灰色狼編
『少女は狼の夢を見る』の番外編です。主人公加奈が灰色狼、犬先生に出会い犬耳尻尾を出し入れする始めての特訓中のちょっとした小話。
犬先生視点です。
あの子は不安ではなかったのだろうか?いきなり訳の解らない世界に連れて来られ、俺みたいな灰色の狼に『お前の前世は天狼だ。その力が暴走しないように特訓をする』などと言われて。
あの子は、泣きもせず俺の言う通りに特訓の日々を過ごした。
覚えは悪く要領も悪かった。見ていて呆れるほど、うまく天狼の力を扱えていなかった。
当たり前だ。
あの子は今まで、普通の人間として過ごして来たのだから。
「先生ー」
「………」
「せーんせっ」
「……」
「せんせーーっ!!」
離れた所から聞こえる叫び声にため息をつきつつ、お気に入りの木陰からゆっくりと起き上がり、自分を呼ぶ少女に近付く。
「何だ?」
問いかける俺に、少女は眉間に皺をよせ遅いですよっ!と怒りをあらわにする。
「何ですぐに来てくれないんですかっ!」
「出来たのか?」
「えっ?」
「耳と尻尾はまだ出たままのようだが」
その言葉に少女は誤魔化すようにあははと笑い、そんな事よりっ!と意気込んで叫ぶ。
「今、あそこに虹がっ!虹が出てたんですよっ」
「虹なんて珍しくもないだろ」
「珍しくはないですが……綺麗じゃないですか。だから先生にも、と思って呼んでたのに」
のろのろと歩いて俺が来る頃には、虹はとうに消えてしまっていたらしい。
「先生が早く来ないから」
「虹に興味はない」
「じゃあ何に興味があるんですか?」
俺の興味?
不信げに見ていた俺に、少女はにっこりと微笑む。
「私は、今一番先生に興味があります」
「……………」
「先生が好きな物は何ですか?」
「………」
「あ、じゃあ好きな事は?」
「…………」
「え、えーっと、ですね、じゃあ何かして欲しい事とかありますか?マッサージとかマッサージとかマッサージとかっ!」
「特訓」
何だか魂胆が見えてきた少女に、俺はきっぱりとそう言ってやる。
「特訓はどうした」
少女は、うっと呻き声をあげ、しどろもどろになりながら話す。
「……あの、ですね、私は先生に少しでも気を安らげてもらおうと思ってですね……別に全然出来る気がしないから、先生のご機嫌を取っておこーとか、あわよくばご機嫌取りのついでに、もふもふしたいなーぐりぐりしたいなーとか、そんな事はこれっぽっちもそれっぽっちも、ちっともちーっっとも決っっして思ってないですよ?」
長々と言い訳を続ける少女を無視し、俺はきびすを返して木陰へと戻る。後ろから、少女の泣きそうな声が聞こえるがやはり無視する。
少女にはこういった言動がちょこちょこ見られる。出来なければ諦め、もっと簡単に力のコントロールをする方法はないのかとめんどくさがり、半ば呆れぎみの俺のご機嫌とりに、ふとした事で声をかけ、話しかけてくる。本当に自分の今の状況をちゃんと理解しているのか、甚だ不安だ。
少女の前世は天狼。
その天狼の力が暴走して少女が天狼化してしまえば、あの少女に未来はない。
少女に未来をあげられるか否かは、俺しだい。
木陰に寝そべり、少女を見る。大人しく特訓に戻ったようだ。時々唸り声をあげ、ぐるぐると歩いたりしている。
少女が特訓を始めて既に数日が経とうとしている。少女の耳と尻尾が出し入れされる様子は毛ほどもない。
こんな調子で、本当に大丈夫なのだろうか。
「うぅ……出来ない、出来ないよせんせー…」
耳を澄ませば少女の声が聞こえる。天狼は耳がいい。聞こうと思えば、遠くの声でも拾う事が出来る。
少女は俺を先生と呼ぶ。名前を名乗らない俺に、そう呼ぶことに決めたみたいだ。
「先生……か」
狼の俺が先生。
先生などと呼べるほど、俺は偉いもんじゃないんだがな。
自嘲ぎみにそう思いながら、ふと目線を逸らすと、少し離れた所に小さな虹が出来ていた。当たり前だが、先程少女が見た虹とはまた別の虹だろう。
虹はすぐに消え、そこには何ごともなかったかのように元の景色が広がる。
「………」
少女は虹が綺麗だと笑って言った。不安な顔をせず、少女は笑う。
少女の不安は、
今の所見えない。
犬先生が書きたくなりました(笑)
ので、今日にぱっと思い付いたやつを、ぱっと書いてしまったので直しがきっと入るかもしれません。めんどくさかったら直しませんっ!!
そして……間が空いたので、キャラ設定があってるか不安……。やっぱ直すかも。
次回更新………
あると思うから続きます、にしました(笑)
まだまだ犬先生を書きたいー。っていう願望。




