犬耳尻尾は自由自在
異世界に来て5日目。加奈はようやく犬耳と尻尾を引っ込める事に成功した。
「先生、見て見て!消えましたー」
苦難すること4日と数時間。やっと成功する事のできた喜びに加奈は灰色の犬、犬先生にこの喜びを報告した。
「遅い」
だが、先生は加奈の喜びを一刀両断した。
「耳と尻尾のコントロールぐらい1日、2日でやれ。どんだけ時間かかってるんだお前は」
加奈は先程の喜びを封印し、目の前にいる犬先生を睨み付ける。ちょっとぐらい褒めてくれてもいいではないか。喜んでくれると思ったのに。
「で、出せるのか?」
先生は加奈に視線をやり、そう言った。加奈は目を瞑り念じてみる。………出ない。出せなかった。引っ込んだものは引っ込んだままだった。
加奈は黙って首を横にふる。
「…………」
先生は無言のままその場を離れていった。その後加奈が犬耳、尻尾を出せるようになるまでに数時間かかってしまった事はいうまでもない。
そして、加奈が自由自在に犬耳尻尾を出せる様になったのを確認すると、先生は次の段階へ行くと言った。
「慣れれば簡単ですよね、これ」
加奈は犬耳尻尾を出しては引っ込め、出しては引っ込め、をしながら先生の話しを聞いていた。「こんな事もできますよー、先生」と言って犬耳だけ出したり、尻尾だけ出したり、両方出して犬耳引っ込めてー尻尾消してー、を繰返し遊んでいたら先生に怒られた。
ちょっとした茶目っ気なのに。
「次は聴力だ。天狼は耳がいい。やろうと思えば何キロも離れている所の音を聞くことができる」
先生が耳を出せ、と言ったので加奈は犬耳だけを出した。
「ここからアブリルの町の音を聞くんだ。人の声、町の喧騒なんでもいい」
「アブリルまではどのぐらい離れているんですか?」
先生は「約1キロだ。集中すればすぐできる距離だからな。ちゃんと集中しろよ」と言って脇に置いてあった荷物を口にくわえ加奈に差し出す。中には今日の分の食べ物が入っていた。木の実や果物、ではなくちゃんと人の手で作られたのであろう『ご飯』だ。
「前から思ってたんですけど、このご飯ってどこで手に入れてくるんですか?」
加奈は毎日犬先生が持ってくるこのご飯が何処から来ているのか、この4日間すごく気になっていた。だが、なんやかんやでずっと聞けず仕舞いになっていたのだ。
先生は答える。
「アブリルで買って来ている」
先生のその言葉に加奈は、ついつい「犬が?」と口に出してしまい、先生にすごい目で睨まれる事になってしまった。
「狼だ」
先生はそれだけ言うと加奈から離れ、木の根元に寝そべり目を瞑る。犬先生を怒らせてしまったらしい。
とりあえずそっとしておこう。そう思って加奈は集中するために目を閉じた。頭に生えている犬耳に意識を集中させる。
「…………」
ぐー、という自分のお腹の音が聞こえた加奈は、先生が持ってきてくれたご飯を先に食べることにした。




