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考えるのを、止めた。

最後らへんに、残酷な表現が出てきます。苦手な方、好きじゃない方は読むのはおやめ下さーい。



・・・なんで、こんな展開に進んだんだー!!

外に出ると雨はもうあがっていた。狼を見た、と言うニチカを探すため森へと急ぐ一行だったが、その途中先頭を歩いていたエルガードは振り返り、アイナさんと加奈に夜も遅くなってきたから家で待ってた方がいいと言った。


「大丈夫よ。私を誰だと思ってんの、エル」


アイナさんは自信満々にエルガードにいい放つ。金髪美人の迫力あるアイナさんのこんな態度、めちゃめちゃカッコいいです。加奈は惚れ惚れした。


「でも、加奈ちゃんは私逹の家で待ってる?ニチカを見つけて灰色狼さんの話しを聞いたらすぐに帰って来るから」


今度は加奈が自信満々に二人にいい放つ番だった。


「何いってるんですか、アイナさんもエルガードも。忘れてませんか?私は先生の指導のもと、天狼の力の特訓をしていたんですよ?それに森なら私のライフワークです」


そう言ってから加奈は、もしかしてエルガードとアイナさんって一緒に住んでるんですか?と聞いてみた。さっき私達の家、と言っていたのが気になったのだ。


「今は一緒に住んでるわよ」


アイナさんが笑顔で意味深な事を言う。『今は』って、どーゆう事ですか。


「でも、加奈ちゃん。まだ特訓中なんだろ?灰色狼が言ってたぜ、できはあんまりよくない方だって」


エルガードが失礼な事を言ったので、むっとした加奈はつい何時間か前に使えるようになった天狼の力を見せてやることにした。ちょうど町から出た所で、周りに人がいなかったのもあり場所的には十分だった。


犬耳尻尾をだし神経を集中させて、自分の中の天狼の力に意識をやる。それを全身に流すようにして外に出す。

目を開けると加奈の体は銀色に輝いていた。


「わぁ、すごい光ってるねぇ」

「可愛い!耳と尻尾があるー」


エルガードは光りに、アイナさんは犬耳尻尾にそれぞれ反応を見せる。いやいや、そこを見て欲しかったわけじゃないんだけど!


「あの、こんな感じで天狼の力は多少なりとも使えるので、足は引っ張らないです。森へは私も行きます」


そう言った加奈の言葉を聞き、エルガードとアイナさんは分かったと頷いてくれた。


「後で、尻尾とか触らせて貰ってもいい?」


アイナさんが楽しそうに加奈に聞くのを見て、俺もーとエルガードが言った言葉は、加奈は聞かなかった事にした。


後から聞いた話しだが、加奈が犬先生と特訓などをしていた森は凶暴な動物やモンスターなどが住み着く森で、とても危険な場所だったらしい。


「そういえば先生が最初の頃、人も寄り付かないみたいなこと言ってたっけ」


そんな危ない森など、人が寄り付かないのは当たり前だ。考えてみると、そんな場所で呑気に寝たり食べたり特訓したりしていた加奈はとてもとても危なかったのでは、と加奈がぞっとするのはもう少し後の事。


犬先生を見つけるため、ニチカと言う人を探しに森へ入った三人は凶暴な動物やモンスター逹に出会ったが、エルガードのナイフ捌き、アイナさんの武術、そして加奈の天狼の力で強靭になった肉体、の三位一体攻撃に勝てる者など皆無に等しかった。


アイナさんはアブリルの町で武術の臨時講師をしているらしく、結構な腕前の持ち主であるようだ。彼女曰く


「拳は刃物よりも強し。じゃんけんでも一緒でしょ?」


異世界にもじゃんけんのシステムがあったのかとそこに驚いてしまう加奈であった。



暫く森をニチカを探してうろうろしていた三人は、突如聞こえた悲鳴に驚き足を止めた。


「な、何?」


あっちの方だと走り出したエルガードを追って、加奈とアイナも悲鳴の聞こえた方へと走る。そこには若い青年と、大きな熊がにらみ会うようにして立っていた。


「加奈ちゃんは隠れてて!」


加奈は言われた通りに、青年から見えないように隠れるようにしてしゃがむ。とりあえず天狼の力の銀色の膜は消しておく。


熊が青年に襲いかかろうとするのをエルガードがナイフで受け止める。アイナさんがそのすきに熊の体に拳をいれるも、熊はびくともしなかった。大きい分、皮と肉が分厚かったのだろう。熊はアイナさんにも襲いかかろうとするが、アイナさんはそれをひらりと避けて今度は回しげりを熊の足にいれる。さすがによろけてしまった熊はいつの間にか後ろに廻っていたエルガードの持っていたナイフを、もろに受ける事となってしまった。熊はそのまま逃げる様に退散していき、青年はその場に座り込んで脱力する。エルガードとアイナの連携プレーというすばらしい展開に、思わず小さく拍手を贈ってしまう加奈であった。



「大丈夫だった?」

「あ、有難う御座いました。大丈夫です」


熊に襲われていた青年はエルガードの手を取り立ち上がる。まだ幼さを残している顔は青ざめていた。あの青年がニチカなのだろうか。


「貴方がニチカさん?」


アイナさんが青年に聞く。青年は少し驚いた顔をした後、あなた逹もニチカを探しに来たんですか?と言った。


「あんたはニチカじゃないのかー」


エルガードは肩を落として項垂れた。加奈も犬耳尻尾をしまって、三人に近付く。


「ニチカさんの知り合いなんですか?」


突然出てきた加奈に青年は多少驚いたようだったが、加奈の質問に答えてくれた。


「俺はニチカの友達でロータスって言います。ニチカを探してたんです。家にいなかったからまた森に行ったのかなと思って。そしたらあの熊に襲われて」


怖かったですーと青年は言った。


「あの宗教団体の所かもなーとも思ったんですけど」

「宗教団体?」


加奈がロータスに聞く。なんだか怪しげな感じがぷんぷんする名前だ。ロータスはしまった、

と言うような顔をした。

「これ、実は黙っとけって言われたんですけど・・・」


ロータスは言いにくそうにしていたが、エルガードとアイナ、そして加奈の三人に囲まれてしまったら言わざるを得なかった。


「えーと、アブリルの町から少し離れた所に建物があるんです。そこで少人数制で何かしているらしくて。ニチカは最近その団体に入ったみたいなんです。森で狼を見たからって」

「狼を見たからってだけでその団体に入れたの?」

「そうみたいです。俺もよく知らないですけど、狼の研究してる団体みたいで」


狼の研究?


「ニチカが狼をこの森で見たって事で、捕まえに来たんですよ。研究材料にするつもりだったみたいですね」


研究材料・・?狼を・・。


「君はニチカさんが狼を見たって言うのを信じているのか?」


エルガードが眉間に皺をよせ、少し不機嫌な感じでロータスに聞くと俺も見たから、とロータスは言った。


「朝、ニチカと一緒に見たんです。団体の奴等が狼を捕まえる所を。凄かったですよ、あの灰色の狼もかなり抵抗してましたけど、やっぱり人間の方が強かったって事ですね。血まみれになってもまだ動いてたから、やむ無く頭を切断したんです。殺したくはなかったみたいですけど。さすがに頭を切断したら動かなくなりましたね」


加奈はロータスを見る。今、切断って聞こえたような気がした。切断って、何・・・?


狼って俺初めて見ましたよ、本当にまだいたんですねーと青年、ロータスは言う。


「・・・切、断?」


頭を切断。この青年は先程そう言った。


「そうです。こう首の所をざっくりと。アイツら頭と体、両方持っていったんですよ。何に使うのやら」



加奈はロータスを呆然と見ていた。彼が何を言っているのか解らなかった。無言でロータスを見ながら必死に考えようとする。


「でも生きてる方がやっぱ貴重ですよね?絶滅したとされていた狼ですから。でもしょうがなかったみたいです。殺したとしても体は残るから研究の材料には十分なんだって言ってました」



加奈はいつの間にか近くの木にもたれ掛かっていた。必死に考えを整理しようとするが、頭がぐるぐるして自分でも今何を考えないといけないのか、わからなくなる。研究?材料?頭を切断?持ち帰る?犬先生を?


頭が痛い、ロータスが喋っている言葉が耳から頭に入ってくるが、考えが追い付かない。ふらふらする。何がなんなのか、解らない。切断。気持ち悪い。気持ち悪くて、吐きそうな気がしてきた。手で口を押さえる。何も出てこなかった。ただ何か気持ち悪い感覚だけが残る。

エルガードとアイナさんがどんな表情をしているのか見えなかった。周りの気色が目に入らない。頭ががんがんする。さっきから喋っているロータスの声だけが、鮮明に加奈の耳に入ってくる。

そしてロータスは笑いながら、続けてこう言った。


「でも狼がまだいたなんて、本当にびっくりしましたよ。でもあんな凶暴なモンスター、殺される前に殺してもらえて良かったですよね。まだ生き残りがいたなんて、あの団体が殺してなかったら俺が殺してましたよ。あんな化物」




加奈はロータスを、見た。






笑っているロータスを見た、その瞬間




加奈は考えるのを、止めた。

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