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銀色の狼、再び

『生きたいか』


声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。


『そういえば、この質問は前にしたな』


声が笑ったような気がした。


『力が欲しいんだろ?』


加奈はそこで目を開ける。前にみた夢の光景だった。見渡すと、そこにはやはりというかなんというか。銀色に輝く狼がいた。


「また夢を見てるんだな、私」


加奈は銀色の狼を見ながら呟く。最初に戻ったみたいだった。異世界に飛ばされる前、犬先生に出会う前。犬耳尻尾が突然体に出てくる前、森で先生と特訓をする前。


そして、誰かに攻撃される前。


「私、死んだのかな」


呟いた言葉はその場にひどく響いた。


『力が欲しいと思うだろう?』


銀色狼は言った。


加奈に力があれば死なずにすんだのだろうか、特訓で天狼の力を使いこなせていれば、無様に殺られずにすんだのだろうか。犬先生にも、まだ会えたのだろうか。


『契約をしたのを忘れたか?』


銀色狼はまた笑った。


契約?


『ふっ、まぁいい。俺の手で力を解放させてやろう』


そう言って銀色の狼は突然霧のように消えた。加奈は訳がわからなくなった。気が付くと目の前の景色は見知った森になっていた。


「……あれ?」


加奈は辺りを見回す。森だ。初めて来た異世界の森。犬先生と毎日特訓をしていた森。さっきまで誰かと戦っていた(というか一方的にやられてた)森だった。


加奈は口元を拭う。手に血がついた。と同時に体全体が銀色に光っているのにその時初めて気付く。


「……!」


何なんだこれはと加奈が戸惑いを隠せずにいると、先程誰かにぼこぼこにやられた痛みが段々と体の至る所に戻ってきて、たまらず膝をついた。近くにあった木に加奈は凭れかかる。


「あの人はどこ行ったんだろ……」


辺りを見渡すが誰もいない。人の気配もしない。静かだった。銀色に光る自分の体を見る。光ると言うより銀色の膜が体を覆っているみたいだ。加奈の体全体を。


「……先生」


犬先生に早く帰ってきて欲しかった。何がなんだか分からない。状況が全く掴めない。でも、先生ならきっと分かるはずだから。犬先生ならあの銀色の狼のことも、加奈の体におきているこの変な現象のことも、攻撃してきた奴のことも、きっと先生は知っているはずだから。


「早く帰って来てよ……」




だがその日犬先生は、いくら待っても加奈の所に帰って来る事はなかった。


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