第19話:新たなる契約形態
この日はエスネアと共に冒険者ギルドを訪れていた。
ユニークスキルの検証と称して、また養殖(レベル上げ)してもらうためだ。
この依頼を発注するのは、今回で三度目になる。
もう慣れたものだ。
「おう、それだけでいいのか」
「はい、よろしくお願いします」
新たな受注者はすぐに見つかった。
これでまた数日後には、大きくレベルが上がるはずだ。
発注を終えた後、俺はエスネアに様々な店を案内してもらうことにした。
遅めの観光案内というわけではない。
買い物や商談で損しないよう、基本的な知識を叩き込むためだ。
「あれ?」
「どうした?」
「佐伯くん、スキルが増えてるよ」
「へっ?」
よく分からないが、俺のスキルが増えたらしい。
とりあえずステータスを確認してみるか。
名前:佐伯 豊
レベル:74
HP:668 / 668
MP:1560 / 1560
力:20
防御:139
魔力:251
魔法防御:146
素早さ:70
ユニークスキル≪ロイヤリティ契約≫
成長補正・追加効果
ロイヤリティ契約(生命・物質)
契約解除(遠隔)
還元率調整
還元要素調整
還元形態(割合還元・定額還元・一括還元)
最大同時契約数:32(割合)/225(定額)/無制限(一括)
※現契約数:3(割合)/0(定額)/0(一括)
最大還元率:18%(割合)/一日25,000ゼビー(定額)/400,000ゼビー(一括)
状態:普通
所持金:134,450ゼビー
次のレベルまでに必要な経験値:8,123,841
いつの間にか追加されていたのは還元形態だ。
これは追加されたというより、拡張されたと表現するほうが正しい。
これまで俺が結べた契約は、「割合還元」のみだった。
それが今回、「定額還元」「一括還元」も可能になったのだ。
還元形態の追加に伴い、上限に関する記載も増えている。
定額還元と一括還元は、最大還元率の単位がゼビーと明記されている。
追加された二つの還元方法で回収できるのは、お金だけのようだ。
「何で増えたんだ?」
「レベル以外の取得条件を達成したからだと思うよ」
そういえば追加スキルの取得条件は、レベル以外にも色々あるんだったな。
俺は店を回っていただけだ。
しかもエスネアの≪鑑定≫はほぼ常時発動している。
スキルが拡張されてから、あまり時間が経っているとは思えない。
どんな条件を達成したのか、ますます分からなくなってきた。
「その達成した取得条件って、エスネアの≪鑑定≫で調べられないか?」
別に分かったところで何のメリットもないが、気になって仕方がない。
「さすがにそれは無理……って、ええっ!」
「どうした?」
「今確認できるようになったよ!」
俺の言葉に反応して、今度はエスネアがスキルの拡張条件を満たしたのか。
偶然って重なるんだな。
「それで結果は?」
「第三者が契約対象を割合還元できない形で使用した、だって!」
「ああ、なるほど」
分かりやすく表現するなら、「契約対象に仕事を与えた」ということだ。
つまりスキル拡張のトリガーになったのは、昨日の近衛兵が王宮に出勤したことだ。
契約した人間の所有権は自分にあるという理屈で、俺はこれまで契約対象から稼いだ経験値やお金を搾取していた。
しかし、≪ロイヤリティ契約≫は本来なら当人ではない使用者──すなわち雇用者こそが支払うべき対価だ。
雇用で得られる利益は数値化しづらく、割合で還元することはできない。
だからこそ「定額還元」と「一括還元」といった利用方法に応じた還元システムが解放されたのだろう。
昨日の近衛兵が相手なら、雇用者は国王だ。
もしあの近衛兵と定額還元の≪ロイヤリティ契約≫を結んだなら、俺は国王から毎日最大25,000ゼビーを搾取することができた。
これはあまりにも旨すぎる。
「後で色々試させてくれ」
「うん、いいよ」
とはいえ、ぶっつけ本番で使うのはトラブルの元になる。
まずは検証から始めたほうがいいだろう。
検証には被雇用者と雇用者の二名が必要だ。
当然エスネア一人の協力だけでは、満足のいく検証結果は得られない。
だから今回は湊にも協力してもらおう。
「定額還元」を上手く使いこなせば、リース事業を始めることだって難しくはない。
ハズレスキルと笑われた≪ロイヤリティ契約≫だったけど、今はどんどん夢が広がっていくよ。
俺を笑っていた連中は、さぞかし良いスキルに恵まれたんだろうな(笑)。




