↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第4章 対転移者戦争開戦
98/99

第95話 先制攻撃

高所で玉座に座るルル・ルーンと下からそれを見上げるレイス・ビネガー。

2人が目を合わせたまましばらくの沈黙の時が流れる。

先に沈黙を破ったのは、玉座で片肘をついていたルルの方であった。


「本当に良かったかい?あんな足手纏いに任せてきて。お前が戦った方がまだ勝率が高かったと思うけど。」


ルルは玉座に腰掛けながらも、当然のように探知魔法を張り巡らせ、状況を把握し続けていた。

当然、彼は目の前にいるレイスがベリアルを倒してここにきたわけではないことも知っている。


彼からすれば、それは純粋な疑問であった。

いったいなぜ「弱者」に自身の「最強の副官」の相手を任せるのだろうかと。


それに対して、レイスの返答はあっけらかんとしたものだった。


「いや、まぁ、自信ありそうだったし大丈夫でしょ。むしろお前もあの執事と自分の心配をしたらどうなんだ?」

「俺が?なんでだ?お前に負けるからか?フフフ、、、」


ルルは心の底から可笑しそうに口を隠しながら笑って見せた。

その、さながら「子供のいたずらをほほえましく見る大人」のような態度をするルルにレイスは苛立ちを覚え、それを彼の中にいたフレイヤも感じ取っていた。


「いいだろう。物わかりの悪い奴に「現実」ってものを教えてやるのも「上に立つもの」の務めだ。」


そう言うと、ルルは玉座から立ち上がり、ゆっくりとレイスの前に下りてくる。


「だが、「それなりの力」を持っていることも事実だ。そこでだ、お前に褒美をやる。」

「褒美?」

「その通り。」


ルルはレイスのすぐ前に立つと、大げさなほど大きく手を広げてみせた。


「さぁ、好きに打ち込んでくるがいい。お前の攻撃をこの全身で受け止めてやるよ。」

「、、、なんだって?」


つい先ほどまで殺意を滾らせていたレイスだったが、ルルのあまりにも予想外の発言と行動に、その殺気が途切れて思わず虚を突かれたような反応をして、硬直してしまった。


「、、、、、、。」

「さぁさぁどこを攻撃する?頭もお腹も、なんなら目でもいい。それに別に一発じゃなくたって構わない。「転移者」を殴れる機会なんて本来一生かかっても得られるものじゃないぞ?喜んでかかってくるといい。」


ルルに挑発されても、レイスはすぐには動けなかった。あまりにも不可解なルルの行動に、レイスもその中にいるフレイヤも、その行動になにか「裏」があることを考えずにはいられなかった。


(コイツ、、、なにを考えているんだ、、、?)

(レイス気をつけて!怪しいわ!)

(分かってます。でも、、、)

「どのみち攻撃しなきゃ始まらない。」


そう言うとレイスは拳を強く握りしめると構えた。それを見て、ルルはニヤリと口角を吊り上げる。


「後悔するなよこのクソガキが!!」


レイスは吐き捨てると床を強く蹴ってルルに突っ込んでいった。ランドすらも上回る超スピードと、その勢いが乗ったレイスの左ストレートがルルの胴体に深く突き刺さる。

客観的に見るとルルの即死による「勝負あり」以外の何物でもない。

しかし、それだけで終わらなかったことは、打ち込んだレイス本人が一番よく分かっていた。


(、、、なんだこれは?)


レイスがまず気づいたのは、その「手ごたえのなさ」であった。

レイスの拳は「人間を殴った」とは思えないほど抵抗なくルルの体の中に入り込み、しかもルルからは出血すら一切ない。


「個体と液体の中間」


レイスが感じた印象はそれだった。そして、困惑するレイスの顔を見て、ルルはより一層可笑しそうに笑う。


「どうした?浮かない顔をして。俺の体がそんなに不思議か?」

「貴様、、、!」


こうなることを分かってルルが自分をからかっていたことに気づき、レイスは苛立ちから強く舌打ちをする。

しかしその直後、ルルの体に入った自身の拳にかすかな痛みを感じる。


「ッッ!!?」


異変を感じたレイスはすぐに腕を引き抜いて自身の左腕を確認する。

粘液がまとわりついたレイスの左腕は「シューッ シューッ」と音を立てて、煙を上げており、チクチクとした針で刺すような痛みが腕全体に広がっている。


「クソッッ!!」


その粘液が体に良くないものであることを察したレイスは、即座に力強く左腕を振り、付着していた粘液を飛ばした。確認すると、レイスの左腕は赤く焼けただれ、爪が全て溶けてしまっている。

その有様を実際に目の当たりにしたことで、先ほどまでは微かだった痛みがどんどんと膨れ上がっていくのを感じた。


「あぁ、、、ク、、、痛い、、、」

「フフフ、、、惜しい惜しい。もう少し付着したままだったら骨になってたのに。まぁそれでも、そのかわいらしい手が台無しだな。」


レイスはあまりの激痛のために、ルルの挑発にも反応できなかった。


(気を付けてレイス!こいつの体は普通じゃないわ!)

「それは、、、それは本当にこの身をもって体験しましたよ。」


今にも叫びたくなるほどの痛みに耐えながら、何とか思考を巡らせていく。


(水あめみたいな体に酸、、、これは、、、)

「お前のその体、、、スライムだな、、、?」

「フフフ、、、ご名答。」


自分の体のことを見破られたルルは満足げに口角をあげる。その表情はまるでレイスが自分の正体に気づくのを待っていたかのようだった。


「そう、俺は「スライム」だ。この体はただ形を変えて色を付けているだけ。」


ルルはそう言うと腕を伸ばしてレイスに自身の掌を見せる。するとルルの手はあっという間に透き通った美しい緑色になり、指がつながって腕全体が個体と液体の中間のような細長い物体になった。


「知っているはずだ。「物理攻撃を完全に無効化する」というスライムの特性を。お前が素手で戦うという情報はすでにこちらも入手している。つまりお前には俺にダメージを与えることが、」

「だったらなんだ。」


ルルに最後まで喋らせることはなく、レイスはルルの頭部に回し蹴りを浴びせる。

それにより、ルルの首から上が弾け飛んだが、すぐにグニョグニョと動いて元の顔が再生した。

自身の話を遮られたことに対して、これまで余裕を保っていたルルはムッとした。


「おいおい、人が喋ってるのに、」


ボボボボンッ!


それさえも遮って、レイスはルルの全身に猛攻を浴びせていく。ルルの体には至る所に穴が開く。


「そんなにスライムの体が自慢なら、バラバラにするまでだ。」

「、、、チッ」


ルルはここで初めて苛立たしげに舌打ちをすると、ほんの僅かに右手を動かすそぶりを見せた。


「、、、ん?」


レイスが一瞬訳が分からないでいると、その瞬間、レイスの胸には横一文字の鋭い切り傷が走った。


(速い、、、!)

「舐めやがって、俺がただ攻撃が効かないだけのスライムだと思ったのか?」


ルルがそう言って右手を剣のように変形させ、レイスに向かって振り下ろす。「受けることができない」と察したレイスは即座に横に飛び、ルルの腕の剣から発せられた斬撃を回避する。

斬撃は瞬時に、街一つ分はあろうかというルルの広大な玉座やその外の屋敷を容易く超え、次元そのものを両断したと錯覚するほどの両断してしまうほどの巨大で長い亀裂を生みだした。


「、、、なんて攻撃、、、!」


レイスが呆気にとられる間もなく、ルルが即座に接近してきて、レイスの体を上下に分断するような横なぎの一撃が放たれる。

レイスはとっさに床に伏せ、その横なぎの一撃を回避する。自身の頭上を「そのまま立っていたら確実に命を失っていた」ことが確信できる攻撃が通ったことで、レイスの顔には思わず冷汗が浮かんだ。そしてその隙の逃さず、再び腕の剣を伸ばして振り上げた。


「俺の屋敷、俺の手下、俺の「世界」、全部、俺の勲章だ。この広大な世界すべてが、俺の「力」を証明してくれる。そして、お前の死体も俺の勲章だ!」


意気揚々と「次元を容易く切り裂く斬撃」をレイスの頭上に振り下ろす。しかし今度のレイスはその攻撃を避けなかった。彼は渾身の力を込めて両腕をクロスさせ、皮膚を切られながらも硬い筋肉と骨でルルの斬撃を防ぐ。


「ム?」


さすがに自分の攻撃を防がれるとは思っていなかったのか、ルルは目を丸くする。


「勲章か、、、ッ それはどうかな、、、ッ」


レイスがルルの剣を振り払って彼の胴体に拳を叩き込むと、胴体には穴が開き衝撃で体が大きく後退した。


「、、、チッ。」

「思ったよりも全然大したことないじゃないか、「転移者」。偉そうなことばっか言ってこの程度かよ。」


レイスの挑発に、ルルはニヤリと口角をあげる。


「言ってくれるじゃないか。俺の力の神髄などまだお前には欠片も見せていないというのに。」

「だったら見せてみろ。お前のそのボディが床に落としたゼリーみたいになる前にな!」


レイスはルルの言葉を半分聞き流し、再び飛びかかった。


「言われなくても見せてやるさ。この俺の本当の「能力(ちから)」を。」


それと同時に、レイスのスピードをさらに上回ったルルの攻撃がレイスの顔を捉える。かつてないほどの衝撃をうけたレイスは勢いそのままに吹き飛ばされていく。

一瞬意識が途切れたレイスが目を覚ました時、彼は自分がルルの城を飛び出して庭園の芝生に墜落していることに気づいた。


「うぅ、、、クッソ、、、まともにくらってしまった、、、」


レイスは悔しそうに顔を押さえながら起き上がる。

それと同時に彼はルルの攻撃を受けた時に感じた違和感を思い出していた。


(あの重たい衝撃、、、さっきまでとは明らかに攻撃の質が違った、、、!)


そうこう考えているうちに、城から飛んできたルルがレイスの目の前に下り立った。そしてレイスは、目の前のルルの「手に着いたもの」に目が釘付けになった。


「なるほど、これがお前の能力か。」

「その腕は、、、」


レイスは目を疑った。レイスの中にいたフレイヤも目を疑った。

なぜならルルの手には、ほんの数日までレイスが装着し戦っていたフレイヤとの融合の象徴である深紅のガントレットが装着されていたからであった。


「俺は「捕食」したものの能力を自分のものにできる。チートスキル「暴食神の晩餐(ベヒーモス・ディナー)」。お前程度の能力をコピーするだけならさっき溶かした左腕だけで十分だ。」


「、、、くそったれが。」

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。