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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣ラグナロク編

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第九十六話 合流

 ラグナロクがアマノザコを追って部屋から出てすぐ、アリスが白ローブとの交戦を再開していた。

 未だ刃の通らぬ状況の中、体力こそ切れないが決定打に欠ける千日手が続いている。


『主様。そろそろ戦い方を変えた方がよろしいなぁ』

『思い出すのだ主。ここの闘技場で学んだ戦い方を。あの時と同じである。後ろにはお館様、そしてここは最終防衛ラインである』

 二人の声を聞いてアリスの前腕にピキピキと音のしそうな筋が立ちはじめる。


「あれ、なんか思ってたのと違う……」

 俺はつい声を漏らしてしまう。

 物言わぬ白ローブの首筋に立てた刃がじわりじわりと食い込んでいく。

 メリメリと音を立てて、食い込んだ刃もあと少しで刃の全てがめり込むという状況になっていく。


「くっ、ぐぅぅぅぁあああああ!!!」

 か、可愛くない……。

 アリスの声と共に、エクスカリバーが振り抜かれる。

 糸の切れた人形のようにその場にドシャッと崩れ落ちる白ローブだが、俺はそれよりもアリスの変貌に目の前が暗くなるような衝撃を受けていた。


「はぁはぁはぁ。き、切りました。切りましたよ私!!」

 断ち切ったというより、へし切ったという感じにしか見えないのだけどそれを指摘したら俺があの白ローブにされてしまいそうだ。

 俺の後ろに隠れていた玉藻がすっと顔だけ出して様子を見る。


「それ、ただの腕力やん!!」

「玉藻! シーっ! それ言っちゃ駄目!!」

「でもオトンあれ見て見ぃ! 切り口が完全につぶれとるやん!!」

 指をさしてキャーキャー言う玉藻だが、次第に息切れもおさまってきたアリスがこちらを見ている。

 玉藻が言ったことより、自身の実績を認めてくれという視線を俺に送ってくる。

 

「お館様よ。いかがか? 主は強くなったであろう?」

「強くなったというか、筋力が増したというか……。うん。強くなったね」

「恥ずかしがらずに素直に認めた方がいいのである」

「どう、でしょうか?」

 アリスが俺に、評価を求めてくる。

 いやいや、評価できねーよ。

 だって押しつぶして切ったんだぜ?


「チョーツヨクナッテタヨ」

「ほんとですか!? やっとこれで私もしっかりとした戦力です!!」

 その実、白ローブを倒せるのだからしっかりと強いのだが、これがマサルとランスロットだったらどうだったのだろうと思ってしまう一面もある。


「あ! そうです! ラグちゃんさんを追いかけないと! きっと一人で戦ってます」

「あぁ、それは多分大丈夫だと思うよ」

「大丈夫、ですか?」

「うん。だってラグちゃん笑ってたもん……」

 俺たちはラグナロクを追いかけるというより、多少談笑しながらギルドの外に出ようと扉に手をかける。

 すると、扉の外から声が聞こえてくる。


「ぎゃっっ! も、も、やめっ。痛い!! ぐぅっ……。 おぅぇえ」

 どう考えてもリンチされてそうな声が扉越しに聞こえてくる。


「アリス。これ、開ける?」

「取り越し苦労でしたね……」

「あ、開けるぞ……」

 重々しい扉を開くと、想像通りの光景が広がっていた。


「ねぇ! 立って! 早く立って!」

 そういってラグちゃんがアマノザコの襟首をつかんで持ち上げている瞬間だった。

 辺りには血の跡がところどころついていて、何があったかは容易に想像することができた。


「ハジメ!」

 ラグナロクがこちらに気づいて笑顔を向けてくる。

 可愛い笑顔が、返り血の化粧のせいでホラーにしか見えない。


「すごいの! 何度致命傷を与えてもすぐ復活するの! どうやって捕まえよう?」

 話ながらも襟首をつかんだまま、ナックルを叩きこみ続けるラグナロク。

 止めた方がいいのかな?


「あぁぁ。暴れちゃ駄目なの!」

 ラグナロクはそのまま襟首をつかんだままアマノザコを地面に叩きつける。


「うぅぅぅぅ。もうヤダ……」

 登場したときは綺麗なお姉さんだったのに、今は見るも無残に……。


「ハジメさーーーーん!」

 街の入り口の方から知っている声が聞こえてくる。

 人にしてはやけに大きな影が、袋のようなものを振り回しながら走ってくるのが見える。


「聞こえないんですかーー? ハジメさーーーん?」

「ノ、ボル?」

「そうです! ノボルですーーー!」

 しかしどう見てもノボルに見えないのだ。

 逆光でシルエットしか見えないそれは明らかに人二人分のサイズがある。

 走って近づいてくるからだんだんとそのシルエットも大きくなる。


「マサル!? マサルじゃねぇか! ノボルはどうした?」

「ぜぇぜぇぜぇ。ちょ、ちょっと、待って、くれ。息、が、間に合、わない」

 マサルが肩で息をしている。


「こっちですこっち!」

 マサルの背中の盛り上がった黒い布から声がしてくる。

 黒い布から腕がにゅっと生えてくると、ぺろっと布をめくった。

 中からノボルが顔をのぞかせる。


「間に合ったみたいでよかったです! あ、お土産もあります。兄ちゃん麻袋渡して!」

「それよりノボル、背中からそろそろ降りてくれ……。兄ちゃんちょっと限界」

「あああ、ごめんごめん」

 そういってノボルはマサルの背中から降りると、俺のお辞儀をした。


「お土産?」

「はい! 多分こっちにも来てると思うんですけど、アメノサグメってやつです。お姉ちゃんがって言ってたから多分こっちに、女性な見た目の男性来てません?」

「よくわかるな。来てる。いや、来てた? 原型はとどめてないかもしれないけど」

 俺はラグナロクの方を指さした。


「ハジメさん? あれは……」

「アマノザコだった物体ですね」

「あれがラグナロクさんですかぁ。そりゃ兄ちゃんがやられるわけだ……」

「ん?」

「あー、こっちの話です! それでお土産はこれです!」

 そういってノボルは麻袋の口を開いた。

 俺もそれにつられて中をのぞく。


「なに見てんだよてめー」

 やたらと目つきの悪い美形な青年が上半身と下半身で分かれて詰められている。


「ノボルごめん。ちょっと吐き気が……」

「あー、ハジメさんには刺激強かったですよね。でも大丈夫ですよ。一応抵抗できないようにしておきましたから」

「いや、そういう問題じゃなくてだな」

 ノボルは袋をさかさまにして中身を出している。


「いてっ! やめろ! もうちょっと優しく!」

「兄ちゃん。だいぶ性格変わったよね。戦ってた時は性格とか違った気がしたんだけどな」

「ノボル。多分こっちがこいつの素なんだろうよ」

 ごろごろと袋から出てきたアメノサグメはこちらを殺してやるという視線を向けてくる。

 その奥でリンチされているアマノザコを見たアメノサグメは一層声を張り上げる。


「お姉ちゃん!! くっそ! 動けぇ!!」

 動けないはずの体を必死に動かそうとしている。


「あれ、これやばいかも……」

 ノボルが少し焦りを見せ始める。

 アメノサグメの時間停止していたはずの体が次第に繋がり始める。


「兄ちゃん! ヤバイ! 復活しかかってる! もう一度さっきのやるよ!」

「ノボル、無理だ。兄ちゃん全身筋肉痛で今動けない……」

「そ、そんなぁ」

「玉藻! ギーネ呼んで来い! 今すぐ!」

 俺は玉藻に指示を出す。


「わ、分かったわ! おばん呼んでくるんやな!」

 玉藻は走り出すが、それより先にアメノサグメの体はつながってしまった。

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