第96話 No.2最強決定戦(1)
投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。
これから少しずつペースを上げていけたらと思います。
場面は変わり、城の廊下では戦意を激らせるグレッグとノルが、ルル•ルーンの最側近ベリアルと向かい合っていた。
「理解ができないですね。」
ベリアルは2人を見ながらため息をついた。
「いったい君たちの目的はなんですか?まさか私とルル様を倒せるだなんて夢としても贅沢すぎることを望んでいるのではないでしょうね?」
「抜かしやがるぜ。お前の同僚っぽいやつはレイスに全滅させられたらしいってのに、随分余裕じゃないか。」
「同僚?私と彼らが?フフフ、、、」
ノルの挑発を聞いたベリアルは、その指摘が的外れだとはっきり指摘するように、可笑しそうに口元を押さえながら笑う。
そして、次の瞬間にはノルとグレッグの2人は強い衝撃を受け、城の外に投げ出されていた。
「ウワッ!?」
「いつの間に」どころではない、攻撃だったのかどうかさえ認識できない衝撃を受け、庭園の地面に叩きつけられた2人は痛み以上に強い混乱に襲われた。
「うぅ、、、なんて速さだ、、、」
ようやく自分達が「攻撃された」という現実に気づいた2人は、呻きながらもなんとか体を起こす。
2人が墜落したのは偶然にもレイスが現れた場所であり、すぐ近くには台車に積み上げられた10神王たちが呻き声をあげていた。
そして、彼らが顔を上げた時にはすでに、涼しげな微笑みを浮かべるベリアルが庭園に降り立っていた。
「どうしました?間抜けな顔をして。見た目だけで人を判断しない方が良かったですね。」
ベリアルは2人に指摘をしながらも、視線は2人の斜め後ろにいる10神王に向けられていた。
「先ほどあなたが言ったのはそこに積んであるゴミですか?言っておきますがあんな雑魚たちなんて仲間でも同僚でもなんでもありませんよ。」
そう言うとベルアルは地面を蹴って飛び上がる、それを見てグレッグは、ベリアルが何をしようとしているのかを察した。
「ま、待て!彼らはまだ死んでな」
グレッグの制止は間に合うことはなく、ベリアルはミサイルが着弾するかの如き勢いで10神王に向かって落下し、彼の鋭い蹴りは容赦なく積み重なっていた10神王の体に突き刺さる。
そして、それが決定打となってわずかに生きていた10神王たちは全員が肉塊となって息絶えた。
「なんということを、、、」
「こんなゴミども、本来この国に必要はなかった。この国をさらに大きく、さらに偉大にしていくには、、、」
ベリアルが両手を広げると彼の全身から台風のような勢いで猛烈な魔力が放たれる。
かつてレイスと死闘を繰り広げたジェフリー•ランドさえも超えるかもしれないほどの絶大な魔力をその身に受けて、2人は血が凍るかのような思いであった。
「ルル様とこの私さえいれば十分です。」
見た目からは想像もつかないプレッシャーと凶行。
凄惨な光景と、端正な顔立ちからは想像もつかないようなベリアルの濁った瞳を目の当たりにした2人は一層緊張感を高めた。
「哀れな、主でも救えない人のようですね。」
「はじめから救うつもりはないけどな。」
グレッグとノルが戦う気満々であることを感じ取ったベリアルは、久しぶりの戦闘に激っていることを示すかのように、さらに放出する魔力量を増やした。
「さぁ、始めましょう。「天魔王」様に逆らった愚か者たちへの粛清の時間を。」
さながら舞台の上にいるかのような大仰な宣言をしたあと、三人の戦いは始まった。
そしてわずか数分後、その戦いはあまりにもあっけなく終わった。
戦いとすら呼べる代物ではなかった。
ごく短い時の中で全身を余すところなく激しく殴打されたグレッグとノルは、息も絶え絶えといった様相で地面に倒れていた。
「悲しいですねぇ、生まれ持った力の差というのは。」
手に付着した血をハンカチで丁寧にふき取る
その顔は涼し気で、汗の一滴とて流れてはいない。
まるで目の前のテーブルを拭いただけであるかのような様子のベリアルと瀕死の状態で地面に倒れる2人。この差が、「優勢」という言葉すらはばかられるほどの絶望的なほどの両者の「格の違い」をあらわしていた。
「君たちごときにソニックもキーレも負けたのか、やはり人間ではだめだな。世界を支配するのは我々モンスターだ。ルル様を頂点とした、我々が人間を飼う帝国を創ることが我々に与えられた使命であり世界に真の平和をもたらす。」
ベリアルは心酔するルルの顔を思い出しながら恍惚とした表情で演説を口から垂れ流すが、地面に倒れ伏す2人にはほとんど聞こえていない。もっとも、ベリアル自身も2人に効かせているつもりはないのだが。
「クッソ、、、強すぎる、、、化け物かよ、、、」
ノルは地面を舐めながら吐き捨てる。神と融合を果たしたことで気が大きくなっていたが、こうしてズタボロにされたことで一気に現実に引き戻された気分であった。
そして、それはグレッグも同じであった。
(だめだ、、、かすりもしない、、、)
グレッグが開発した「魔力拳」は、彼にとって「会心の一手」であった。しかし、それはベリアルには全く通用せず、それどころかかすることすらなく地面に叩き伏せられた。
「う、、、」
グレッグはすでに満身創痍にもかかわらず、体に鞭を打って立ち上がる。
「ま、まだだ、、、」
「おや、生きてましたか。とっくに死んでいると思ってましたよ。」
ベリアルのわざとらしい嫌味を無視して、グレッグは雄叫びを上げながら飛びかかった。
「馬鹿の一つ覚えですか。芸がないですね。」
ベリアルは呆れた表情で、迎え撃つような素振りさえも見せず、ただそのまま立っている。彼にとってはグレッグやノルは「迎撃する対象」ですらない。
「ただ飛んでくる蚊を叩くだけ」
そう言わんばかりの落ち着きようを見せていた。
グレッグは、そんな余裕を見せるベリアルにそのまま飛びかかる。
と見せかけて、走っている最中、彼は魔力を込めた拳を地面に叩きつけた。
ドォォォンッッ!!
轟音とともに地面が破壊され、それによって巨大な土煙が巻き起こる。
その結果、ベリアルの視界は一時的に完全に覆われることになった。
「ム、、、目くらまし、、、」
ベリアルがグレッグの狙いに気づいた時には、彼はすでに高速でベリアルの側面に移動し、先ほど地面を殴ったほうとは異なる拳に自身の全魔力を込めた。
(これで決めるしかない!)
「うおおおお!!!」
そう決意して、グレッグはこれまでにないほど力を込めて、彼にとって最速、最強の一撃を放った。
しかし、、、
その渾身の一撃はベリアルの「三本の指」によって容易く、つまむように止められた。
「嘘、、、」
グレッグは呆然とした様子でつぶやく。
自身の最強の攻撃が指三本に防がれた。それだけでなく、ベリアルの余った手は、頭上から迫ってきていたノルのナイフも掴んでいた。
「不意を突こうとしたことは褒めてあげましょう。しかし、君たち程度のスピードは私には止まって見えるも同然。たとえ完全に不意を突かれたとしても、攻撃を見てから避けるくらいなんてことはない。」
そう言うと、ベリアルは全く力を込めてないような動きで2人を「放り投げた」。
たったそれだけの動作だったのにも関わらず、2人の体は光をはるかに超えた速度で地面と平行に飛び、勢いそのままに城壁に叩きつけられた。
「グハッ!!」
もしも神と融合していなかったら確実に消滅していたであろう衝撃を全身に浴び、内臓にダメージを受けた2人は勢いよく吐血した。
「恥ずかしがらなくても良いですよ。これは仕方のないことです。「生物」としての圧倒的な格の違いはね。」
何の感情もこもっていない言葉を発しながらベリアルが近づいてくる。
「ヒ、ヒール、、、!」
グレッグは急いで自身とノルに回復魔法をかけ、ベリアルが来るよりも前に何とか再び体勢を整える。
「ほー、回復魔法だけはなかなかのものですね。ですが、バラバラになっても再生できるでしょうか?」
グレッグの回復魔法に目を丸くしたが、それでもベリアルの顔からは一切余裕が崩れない。
戦力差を考えればそれも当然のことであり、ノルもそのことを自覚していた。
「クッソー、どうするかな。いくら回復できてもこれじゃジリ貧だ。」
「、、、、、、。」
忌々しそうに舌打ちをするノルとは対照的に、グレッグは考え込む。
「、、、やるしかないか。」
グレッグは小さくつぶやくと、すぐ隣にいるノルのほうを向いた。
「ノル君。あらかじめ言っておきますが、多分しばらくは回復魔法は使えません。巻き込まれないように気を付けてください。」
「は?」
ノルはグレッグが言っていることが理解できず、素っ頓狂な声で聞き返した。
「これから私はあいつに「最後の攻撃」を仕掛けます。もしもこれが通用しなかったらもはやどうしようもないでしょう。」
「何言ってんだ?なにか手があるのか?」
「はい。といっても、ぶっつけ本番ですがね。」
そう言ってグレッグは前に進みでる。そして、自身の上着を脱ぎ捨てて目の前にいるベリアルを指さした。
「宣言する。いまから三分以内にお前を倒す。」
数秒の沈黙ののち、目を丸くしていたベリアルが噴き出した。
「フフフ、何を言い出すかと思えば、頭を打っておかしくなりましたか?」
ベリアルの嘲笑を無視して、グレッグはベリアルに向けていた人差し指を自身の首に向けた。
「私とパナケイア様の「最後の切り札」を見せてやる。」
そう言うと、グレッグは人差し指を自分の首に突き刺した。
「おおい!何やってんだ!!」
「馬鹿め、結局自害を選びましたか。」
ノルとベリアルがそれぞれ異なる反応を見せる中、
ドクンッ!!
グレッグの体が大きく脈打った。
「ウゴオオオオッッ!!!」
グレッグの口から、普段の彼からは想像もつかない低い唸り声が発せられる。
しかし、異変はそれだけではなかった。
彼の上半身には輪郭を変えてしまうほどに血管が浮き上がり、筋肉がみるみるうちに膨れ上がっていき、グレッグの体を二回りほども大きくした。
そして、「異形」と言っても良い「筋肉の怪物」となったグレッグは野獣のような咆哮をあげた。
「ゴアアアアアアアッッッ!!!!」
読んでくださりありがとうございます。




