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おまぬけさん

犬先生は数分後に戻ってきた。

もういいぞと言って穴蔵に入ってきたので、加奈は先生に続いて穴蔵の外へ出る。


「どこ行ってたんですか?先生」


後ろから着いてくる加奈をチラリと見た先生は「森」と言った。だが、この辺りはほとんど森なので、というか元から加奈は森で特訓やら何やらをしているので、先生のこの答えは何の回答にもなっていない様な気がする。

次に、何かあったんですか?と聞いてみた。


「何もない」


先生はやはり端的に言う。

突然加奈に激突してきて、いわゆる『隠れてろ』的な事を言ったくせに、何もないと言う事はないだろう。そう思って、口を開きかけた加奈はこの時。とてもとても注意力が散漫であった。


つまり、足下にあったカゴ(いつも先生がこれにご飯を入れて持って帰ってくる)に気付く事が出来なかったのだ。


「……っうわぁ!!」


そんなわけで、加奈はカゴに蹴躓いて顔面からビタンッと派手にすっ転んだ。


顔面強打とまではいかなかったが、あまりにも間抜けすぎるその展開に、うつ伏せに倒れたまま起き上がる事の出来ない加奈。

頭の上から犬先生の冷たい視線を感じた。


「……聴力の特訓を再開するぞ」


そう言い捨て、犬先生が歩いて離れていったのを感じ、加奈はようやく起き上がる事が出来た。恥ずかしさに顔が熱くなる気がした。







――――――――――


「いいか、まず俺の声を覚えろ」


加奈はコクコクと頷き犬先生の次の言葉を待つ。


「俺が少しずつ離れていくから、俺の声を天狼の耳で聞け。聞こえたら手を上げろ」


加奈は頷き犬耳を出して、耳せんを人間の耳につける。先生が加奈から2、3歩離れた所で喋った。


「聞こえるか?」


加奈は聞こえたので手を上げる。だが今のは人間の耳で微かに聞こえたのか、それとも犬耳で聞いたのか判断がつかない。


先生は今度は10メートルほど離れ、喋る。口が動いているのは分かったが、声は聞こえなかった。手を上げない加奈に犬先生は何事か喋り続けた。加奈は目を瞑り犬耳に意識を集中させる。先生の声を、探す。そうしていると頭の中に先生の声が響いた。


「おじいさんは言いました」


……おじいさん?


加奈は耳せんを外し先生に問うた。


「せんせー、今おじいさんって言いましたかー?」


犬先生はまた離れていった。どうやら言っていたらしい。おじいさんって何?と気になる所だがとりあえず特訓に戻る。犬先生はいつの間にやら見えなくなるほど離れて行ってしまったらしい。姿が何処にも見当たらない。

加奈は耳せんをつけ直し犬耳にまた意識を集中させ、先生の声を探す。頭に声が響いた。


「まぬけまぬけまぬけまぬけまぬけまぬけまぬけ」


加奈は耳せんを外し、犬先生が消えた方向へ歩き出した。暫く行くと犬先生が見えた。もう喋ってはいないようで、歩いてきた加奈を先生は見つめている。


「今、まぬけって言ってましたか」


先生はニヤリと笑っただけだった。だが、どうやらこの聴力特訓は成功らしい。

なんだか腑に落ちない。何だか全然腑に落ちない。


その後、最終試験としてアブリルの町にいる先生の声を聞き取れる様になり、加奈の聴力特訓は終了したのだった。

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