ。
俺は内心をエスネアと湊に伝え、もっと養殖(レベル上げ)依頼を発注したいと伝えた。
「ぷっ!」
しかし、湊はそんな俺の言葉を鼻で笑った。
何か変なことを言ったか?
「おい、何で笑うんだよ!」
「だって、マジで人生楽しむセンスを感じないんだもん」
「じゃあ歓楽街に行って、異性をたぶらかせばいいのか?」
パパ活していたお前に合わせるなら、これが模範解答だよな?
「それはダメー!」
正面から俺に抱き着いてきたエスネアは、訴えかけるような上目遣いで顔を覗き込んできた。
俺は湊への皮肉で、そう返しただけなんだ。
本気にしないでくれ。
「面白過ぎるでしょ! 最高に佐伯ってるじゃん!」
佐伯ってるってなんだよ!
人の名前を残念な人間を表す動詞扱いするな!
「なんつーか佐伯って真面目なんだよね」
「どこがだよ?」
俺は親や教師にだって真面目と言われたことはほとんどないぞ。
さすがに湊よりは真面目だけど、お前を基準にしたら不真面目な人間が絶滅危惧種になるよ。
「佐伯って何をするにもさ、すーぐスペックが、もっとお金が、って考えるじゃん」
「実際に必要だろ?」
「発想がいちいち重いんだよ」
「じゃあ何をしろと?」
「何も浮かばないなら、しばらくアタシに付き合いなよ」
「そうしておくか」
もっと楽しみ方を覚えろって言ったのは湊なんだ。
だったら手本を見せてもらおうじゃないか。
「エスっちもそれでいい?」
「いいよ」
「それじゃ決まり! とりあえずロイゼンの外に行こっか!」
「何しに向かうんだ?」
街の外に出る理由がよく分からない。
「特に何かするわけじゃないよ。ただ、もっとこの世界を知りたいじゃん」
「なるほど」
俺たちは湊を先頭にロイゼンの外へと向かった。
「へぇ、外はこんな感じなんだ」
俺たちの眼前に広がる光景は、舗装された道が一本続き、その周囲には枯れた草木が生えているだけだ。
人間が捨てたと思われるゴミもそこら中にあり、決して美しい光景とは言えない。
それでも湊はその景色を眺めて、今を満喫しているように見える。
正直、湊の気持ちはさっぱり分からない。
「ねぇ佐伯くん」
「どうした?」
「もし佐伯くんが行商人だったら、この景色をどう思う?」
「エスネア……」
つまらなそうにしていた俺を見兼ねて、商売の話に結び付けてくれたのか。
やっぱお前は最高だよ。
「先に確認しておきたいのだが、この道は他の街や村に続いているのか?」
「うん、そうだよ」
「ならば道に迷わなくて助かるってことに尽きるな。他は道から外れた場所に何があるか次第だ」
……エスネア、すまない。
せっかく気乗りする話を振ってくれたのに、知らないことだらけで話を膨らませそうにない。
「おっ、いいじゃん」
「何がだ?」
湊の言葉が皮肉にしか聞こえない。
「佐伯もそうした視点で見れば、色々楽しめるっしょ? もっと興味関心の幅を広げていこっ!」
人生の楽しみを増やすっていうのはそういうことか。
すでに興味のある事柄と関連付ければ、関心を持つことだって難しくはない。
それが知識として身に付けば、今後の人生にも役立つはずだ。
ならば、視野を広げる──しばらくはその目的で活動することにしよう。
「ねぇ、今後のためにも装備を整えない?」
外には凶暴な獣の他に、魔物が出没することもあるだろう。
エスネアの提案に異論はない。
「そうだな」
「さんせーい」
俺たちは街へと戻り、市場でそれぞれのレベルに見合った装備を探すことにした。
「うーん、アタシはアクセサリーだけでいいや」
買い物好きな湊にしては、随分控えめな買い物だ。
「エスネアに遠慮してるのか?」
1ゼビーも所持していない湊の装備は、当然エスネアが出資することになる。
とはいえ、九条の思念ダンジョンを踏破したときは湊の活躍が大きい。
もう少し買い込んでも文句は言われないだろう。
「違う違う。単純に見た目がだっさいんだもん」
確かにこの店の商品は、デザインセンスがなさすぎる。
ファッション意識の高い湊なら、嫌がるのは当然だ。
「≪メイクアップ≫で見た目を誤魔化せないのか?」
「一応できるけど、こんなだっさい装備に金を払いたくないじゃん!」
金を払うのはエスネアだけどな。
「どれも高いな……」
レベル74となった俺に見合う装備は、いずれもそれなりの値段が付けられている。
しかも現在発注している養殖(レベル上げ)依頼が果たされれば、俺のレベルはさらに大きく上がる。
なんというか勿体ない。
正直レベルがあまり上がらなくなるまで、資金の大半を依頼の発注費用に回したい。
何せ今の俺は服のサイズがすぐに合わなくなる赤子と変わらない。
「俺の場合、下手に装備を整えるよりもガンガン依頼を発注してレベルを上げたほうがいいような……」
「佐伯はやーっぱ無駄に真面目だよねー!」
「どこがだ?」
「コスパやタイパばっか意識して、目の前のチャンスを逃すところ」
湊、何でお前は毎回的確に俺の心を抉ってくるんだよ!
「佐伯はしばらく真面目を禁止ね」
……これも知見を広げるために必要なのか?
「ねぇ佐伯くん。いらなくなった装備は売ればいいと思うよ」
「あっ、そうか」
エスネアに言われて気づいたよ。
いらなくなったら、売り払えばいいんだ。
処分の手間はかかるが、そこまで大きな損失にはなるまい。
「これください」
「はいよ、それじゃ22万ゼビーだ」
使用制限レベルが存在する世界のおかげで、この武器一本あれば非力ながらエスネアたちよりも活躍できるはずだ。
何せ俺の買ったフルメタルウィップは使用制限レベル72の武器だ。
当然殺傷力も優れている。
二人とこれからの異世界生活を満喫するには、この武器だけあれば当分は困らないはずだ。
そしてこれが今の俺たちのステータスと装備だ。
名前:佐伯 豊
レベル:74
HP:668 / 668
MP:1560 / 1560
力:20
防御:139
魔力:251
魔法防御:146
素早さ:70
ユニークスキル≪ロイヤリティ契約≫
成長補正・追加効果
ロイヤリティ契約(生命・物質)
契約解除(遠隔)
還元率調整
還元要素調整
還元形態(割合還元・定額還元・一括還元)
最大同時契約数:32(割合)/225(定額)/無制限(一括)
※現契約数:3(割合)/0(定額)/0(一括)
最大還元率:18%(割合)/一日15,000ゼビー(定額)/400,000ゼビー(一括)
状態:普通
所持金:191,050ゼビー
次のレベルまでに必要な経験値:8,123,841
装備
武器:フルメタルウィップ
鎧上:学生服男(上)
鎧下:学生服男(下)
靴:学生靴
※所持している信念の仮面は装備していない。
名前:エスネア・ティルミット
レベル:39
HP:468 / 468
MP:731 / 731
力:117
防御:65
魔力:131
魔法防御:52
素早さ:87
スキル≪鑑定≫
成長補正・追加効果
・鑑定(全対象)
・データ共有
・オート鑑定(簡易)
・スキル成長条件サーチ(取得済のみ)
特殊技能:錬金術
技能レベル:8
解放レシピ:金属加工(初級) 糸の加工(初級) 皮の加工(初級) 薬品の加工(初級)
状態:普通
所持金:3,309,800ゼビー
その他:なし
次のレベルまでに必要な経験値:390,336
装備
武器:クレセントスピア
上半身:スウィートチュニック
下半身:スウィートチュチュ
手:シルクのグローブ
足:ウィンドブーツ
装飾腕1:水のブレスレット
装飾腕2:火のブレスレット
装飾頭:ミラクルリボン
装飾首:聖印のネックレス
名前:湊 愛華
レベル:19
HP:239 / 239
MP:45 / 45
力:69
防御:47
魔力:23
魔法防御:55
素早さ:61
スキル≪メイクアップ≫
成長補正・追加効果
・即席メイク
・身体伸縮
・キラキラ加工
状態:普通
所持金:0ゼビー
その他:なし
次のレベルまでに必要な経験値:19,336
装備
武器:ソレナリスピア
鎧上:学生服女(上)
鎧下:学生服女(下)
靴:学生靴
装飾腕1:守りの腕輪
装飾腕2:守りの腕輪
装飾指1:力の指輪
装飾指2:力の指輪
装飾首:活力の首飾り




