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純白の光の柱が消え去る。
そこに立っていたのは、歴代の姫巫女たちの英霊から、すべての意志と力を託された紅瀬朱だった。
「お前を、倒す!」
朱は静かに、しかし絶対の意識を込めて宣言した。
その瞳の輝きに、人の魔神はぞっとするような歓喜の笑みを浮かべた。
「ありがとう、紅瀬朱。……そして、本当に君のことが大ッッッ嫌いだよ……!」
青年の穏やかだった顔が、どす黒い憎悪へと歪んでいく。
「私はこの身を賭けて、研究に研究を重ねてきた。未来を、世界を幾度となく見透し、最良の変革を経て、できることはすべてやったんだ。……それなのに! なぜ今、この瞬間、私は君に勝つことができないんだ……ッ!!」
青年は自らの髪をかきむしり、狂ったように吼えた。
「だから、私は『主人公』ってやつが嫌いなんだ。最後には、どんな理不尽も跳ね除けて、幸せなハッピーエンドを掴み取る。どいつもこいつも、主人公だから勝利し、主人公だから前へと進む。私がいくら頑張っても、歯を食いしばっても、すべてを無に帰していく!」
一歩、青年が踏み出す。 彼がこれまでに積み上げてきた、気の遠くなるような敗北の記憶が、荒野の空気を震わせた。
「私のことを、何だと思っている。お前たちにとって、私はただの路傍の石ころなのか? 同じように生き、同じように存在する私たちを、お前らはゴミのように葬り去る。……だからさ、この敗北という未来を書き換えるために、最高の策を編み出したよ」
青年の口元が、歪な三日月を描く。 彼の前に、黒い霧が集束していく。
霧が晴れたとき、そこに現れた肉体の輪郭を見て朱は言葉を失った。
「……僕?」
それは紛れもない、もう一人の紅瀬朱だった。
「主人公を倒すためには、主人公を使えばいい」
人の魔神は、歪んだ達成感に胸を張った。
「彼は別の世界から呼んだ。あちらの世界は、今のこの世界よりも陰湿で、残酷で、悲惨な結末だった。だからこそ、僅かな可能性を求めて私の誘いに応じてくれたのさ」
もう一人の自分。 朱の脳裏に、一つの思考がよぎる。
同じ自分なら、交渉ができるはずだ。魔神の言いなりになる必要などない。
今、二人が協力すれば目の前の人の魔神をより確実に、簡単に倒せるはずだ。
朱が説得のために喉を震わせようとした。 だがそれよりも早く、もう一人の彼の唇が動いた。
「——『リンカーネーション・オーバードライブ』」
感情の消え失せた声だった。
瞬間、もう一人の朱は爆発的な加速度で肉薄してきた。 その手には、虚空から引き抜かれた本物の刀が握られている。
「くっ……!」
朱は、間一髪でその斬撃を両腕で受け流した。 強烈な衝撃が骨を軋ませる。
戦力差がありすぎた。これがより残酷な地獄を経験し、生き延びてきた者の「差」なのか。
だが、朱に躊躇している暇はなかった。 残された選択肢など、初めから一つしかない。
英霊たちから託された光の力を、その拳に込める。
「——『リンカーネーション・オーバードライブ』!!」
朱もまた、禁忌の術式を叫んだ。
拳と刀が激突し、凄まじい衝撃波が荒野を薙いでいく。
この術を使用した以上、どちらの死も確定する。 文字通りの、命を燃やし尽くす死闘が始まった。




