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天狼

「君は前世で天狼だったんだ」


目の前に突然現れた灰色の犬はそう言った。曰く『前世の天狼の血が君の中に現れ始めたので、その血が暴走する前に手をうつために来た』らしい。


前世が天狼……。

別に知りたくもなかったが、図らずしも自分の前世が分かってしまった加奈である。


「天狼の血が完全に出て暴走する前に、その力を自身でコントロールする訓練をしてもらう」


灰色の犬は言う。その第一訓練が私に突然生えた『耳と尻尾』らしい。


「この突然生えた耳と尻尾をどーすればいいんですか?」


順応早いな、お前。そう言って呆れ顔の灰色犬は説明する。


「その耳と尻尾は君の中の天狼の力を外に少し引き出したから出てきたものだ。まずは力をコントロールできるように、その耳と尻尾を自分の意思で出したり引っ込めたりできるようになってもらう」


出したり引っ込めたりってどーすれば?そう聞くと犬は念じればいいだけだ、と言った。


加奈は試しに念じてみることにした。

無言で頭の中祈る。


「……………」


頭を触ってみる。まだ犬耳はしっかりと私の頭の上にあった。後ろを振り返るとふさふさの尻尾もある。


「簡単に出来たら誰も苦労しない。幾らかの努力が必要だ」


努力か、めんどくさいな。

だが、勿論そんな言葉口には出さなかった加奈。


「あのー、ところでここはどこですか?」


代わりと言っては何だが、加奈はさっきから気になっていた事を灰色の犬に尋ねる。ここは見渡す限り森、森、森だ。川の流れる音がするので、近くに川が流れているのだろうことはわかるのだが。


「アブリルの町近くにある森だ。あまり人は寄り付かないから丁度いいと思ってここにした」


アブリル?日本にそんな横文字町名ないですよねーと言ったら犬は当然のようにこう言った。


「異世界だからな」


……そんな気はしてたけど、改めて聞かされるとなんだかまだ夢の中にいるような気がしてくるから不思議だ。ほっぺたをつねってみる。痛かった。


やっぱり夢ではないらしい。

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