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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣エクスカリバー編

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第八十二話 ギーネの袖

 翌朝俺たちは集合してユグドラへ向かって出発することとなった。

 昨夜ロキから知らされてしまった聖剣の条件だけど、本人に伝えてはいけないってのがこれまた難しいな。

 図らずもエクスカリバーの真名まで知ってしまったけど、それは不幸な事故ってことで処理しよう。

 俺の知ってる異世界ものみたいに、真名が知られると悪用されるってことも無さそうだし、ハンドルネームで話してたのに実名出しちゃいましたみたいなもんなんだろう。

 集合するとラグナロクが不貞腐れた態度で俺に近寄ってきた。

 奥を見ると、疲れきったランスロットと目の下にクマができたマサルが見えた。


「ラグちゃん今日は、ご機嫌ナナメ?」

 俺が問いかけると、ラグナロクはなおも不機嫌そうに俺の背中、定位置に落ち着いた。

 昨夜結局ラグナロクは部屋に戻ってこずだった。


「教えて貰えなかった」

「な、何を?」

 様子を伺う限り、何となく察しはつくが聞いてみる。


「神様の倒し方と、聖剣のなり方教えてって言ったのに、倒し方は気合いだって。聖剣のなり方は教えられないって」

 前半はマサルで後半はランスロットだろうな。

 事情を知ってしまった今だと、ランスロットの回答も納得できてしまう。


「ごめんねハジメ。ラグ強くなるのにもっと時間が必要みたい」

 それで拗ねてるのね。

 まぁ俺のためというのは悪い気がしないし、薬膳食らわせてピンピンしてるあの二人に意趣返しできたと考えれば、満足感すらある。


「お前んとこの魔剣、どんな教育してんだよ!」

「なんだよ藪から棒に」

 マサルがズカズカと俺に近寄ってくる。

 剣の姿に戻り損ねたランスロットがマサルに手を捕まれそのまま引きずられている。


「一晩中俺らに挑みかかってくるわ、前と違ってなんかやけに強くなってて、ランちゃんじゃもうギリギリの戦いになっちゃうし、そもそも魔剣なのになんで飛んでくんのがナックルなんだ!!」

 そう言われましても……。

 それにお前がボコボコにされた時だってナックルだったじゃん。

 俺は肩口のラグナロクの頭を撫でつつ、マサルの相手をする。


「まぁ悪かったって。ラグちゃんもいろいろ得るものもあったみたいだし、ありがとうさん!」

 俺はマサルの肩をポンと叩く。


「全然心がこもってねぇ!」

「短気は損気だぜマサル。大人になれって。ラグちゃんなんて存在そのものが、もうほとんど災害みたいなも……ぐぅっ」

 俺が言いかけたところでラグナロクが俺の首を締め付けてくる。


「ギャハハハ!飼い主の方がやられてんじゃねーか!ほら見ろ、俺たちにあんなんするからバチがあたんだよ!」

「ラグちゃんごめん。言いすぎた……」

 ふっとラグナロクの腕の力が抜けるが、久しぶりに首を絞められたせいで意識が飛かけるのも一瞬だった気がする。

 危ない魔剣だ。


「お、おはようございます……」

 アリスが最後だった。

 しかしどうにもアリスの表情は昨日の林檎のような赤い顔から戻っていない。

 何があった?

 隣には妙に顔をツヤツヤさせたエクスカリバーもいる。


「お館様よ。昨夜の提案実に満足度の高いものであった」

 エクスカリバーがそういうとアリスが目をカッと開いて俺を見る。

「昨日のあれはハジメ様の差し金だったのですね?」

「えっ、ちょっと待って!!何?何?俺状況分かってないんだけど!?」

 俺は全く心当たりがないのだが?


「何を言う。お館様が私に提案したのであろう?主の部屋の前で一晩警備せよと」

 俺そんなこと言ったか?

 昨日エクスカリバーになんか聞かれて適当に返事した気がしないでもないけど。


「ほら!やっぱりハジメ様が犯人じゃないですか!」

「犯人ってなんだよ!エクスカリバーが部屋の前で警備してたってだけだろ!?」

「とんでもない!私だって朝になって城の者たちが妙に私を白い目で見てて、問い詰めてさっき知ったんですから!!」

「だ、だから何を知ったのよ」

 アリスは俺の胸をグーで叩いている。


「ご褒美なんですって……」

「は?」

「だから、ご褒美なんですって……」

「いやいや、わからんて」

 俺が困っているとエクスカリバーが割り込んでくる。


「何がダメだったのであるか?主。ちゃんとお館様の許可も取ってのことである。いつ主が部屋から出てもいいように定期的に部屋の前で椅子の姿勢をとったり、侵入者に備え定期的に剣を抜き左右を牽制していた程度ではないか」

「アホ。エク君それだ。誰がそれをしろと言ったんだ……」

「それだけじゃないんですよ……。朝になって恐る恐る近づいた城の人間に何をしているのかと尋ねられて……」

「尋ねられて……?」

「うむ!今ご褒美をいただいているところであると正直に伝えたな!」

 アホンダラ……。

 それ、ただの変態だよ。

 いや、もともとか……。


「可哀想にアリス。不幸な事故だったな」

「他人事みたいに!?」

 アリスまで不貞腐れてしまい、うちの女性陣は玉藻以外不機嫌になってしまった。

 ラグナロクについて行ったはずの玉藻も様子見といたるわ!とか言ってた癖に、速攻で飽きて居眠りしていたらしく、朝ラグナロクが首根っこを掴んで引きずってきていた。

 さらに今もまだ寝ぼけた顔をしてふわふわしている。


「皆さんお集まりですね!」

 ノボルの声がする。

 トールと二人で見送りに来てくれていた。


「ノボルきゅん!!」

 今の今まで寝ぼけていた玉藻がノボルの声を聞いて飛び起き、どこから出したか分からない手鏡で髪を直している。

 パパ複雑……。


「ハジメさん。兄ちゃんのことよろしくお願いします。ご存知こんなんなので……」

「ノボル!兄ちゃん悲しいぞ!こんなんってなんだーーー!!」

 マサルがノボルに走り寄るのをエクスカリバーが止める。


「お主が入ると話がややこしくなるのである」

「エク君、それエク君が言っちゃダメなやつだからな?」

「ランちゃんがアレを持ったまま兄ちゃんから離れなければ、兄ちゃんに何しても即死じゃなければ死なないんで上手いこと使ってやってください」

 そう言ってノボルはぺこりと頭を下げた。

 そういえば気になってたんだ。

 ランスロットの服は整った服の上に子供用鎧だけど、インナー?なのか右腕だけ袖が女物みたいなデザインをしている。


「気になってたんだけどアレってなんなんだ?」

 俺はノボルに聞いてみる。


「聖遺物ですよランちゃんの」

「聖遺物?」

「詳しくは知らないんですけどね」

 ノボルもよく分からないという顔をしていた。


「むむ?それは……」

 エクスカリバーがランスロットに近づき右腕の袖に触れる。


「ランスロットよ。お前これはギーネ」

「ささ、触るなー!」

 怒っているではない。

 何かバレると不味いものがバレたという表情のランスロットだった。

 何隠してんだ?

 まぁ人外たちは放っておいて、俺は挨拶だけすませよう。

 俺はトールとノボルに改めて挨拶をする。

 いろいろ旅の無事を祈られたが、トールから、戻ったらアリスと挙式と言われ少し体がビクッとなった。


 俺たちは騒がしいまま城を出てギルド経由でユグドラを目指す。


 それにしても、さっきのランスロットの慌てようはなんだったんだ?


 ――――ギーネの?


 ――――袖?


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