第90話 レイスVS10神王(4)
数分前、レイスが館のボールルームに飛び込んだ直後。
「ここだ!来い!」
竜王ファフニールの指示で、6人の10神王がボールルームに向かっていた。
扉の中から聞こえる戦闘の音は、自然と彼らの闘争心を昂らせる。
「あいつめ、今度こそ目にものを見せてやる。」
ファフニールたちは扉を開いて中を覗き込んだ。
そこで見たものは彼らにとって信じられない光景であった。
「な、なんだコレは、、、」
鬼王ミレナと鉄王ゴードンの異次元の破壊力の攻撃を平然と受け止め、彼らをそれぞれ一撃の元に打ち倒し、それだけにとどまらずチートスキルを解放したギルガメオンの神速の一撃を見切って防ぎ、そのまま彼の巨体を背負い投げで投げ飛ばす。
そんな、鬼神のごとき戦いを見せるレイスが、彼らの目に写ったのである。
「危ない!」
ファフニールたちが身をかわした直後、レイスに投げ飛ばされたギルガメオンが、彼らが覗いていた扉を壊して廊下に倒れ込んだ。
「う、うう、、、」
「だ、大丈夫!?」
「精霊王ナイア」が急いでギルガメオンに回復魔法をかけ、彼の体中にできていた傷は瞬く間に塞がった。
「た、助かった、、、」
「ギルガメオン、お前ともあろう者が、、、」
無様を晒すギルガメオンに呆れてため息をついた「熾天王セルフィム」が、魔力を高めてレイスに攻撃を仕掛けようとするが、それをファフニールは制止した。
「まてセルフィム!無闇に飛び込むな!奴の力はどうやら想像以上らしい。」
「ではどうしろと?」
ファフニールは少しだけ考えた後、ゆっくりと口を開く。
「、、、「合体技」で一気にカタをつける。ネレス、今回はお前が「中央」だ。準備をするぞ。」
「わ、分かった!」
「まぁ、いいだろう。しかし、あんな下等なカスに、、、」
「この際やむを得ん。ギルガメオン、お前たちはなんとか時間を稼げ、分かったな。」
ファフニールたちはギルガメオンに指示を出すと、「合体技」の準備をするためにその場を離れた。
「ハァ、、、ハァ、、、ハァ、、、、、、来いよ。」
戦い詰めでさすがに疲労がたまっている様子のレイスであったが、彼の戦意はまるで衰えた様子はなく、ミレナとゴードンを睨みつけながら手招きをして見せる。
「な、舐めるな!!」
侮られていると感じたミレナは戦意を取り戻して金棒を握る両腕に力を込める。
「チートスキル「闘神の鉾」!!」
ミレナの体が闘気に包まれ、彼女の放つ威圧感が何倍にもなる。
「ぶっ潰れろォォォッッ!!!」
稲妻を纏い、黒から黄金色に変わった金棒をレイスに向けて振り下ろす。
その一撃の威力は余波だけで無数の多元宇宙を存在ごと一かけらも残さず消滅させるほどであり、まさに必殺と呼ぶにふさわしかった。
その絶望的な一撃に対し、レイスは拳を強く握りしめるとタイミングを計って迫りくる金棒を迎え撃った。
「ラァッッ!!」
激しい音を立ててぶつかったレイスの拳とミレナの金棒は、競り合いにすらならず、金棒が木っ端みじんになることにより一瞬で決着がついた。
「あ、、、、、、」
「ドラァッ!!」
自慢の最強の武器を破壊されて呆然としているミレナの顔に、レイスはすかさずラリアットを繰り出した。顔が変形するほどの衝撃を受けて、勢いそのままに床に叩きつけられたミレナは、呻き声をあげながら両手で顔を押さえる。
「ば、馬鹿な、、、!わ、儂の「鍛冶神の手」で作った金棒が、、、!」
それを近くから見ていたゴードンは、金棒の持ち主のミレナ以上に、金棒が破壊されたことに驚愕していた。
武器、防具の製造を得意とするドワーフ族の中でも、ゴードンの腕は別格であった。そのゴードンに、チートスキル「鍛冶神の手」が与えられたことで、彼が作り出す武器の性能は転移者の1人ウォーレンが生み出す武具に次ぐほどのものとなっており、その頑丈さは10神王でも全力の攻撃でもなければ傷をつけることもできないほどであった。
ミレナの金棒の性能は、数あるゴードンの作品の中でも本人の持つオリハルコンハンマーと並んでトップクラス。そんな、最高傑作と言ってもよいミレナの金棒があっけなく破壊されたという現実を、ゴードンは受け入れることができなかった。
「う、、、ぐ、、、」
その光景を見て、ゴードンは完全に戦意喪失した。ハンマーを握る手は震えて汗がにじみ、足は一向に前に進まず少しずつ後退していくことしかできない。
そんな有様の彼に対して、レイスは無慈悲に足に力を込め、高速で突進していく。
「く、くるな、、、来るな来るな来るな!!!」
怯え切ったゴードンはハンマーを前に出した。それを見たレイスは地面を蹴ってその巨大なハンマーに跳び蹴りを浴びせた。
レイスの蹴りは一瞬でゴードンの最高傑作に突き刺さり、勢いそのままにゴードンの胴体を貫いた。
「ボハァッッ!!?」
ゴードンは大量の血を吐きながら床に倒れ、胴体に穴が開いたことに対して恐怖と混乱が入り混じった表情を浮かべ、やがて動かなくなった。
「、、、よし。」
ゴードンの戦闘不能を判断したレイスは今度は倒れているミレナに目を向ける。
彼女はいまだに傷ついた顔を押さえながら床の上で悶絶している。レイスはミレナにゆっくりと近づいていき、とどめの一撃を放つために腕を振り上げた。
その時、顔から手を離したミレナと目が合う。最初に現れた時の余裕が嘘のように怯え切った表情となり、体中がガタガタと震えて目には涙が浮かんでいた。
「あ、、、あわ、、、た、、、たす、、、助け、、、」
その瞬間、金槌のように振り下ろされたレイスの拳がミレナの顔にめり込み、その衝撃でボールルームの床が粉砕されて屋敷の一階にまで落ちていった。
拳を引っこ抜いた後のミレナの顔は血で覆いつくされており、どのようになったのかさえ分からない。
見るも無残な状態となったミレナはほんのわずかに呼吸をしていたものの、明らかに戦える状態にあるとは思えず、レイスは満足そうに頷いてその場を後にした。
「ハァ、、、ハァ、、、これで仕留めたのは5人、、、残りあと4人か。」
レイスはずんずんと館を歩きながら残りの10神王を探すものの、一向に見つかる気配はない。
「いったい、、、どこに行ったんだ?」
『レイス!外!』
「え?」
突然レイスの中から飛び出してきたフレイヤが慌てた様子で窓の外を指さした。
フレイヤが指差す方向を見てみると、竜王ファフニール、熾天王セルフィム、精霊王ナイアの3人が空中で三角形になるように配置し、その中央には海王ネレスがいた。
周りの3人はそれぞれ中央のネレスに向けて腕を伸ばし、その掌から魔力を送りこんでいる。
ファフニールもレイスの存在に気づいたようで、彼はフッと笑うとレイスに手招きをして見せた。
「あんにゃろうめ、、、仕掛けてくる気だな。」
『と、とんでもない魔力量だわ、、、!一体何を、、、』
「なんだろうと関係ありません。ほら、早く中に戻ってください。」
『き、気をつけて!』
フレイヤを自身の中に戻したレイスは空中の4人を睨みながら助走のために距離をとると、一気に駆け出して窓から飛び出した。
それを見たファフニールの口角が上がる。レイスがわざわざ飛び出してきてくれたことで、これから行う攻撃で屋敷を失わなくてすむからである。
「バカめ、のこのこ出てきやがった。ネレス!やれ!」
ファフニールの命令と同時に、三角形の中心で力を注ぎこまれたネレスの魔力が一気に膨れ上がる。
「ッッ!!」
どのような攻撃が来るのかとレイスが身構えたその時、
レイスは目の前が真っ暗になった。
読んでくださりありがとうございます。




