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「がはっ……、ぁ……っ!!」
肺腑からせり上がる、猛烈な鉄の味と、五感を文字通り焼き切るような「現実の激痛」と共に、朱は目を覚ました。
「ここは……!」
視界が赤く染まっている。
空が割れ、大地が裂け、視界のすべてが火、水、風、地の暴虐によって埋め尽くされている。
東の魔神・龍が操る、世界そのものを兵器へと変質させた絶対的な破壊の嵐。
その地獄の中心に、朱は横たわっていた。
周囲の全方位から押し寄せる即死級のエネルギーの奔流。
しかしそのすべてを、朱の身体を覆う「透明な球体のシールド」が、悲鳴を上げながら防ぎ止めていた。
「……ふふ、寝坊助さん。やっと……起きた」
シールドの維持を司る中心で、膝を突き、全身の毛細血管から血を噴き出しながら笑っている少女がいた。
「雫……っ!?」
本物の、契約によって心臓を失い、それでも朱を守るために戦い続けていた、本物の雫だった。
彼女の絶対防壁は、龍の放つ地水火風の直撃を受け、何重もの亀裂が走っている。
「ごめん、雫。もう……大丈夫だ」
朱がその身体を抱きとめようとした瞬間、雫は限界を迎え、糸が切れた人形のようにその場に倒れ、意識を失った。
同時に、既に限界に達していたシールドが音を立てて霧散する。
上空から、地水火風のすべてを宿した破滅の光線が、圧倒的な質量を伴って降り注ぐ。
「——起きろ、マテリアル。僕たちの、本当の戦いだ」
朱は立ち上がり、自身の魂の最深部に残された、あの十人の仲間たちから託された全力を解放した。
消滅した失敗作たちの怨念と希望、そしてマテリアルが、朱の肉体を媒介にして現実世界へと噴出する。
「マテリアル・オーバードライブ!!」
それは黄金の輝きを纏った、因果律を書き換えるための力。
上空から降り注いでいた龍の絶対的な攻撃が、朱の放った黄金の波動に触れた瞬間、物質としての連続性を失い、ただの無害な光の粒子へと強制転換され霧散していく。
「ほう……。我が催眠の檻を自力で、いや、雑魚どもの命の残滓を薪にして叩き割ってきたか。人間にしては見事な足掻きだ」
空を割り、紫煙を纏って悠然と浮遊する龍が、その美しくも冷酷な瞳を見開いた。
この限界突破の力が保つのは、ほんの刹那の間。
時間を引き延ばされればマテリアルは消失し、確実に敗北する。
狙うべきは、最短にして最速の一撃――それ以外に道はない。
朱は地面を蹴った。黄金の閃光と化した朱は、龍の放つ空間の壁を次々とマテリアルの力で消滅させながら、猛然と間合いを詰めていく。




