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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣ラグナロク編

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第九十一話 ニブル帰還

 ラグナロクと食事をして、他愛のない会話をした後宿に泊まった。

 特に何かがあるということは無かったが、今までにないおだやかな時間が流れていた。

 翌朝広場に行くと、意外や意外。

 俺とラグナロクが一番遅かったのだ。

 ランスロットはまだ拗ねているようだったし、玉藻は変わらず眠そうだが大人モードに姿を変えていた。

 エクスカリバーはと言うと……。

 カムランの朝で見たように、やつれていた。

 ギネヴィアの回復能力で常時回復になっているはずなのに、そんなにやつれてどうしたというのかというほどだった。

 俺はエクスカリバーに近づいて確認してみる。


「エク君……? 何があった?」

「ふっ。お館様よ。お楽しみであったのだよ……」

「それはまさか……」

「ちがいますよぉ。アーサー様の夜通しの訓練ですえ」

「訓練!?」

 訓練ってのは、どういう……。

 俺の頭は混乱を極める。


「お館様。もしかすると誤解しているのかもしれぬが、ギーネは鞘ではあるものの、ただの非戦闘員ではないのだ。軍師として考えればその采配は右に出るものがおらず、育成という意味では、人権無視の指導で戦闘力を高めることに秀でているのだ」

「するってーと?」

「カムランでの朝も、今日の朝も、訓練明けの朝である……」

「よ、夜通しか」

「夜通しである。訓練中私の人権は虫以下になる。これが私のトラウマの一つであるのだが……」

 エクスカリバーにそんな裏話があるとは。

 俺はてっきりギネヴィアの異常な執着がトラウマだと思っていたが、それだけじゃないのか。


「アーサー様はお強いですえ。せやけど、もっと周りを見て動かはったらもっと活躍できると思て指導させていだいております」

 指導ねぇ。

 するとエクスカリバーが今度は俺に耳打ちしてくる。


「ギーネの言葉を鵜呑みはしないでほしいのである。実施には指導ではなく拷問なのである。しくじると鞭が飛んでくるのである」

 あぁそれであの時の鞭の痕か。

 妙な納得感を感じつつ、俺はエクスカリバーの肩をポンポンと叩いた。


「あれ? オカン、イメチェンでもしたん?」

 離れたところから玉藻の声が聞こえる。

 話している相手はラグナロクのようだ。


「ん? どうして?」

「だってオカン、それ」

 玉藻がラグナロクの手を指さしている。


「本当ですね。ラグちゃんさんのネイルは黒だったと思いましたが」

 ラグナロクのネイルが白になっていることに対しての会話だった。


「ん~。家族の証?」

「なんやねんそれ。オカンもオトンみたなボケをかますようになってもうたんかいな」

「ちょっと待て玉藻、今俺がなんだって?」

 俺が声をかけるが、玉藻の背中側から声をかけているので玉藻は気づいていないどころか、そのまま会話を続ける。


「そりゃぁあの寒いボケばっかかますオトンに決まっとるやん、って、オトンの声?」

 若干の冷や汗をかきながら、目を細めて玉藻が振り返る。


「どうも。寒いボケばっかかますオトンです」

「わ、わぁ、おとーちゃんだぁ!玉藻おとーちゃんだいすきー」

「大人の姿でおとーちゃんとか言うな!」

 俺は玉藻の額をペシッっと叩く。


「それや!それやでオトン!そうことあるごとに私のデコをペシペシ叩きよって!嫁に行かれへん見た目になったらどうしてくれるちゅーねん!」

「嫁にはやらん」

「……くっ。そういう話ちゃーーーう!!」

「ふふふ。あはははは」

 ラグナロクが大声で笑っている。

 その姿を見て、アリスと玉藻が呆気に取られている。

 いままでここまで大きく感情を表に出して笑うなんてなかったからな。


「ハジメ、家族、だね?」

「お、おう?」

 ラグナロクは嬉しそうにクスクス笑っている。


「ハジメ様!私!私も家族です!!」

 アリスもそこに混ざってくる。


「そうだね。アリスも、玉藻も、ハジメも、大事な家族だね」

 ラグナロクは穏やかな顔をしていた。

 昨日の会話がそのままラグナロクの普段に反映したかのようだ。


「オカン、なんか昨日とだいぶ違うで。調子くるわぁ」

 そういって玉藻は頭をポリポリとかきながら、一人転移に向かってしまった。


「あぁぁ、玉藻ちゃん私もついていきますから!」

 アリスがそのあとを追っていく。

 ちゃんとお姉さんになっているようだ。


「みんな。俺たちもニブルに帰るぞ!」

 それぞれが軽く返事をして俺たちはニブルへ転移したのだった。

 俺たちが転移すると、当然ながらその場所はニブルのギルドだ。

 奥からルードが血相変えて走ってくる。


「ハジメくん!帰ってきたか!帰ってきて早々だけれど、すぐにヴァルに行ってくれ!」

「なんだなんだ!?」

「ヴァルが奇襲されてる!」

「はぁ!?」

「説明の時間は無いんだ!今すぐ行ってくれ!」

 あれ、ルードって俺のことハジメくんなんて呼んだっけ?

 俺たちは押し込まれるように、別のゲートから転移させられてしまった。

 冒険者ギルドのルードが一人残っている。


「悪いねぇハジメくん」

 ルードの顔はにこやかに笑っている。

 部屋に戻るルードが椅子に座ると、その前には一人の男性が縛られて、ルードを見つめて怒りの唸り声をあげている。


「うるさいうるさい。ちょっと黙っててよ」

 ルードはその男を横殴りにする。

 うめき声とともに、男は静かになってしまった。

 

 ーーーードロドロ


 ルードの顔が次第に崩れていく。

 その顔は、ルードの顔とは全く違う青年の顔となった。

 

「アンタから顔借りておいていうのもなんだけどさぁ。もうちょっとまともな顔に変身したかったよほんと。こんなオッサンの顔なんてさぁ。僕の可愛い印象が台無しじゃない」

 横たわる男に近寄る。

 横たわる男こそ、本物のルードだった。


「お姉ちゃん。ちゃーんとサグメは仕事したよ。あとはよろしくね~」

 そういって窓から外を見ている。


 一方転移させられたハジメたち。


「なんかおかしい」

「ハジメ様どうされたのですか?」

「ルードが俺をハジメくんと呼んでたんだ」

「それがどうされました?」

「気のせいかもしれないけど、ルードは俺を呼び捨てか小僧と呼ぶことはあってもあの呼び方が引っかかる」

 俺の疑念は深まるばかりだ。


「ハジメ。俺ら戻っていいか?」

 マサルが声を出す。


「どうした?」

「理由はわからねぇ。でも、戻った方がいい気がするんだ。ノボルが心配でな」

 普段ならここでブラコンがとでもいうのだろうけど、俺の疑念もあったことから俺はそれを了承した。


「悪い。戻ってもらって様子見てくれ。なにも無ければ俺たちを追いかけてもらうってことでな」

「任せとけ。ランちゃん、憂さ晴らしに暴れさせてやれるかもしれねーぞ」

 そういってマサルとランスロットはゲートを逆走してニブルに戻って行った。

 俺たちは、ひとまずヴァルの状況を確かめに行かなければ。

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