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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第2章:収入インフラを整えていく

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第18話:win-winの関係(笑)

 イグナシオの店を出た俺は人通りの多い広間へ向かう途中、頭の中にある不安がよぎっていた。


「商売に≪鑑定≫を使えば、目を付けられるかもしれない。エスネアはそのことをどう思う?」


 普通なら使用素材やその組み合わせによって、強度や性質のロジックを説明できる。

 しかし、思念ダンジョン経由のアイテムはその常識が通用しない。

 結果として、その価値は売り手の信頼度に大きく依存する。

≪鑑定≫は、その大事な信頼を簡単に獲得できる。

 目を付けられるには、十分過ぎる理由だ。


「個人的な取引なら大丈夫だよ」

「どうしてだ?」

「相場に影響しないもん」


 競合商品の市場価値を下げなければ目を付けられにくい。

 その理屈は理解できるが、何で断言できるんだ?


「スキルそのものへの妬みで、目を付けられることは?」

「それは滅多にないよ。みんなそれぞれ得意不得意はあるんだし、一々気にしてたらキリがないもん」


 この世界の人々は、スキルの認識が努力で身に付けた技能と同じ扱いなんだな。

 それならば心配はいらないか。


「あっ!」


 広間に足を踏み入れた時、エスネアは何かに気づいたようだ。


「どうした?」

「噴水の前に仮面を付けてる人がいるよ」

「それがどうかしたのか?」

「あの人なら買ってくれるんじゃない?」

「ああ、なるほど。話しかけてみるか」


 すでに仮面を付けている人間なら、仮面だからいらないと判断することはない。

 しかも市場に流通している仮面の大半は、俺の手元にあるものより低品質だ。

 それならば、買ってくれる可能性は高い。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」

「ん、何だい?」


 俺は噴水の前にいた小柄な男に話しかけた。


「この仮面に興味ありませんか?」

「初めて見る仮面だな」

「思念ダンジョンで手に入れたものなんで……」

「ああ、だからこんなところで営業してるのか」

「まあ、そういうことです」


 初めての路上営業だ。

 慣れないことだけにどうしても緊張する。


「≪鑑定≫できる商人の保証書とか持ってる?」


 あっ、これは購入希望のサインだ。

 逃すわけにはいかない。


「保証書はありませんが、こちらの彼女が≪鑑定≫できます」


 ……というか、≪鑑定≫結果の担保ビジネスなんてものまであるんだな。


「おお、それなら早速見せてくれ」

「はーい」


 俺に代わって返事をしたエスネアは、仮面の≪鑑定≫結果を小柄な男に情報共有した。


「おお、これは良い品じゃないか。いくらで売ってくれるんだい?」


 よし、食いつきはバッチリだ。


「18万ゼビーでお売りしようと思っているのですが、どうでしょうか?」

「もちろん買わせてもらうよ」

「ありがとうございます」


 まさか最初の1回で取引が成立するとはな。

 幸先の良いスタートだ。

 これで俺の価格設定がぼったくりではないと確信できた。

 この調子でもう一つの仮面を売り捌いてしまおう。

 そう意気込んだものの、取引がスムーズに成立したのは最初だけだった。


「仮面はいらないかなー」

「高すぎる」

「思念ダンジョンのアイテムは気持ち悪いからパス」

「キャッチセールスはお断り」

「彼女がいなければ、付き合おうと思ったのに」

「おじさんはもう怪盗ごっこする歳じゃないんだよ」


 イグナシオから聞いた通り、やはり仮面の需要は少ない。

 思念ダンジョン経由のアイテムであることが、さらにその需要を減らしていた。

 隙間市場なら簡単に稼げると思ったが、現実はそう甘くはないようだ。


「あっはっはっは」


 俺が営業を続けていると、聞き覚えのある笑い声が耳に入ってきた。

 転移した初日に俺の追放を笑っていた近衛兵の男だ。


「生き延びていたのは立派なことだが、未だにスキルを使いこなせないんだな」

「ははは……」


 俺は近衛兵の態度に合わせて、卑屈な笑みを浮かべた。

≪ロイヤリティ契約≫が何なのかも分からないこの近衛兵は、当然俺のスキルのことだって見当も付かないはずだ。

 楽して暮らしたい怠惰な願望の顕れ。

 音無の言い放ったその言葉だけで判断し、営業に勤しむ俺を笑ったのだろう。


「何この人!」

「あまり気にするな」

「佐伯くん……」


 エスネアは俺のことをバカにする近衛兵に腹を立てていた。

 気持ちは嬉しいが、今は抑えてほしい。

 俺としてはこうした態度でいてくれたほうが助かるんだ。


「俺としては早くスキルを使いこなしたいんで、契約の許可をしてくれませんか?」


 ……変な言い回しだと思う。

 ただ、俺の≪ロイヤリティ契約≫を発動させるためには、契約の許可を得る必要があるんだ。

 俺の稚拙な語彙力では、この表現が精一杯だ。


「俺様にそんな暇はねぇよ! そっちの生意気なガキに頼めばいいだろ?」

「強い人が相手じゃないと、発動しないっぽいんです」


 頭の悪い相手だ。

 適当に煽てておけば、心を揺さぶれるだろう。


「ほう!」


 近衛兵の男は満足そうに笑う。

 実に分かりやすい。

 とはいえ、まだ許可を出す雰囲気ではなさそうだ。


「許可をしてくれたら、5万ゼビーは払いますよ」

「あっはっはっ、面白ぇ! まずは金を寄こしな!」


 金を受け取ることは、許可することと同義だ。

 受け取った瞬間に契約を結んでやろう。


「はい、これでいいですか?」

「おう受け取ったぜ! んじゃ酒でも飲んでくるわ」


 金を受け取った瞬間、対価を一切払うことなく立ち去るつもりか。

 それに悪びれる様子もない。

 あまりにもクズ過ぎて清々しいよ。

 でもそのおかげで、俺は罪悪感ゼロでお前から搾取できるよ!


≪ロイヤリティ契約≫発動!

 弾かれた感覚はない。

 これで契約は結ばれたはずだ。

 とはいえ、このまま何も反応しないのはさすがに怪しまれる。

 金だけ盗られた可哀想な少年を演じておくか。


「あぁっ、ちょっと待ってください」

「あっはっはっは、許可を出せばいいんだろ? ほら、出してやったぞ。じゃあな!」


 近衛兵は笑いながら、俺の傍から離れていく。

 正式な許可を出してくれるとは、全く都合の良いバカだ。

 これならばさっき発動した≪ロイヤリティ契約≫が仮に失敗していたとしても、再度近づけば確実に結べる。

 全く笑えてくるよ。

 お互い気持ちよく笑えるなんて、win-winの関係(笑)だな。


「エスネア、契約はできてるか?」

「うん。バッチリだよ!」


 エスネアに確認してから気づいたよ。

 自分のステータスを覗けば、現在の契約数が確認できるんだ。

 わざわざ彼女に頼る必要はなかった。


 ……というか、最近は自分のステータスを全然確認してなかったな。

 しかも数日前に2度目の養殖(レベル上げ)依頼を発注していた。

 またレベルが大幅に上がっていることは間違いない。

 久々に確認しておくか。


 名前:佐伯(さえき) 豊(ゆたか)

 レベル:74

 HP:668 / 668

 MP:1560 / 1560

 力:20

 防御:139

 魔力:251

 魔法防御:146

 素早さ:70


 ユニークスキル≪ロイヤリティ契約≫

 成長補正・追加効果

 ロイヤリティ契約(生命・物質)

 契約解除(遠隔)

 還元率調整

 還元要素調整

 最大同時契約数:32

 ※現契約数:2

 最大還元率:18%


 状態:普通

 所持金:134,450ゼビー

 次のレベルまでに必要な経験値:8,123,841


 追加スキルは増えてないが、最大還元率は18%まで増加した。

 仮にあの近衛兵が月収100万ゼビーだとすれば、俺には毎月18万ゼビー入ってくることになる。

 あの様子なら、俺の≪ロイヤリティ契約≫に勘づく可能性はかなり低い。


 あっはっはっはっはっ!

 一生搾取してやるから、これからも王宮のクズ仲間と一緒にお仕事を頑張ってくれ!

 今後俺はエスネアと仲良く、遊んで暮らすつもりだけどな!

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