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内なる力の解放

異世界に来てから、早2週間ぐらい。加奈は自分の前世の力、『天狼の力』を少しずつだがコントロールできる様になってきた。犬耳尻尾が外に出る、ぐらいの力だったが。


「次は更に多くの力を内から外に出す訓練だ。今度は自分で天狼の力を外に出して、体全体に行き渡らせられるようにしてもらう。そうすれば身体能力がアップして、早く走れたり体が柔軟になったりと、まぁいろいろできる」


犬先生は最後の方、面倒くさくなったのか適当に言った。


「自分の中にある天狼の力を感じて、それを引き出す」


簡単にいいますけど、それって難しいですよね?先生。と言うと先生は加奈をじっと見つめてこう言った。


「内から外に力を出すだけだ。コントロールするわけじゃないから簡単な方だろう」


先生には簡単でも私には難しいんですよーと思いながら、加奈は先生に質問する。


「具体的にどーすればいいんですか?」

「集中」


当然だろうが、という感じで先生は簡潔に言った。そればっかりですね、先生。加奈はため息をついて、先生は人に物を教えるのがとても下手くそですよね、と口を滑らせた事により犬先生からまたもや体当たりをうけることになった。



先生はいつもの木陰に座る。そこから辺りを見渡していたり、ぼけっとしていたり、時折歩き回ったりしている。加奈はそんな先生から少し離れた所で犬耳尻尾を出し、目を瞑り集中する。犬耳尻尾を出したのは、その方が天狼の力を感じやすいのではないかと思ったからだ。


「・・・・・」


内にある天狼の力、そんなもの今まで生きてきた中で、一度も感じた事など、当たり前だがない。犬耳尻尾が出るのも、先生が加奈の中に眠る天狼の力を少し解放してくれたからだ。加奈自体はまだこれといった力を感じた事などない。


「・・・そういえば、夢で会ったのは銀色の狼だけど、先生は灰色なんだよねー」


異世界に来る直前、夢の中で『生きたいか』などと突然聞いてきた銀色に輝く狼。もうあまり姿も覚えていないが。


違う狼だったのかな?などと考えていたら、全く集中出来ていない事に気付き慌てた。先生にバレたら暴力か、無言の圧力での指導が入ってしまう。



加奈はもう一度集中しようとした。目を瞑り、人間の方の耳には耳せんをしておいた。音が聞こえなくなる。自分の体が活動する音だけが聞こえる。静かだ。


「・・・・・・・」




やっぱり、無理だった。

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