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町へ行きたい

犬先生から耳せんを貰ってから2日と数時間が経ちました。もうすでに異世界に来てからは、1週間以上は経っているかと思います。


未だアブリルの町の音は聞こえてきません。犬先生には呆れられてしまい、最近では全く喋りかけてくれなくなりました。前からそんなに喋ってくれる方でもなかったのですが……。


「…………無理」


犬耳尻尾を出し入れするより格段に難しい。そう思う加奈であった。


「先生、アブリルの町を見に行ってもいーですか?」


加奈は先生に聞く。

見たことも聞いたこともない町の音だから聞く事が出来ないのだ。一度その町の音を聞いてしまえば、それを想像して集中すれば聞こえるようになるのではないか、と加奈は考えた。


「…………」


だけど先生は無言だった。きっと駄目だ、ということなのだろう。


「大丈夫だよー先生、気を付けるからさぁ」

「駄目だ」


先生は頑なだった。何故なら加奈はこの間失敗をしてしまったからだ。


この間の『犬先生体当り事件』の時の事である。加奈が先生を小馬鹿にしたので(加奈自身は馬鹿にしたつもりは無かったのだが)先生が怒ってしまい加奈に体当りで制裁をくわえた事件。その事件の時、お腹に与えられた衝撃、さらにその後頭に与えられた痛みに耐えていた加奈のお尻には尻尾が出ていたらしいのだ。聴力の特訓をしていた時は犬耳しか出していなかったのにもかかわらず、だ。


犬先生曰く。


「何か衝撃やびっくりする事、驚いたりした時に無意識に出してしまうのだろう」


との事だった。


「先生の意固地ー」


先生も犬、……じゃなくて狼のくせに町に行って買い物してるじゃないですかー、と言う加奈を無視して犬先生は木陰で眠るためなのか、移動していった。仕方なく聴力特訓を再開した加奈だったが、疑問は残る。


「喋る犬はいいのに、犬耳尻尾を生やした人間はなんで駄目なのかな?」


まぁ、駄目な世界なんだろうなと一人納得して特訓を再開しようとしたその時。

突然犬先生がこちらに走り出してきて加奈に激突した。


「っと……!せ、せんせー、痛いです」

「耳を引っ込めて穴に行ってろ」


それだけ言うと先生は、また走り出して森の奥へと消えていく。何なんだと思いながらも加奈は言われた通り出していた犬耳を引っ込め、寝る時に使っている穴蔵に入った。


「先生、どこ行ったんだろ?」


加奈は犬先生が帰ってくるまで穴蔵でじっと座って待っていた。

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