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異世界ロイヤリティ ~バカどもから搾取したお金で、俺は人生楽しませてもらいます~  作者: ファイアス
第2章:収入インフラを整えていく

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第17話:商品知識を身に付ける

「いーたたたたたっ」


 この日の朝、俺は身体の痛みを訴える湊の声で目を覚ました。

 どうせ身体を捻ったか何かだろう。

 少なくとも心配するような叫び方ではない。


「佐伯くーん、おはよう」

「ああ、おはよう」

「愛華さんは今日一日休みたいって言ってるけど、佐伯くんは大丈夫だよね?」


 今日一日……

 つまり、さっきの叫びは筋肉痛が原因か。

 あれだけ動き回ったのなら、筋肉痛になるのも頷ける。


「ああ、俺は大して動いてないからな」


 昨日の思念ダンジョンでは、エスネアと湊をそれぞれ1回ずつ庇っただけだ。

 何もしていないようなもんだ。

 おかげで肉体的な疲労は残っていない。


 ただ、昨日は朝早く起こされた上、夜は熟睡できる状況ではなかった。

 そのせいでまだ眠くて仕方がない。


「じゃあ佐伯くんも昼になったら、商人さんのところに行こう」

「分かった。それまでは引き続き寝てても構わないか?」

「いいよ」

「助かるよ」


 二度寝の許しを得た俺は、エスネアのベッドで再び眠りに就いた。

 これで睡眠不足は解消される。


「佐伯くーん、起きてー!」

「もうそんな時間か」


 昼過ぎになって、エスネアが俺を起こしにやってきた。

 まだ眠いが、最低限の睡眠は取れたはずだ。

 身体を動かしていれば、自然に目が覚めるだろう。


 俺たちは出掛ける準備を済ませると、商店街のほうへ向かった。

 どうやらコアを買い取ってくれる商人は、商店街の近くでひっそりと店を経営しているらしい。


「ここだよ」


 エスネアと共に訪れた店は、質素な造りで看板すら設置されていない。

 本当にここで合っているのだろうか?


「何の店だ?」

「冒険者向けの買い取り専門店だよ」

「なるほど、あまり目立たなくてもいいわけだ」


 買い取り専門店ならば、目利きや商品知識は期待できる。

 せっかくだから色々と教えてもらうか。


「こんにちはー!」


 エスネアはノックもなしに扉を開けて、中へと入っていった。


「おお、エスネアちゃんか。隣の兄ちゃんはこの前話してた転移者の人か?」

「うん、そうだよ」


 店内に入ると、小太りなおっさんが俺たちを出迎えてくれた。

 エスネアとは、随分仲が良さそうだ。


「どうも、佐伯です」

「俺はイグナシオってもんだ。よろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします」


 フレンドリーな感じのおっさんだ。

 接しやすくて助かるよ。


「そいや昨日は幻獣騒ぎがあったけど、エスネアちゃんはまたコアを取ってきたのか?」

「うん。今回もバッチリだよ!」

「さすがはエスネアちゃんだ。よし、それじゃ早速買い取るよ」

「はーい、ってあれ……」


 エスネアはカバンに手を入れながら慌てている。

 俺が管理していることを忘れて、失くしたと勘違いしているようだ。


「コアなら俺が持っている」

「あっ、そうだったね」


 俺はコアを取り出し、エスネアに手渡した。

 エスネアはそのコアをイグナシオに差し出すと、彼は虫眼鏡を取り出し査定を始めた。


「うん、本物のようだね」


 この口ぶりだと偽物のコアも出回っているんだな。


「ほら、これがお代だ」

「ありがとうございまーす」


 査定を終えたイグナシオはコアを大きな保管箱に仕舞うと、お代として150万ゼビーをエスネアに手渡した。

 これでコアの取引は無事完了だ。


「俺からもいいですか?」

「おっ、何だい?」

「思念ダンジョンで手に入れたものですけど、イグナシオさんなら仮面をいくらと評価しますか?」


 俺はあえて仮面を二つ取り出し、イグナシオに査定を求めた。

 防御性能の僅かな違いを見極められるか、その点に興味があるからだ。


「あー、すまん。思念ダンジョン経由の商品はコアしか買い取ってないんだ」

「そうなんですか」


 査定してくれればそれで良かったんだが、何せダンジョンマスターの思念によって発生したアイテムだ。

 材質や形状で判断できないのはもちろん、発生メカニズムさえ分かっていない。

 査定そのものが難しいのだろう。

 俺は≪鑑定≫できるエスネアと一緒にいるから、この仮面が価値ある装備品だと判断できる。

 しかし、普通は≪鑑定≫のスキルなしで判別しなければならない。

 そのことを考えたら、取り扱わないのは賢明な判断だ。


「それなら自分で買い手を探すんで、幾つか教えてもらっていいですか?」

「おう、いいぞ。何を聞きたいんだ?」


 俺は思念ダンジョンで拾った仮面に、自分なりの価格を決めるべく様々な質問をした。

 広く流通している混乱無効、狂化無効の耐性を持つ商品それぞれの相場。

 複数の状態異常を防ぐ装備の価格に対する考え方。

 仮面を装備する冒険者の割合。

 広く流通している仮面の使用制限レベル。

 これらを一つずつイグナシオに聞いていった。


 その回答は以下の通りだ。

 単独の状態異常耐性を持つ装備の相場は約3万ゼビー。

 通常は指輪かイヤリングで、その恩恵を得ている。


 複数の状態異常耐性を持つ装備は、その価値が跳ね上がる。

 組み合わせにもよるが、安くても15万ゼビーの価値はある。

 ただし、そのほとんどがあまり流通していない商品であるため、実際はもっと高く売れると判断しても良い。


 戦闘を目的として仮面を装備する冒険者はあまり多くない。

 その理由はすぐに外れてしまい、固定するのが難しいためだ。

 視界が制限される、着けることが恥ずかしいといった声も多いらしい。

 特に前衛で激しい動きをする戦士たちは、まず仮面を付けることがない。

 欲しがる人間がいるとすれば、魔法や飛び道具で戦う者に限られる。


 戦闘用の仮面は使う人が少ないことから、そもそもあまり流通していない。

 流通している商品は、そのほとんどが誰でも装備できる。

 すなわち使用制限レベルは1だ。

 誰でも使える仮面以外は、逆に使用制限レベルが500を超えるものが多い。

 とりあえず使いたいだけの人と、こだわりを持って選ぶ人に二極化されるためだ。


「あー、あと思念ダンジョン経由のアイテムは、それだけで価値が下がることを覚えておきな」

「分かった。色々教えてくれてありがとう」

「はっはっはっは。そんな熱心に聞かれたら、俺もついつい喋りたくなるってもんよ」


 本当に気の良い商人だ。

 イグナシオのような男だっているのに、エスネアがわざわざ俺のような転移者を求めたのか不思議でならない。

 彼のような人でさえ、男女関係の話になると人が変わってしまうのだろうか?


「もー、二人とも私のことを忘れてるでしょ!」

「あ、すまん」

「おう、わりぃな」


 エスネアのことを考えず、ついつい長話をしてしまった。

 だが、これでこの仮面に自分なりの価格を決められた。

 防御力16の仮面は17万5000ゼビーだ。

 防御力18のほうは18万ゼビーだ。

 値切りの圧に押されたとしても、二つで30万ゼビーは堅い。


「今日はありがとうございました」

「おう、またな」


 仮面の価格設定ができたら、後は買い手を探すだけだ。

 販売にはエスネアの協力が必要とはいえ、相場に疎い彼女がこの仮面をお金に換えられるとは思わない。

 つまり俺がいてこその稼ぎだ。

 これでただのヒモから、また一歩前進できる!

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