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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣エクスカリバー編

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第七十八話 悪いことはお天道様が見てる

 無警戒にマサルがサラダを口に運んだ。


 ――――バリバリバリ


 およそ、サラダからはしないであろう音を立ててマサルが咀嚼していく。

 い、痛くないのか?


「ハジメ!これすげーな!!地球じゃ絶対食えない食感だぜ」

「う、嘘だろ!?」

 俺は自身の目に映るものを信じることができなかった。

 マサルは、まるで刃物ようなサラダをものともせず食べ薦めているのだ。

 隣のアリスは驚きで声を失ったまま、自身のフォークを落としそうになっている。


「兄ちゃん大丈夫?」

「大丈夫って何が?これスゲーうめーぞ!なんて言うか、そうだな超硬いポテトチップスみたいな食感でよ。あとなんでか知らないけど、口の中がぬるぬるするんだよな」

 それ出血!

 そのぬるぬるしてるのは、口のなか切られまくって出てる出血!!!


「アリス。これは誤算だ。このままだと、マサルだけ無事で俺らは死屍累々になるぞ」

「私一瞬、薬膳が美味しくなったのかと思いました……」

 俺たちが少し会話すると、目もくらむような笑顔で俺たちにマサルが話かけてくる。


「どうした?食べないのか?ハジメがこんないいとこ教えてくれるなんて嬉しいぜ。ってあれ?」

 そういってマサルが口を拭う。


「あ、口ん中嚙んじゃったみたいだわ。血が出てきた」

 ほら見たことか!

 だからそのサラダは凶器なんだって。


「おお!なんだか美味そうなのであるな!」

 エクスカリバーも状況を理解していないために、こちらが言ってほしくないことを言い出す。

 やばいやばいやばい。

 どうする?

 逃げるか?

 いや、ここで打つ俺からの一手はこれだ。

 俺はアリスに一つ視線を送り、お互いに小さくうなずいた。


「エク君も食べてみろよ」

 俺は仲間を生贄に捧げた。

 

「良いのか?お館様や主を差し置いて私が先で。まぁ勧めてくれているのである。いただこう」


 ――――シャキンシャキン


 なんだこの剣戟みたいな音は。

 あ、こいつ元が剣だからとか?


「実に変わった味だ。どこか親近感のある味である」

 そりゃ刃物同士だもんね。


「じゃあ俺も」

 そういってランスロットも口にし始めた。

 ランスロットからも剣戟のような咀嚼音がする。

 しかしランスロットもエクスカリバーと同じく、刃物をものともしない食べっぷりを見せる。


「……わるくない。いや、結構すきだな俺」

 ちょっと気に入り始めてんじゃねーよ!!

 俺はヒソヒソとノボルに声をかける。


「悪いことは言わない。少しだけ食べて後は手を付けちゃだめだ」

 アリスもノボルに向かって、声は出さずに大きく首を縦に振っている。

 ノボルは少し考えて、辺りを見回す。

 ある程度状況を察したノボルは、気まずそうな顔をして、フォークで小さめの一枚だけサラダを刺した。

 俺もアリスもそれと同じく小さめをフォークに刺す。

 三人が意を決して口に運ぶ。


 ――――バリ


 やっぱり変わってなかった。

 むしろ、いろんな意味で切れ味を増している。

 ノボルは涙目になりながら、口の中を切らないように慎重に咀嚼する。

 俺もアリスも一緒だ。


「美味いなーこれ!はまるかもしれんわ」

「お館様はおしゃれないい店を知っているのだな」

「あんた、少しだけ見直したよ」

 お前ら人外チームは黙ってろ。

 てかマサルもそっち側に入ってんのかよ。

 その時には、人外チームはサラダを平らげて、次の料理はまだかと心を躍らせていた。


「おまたせしましたー!」

 そういってウェイターが運び始める。

 始まるぞ……。


「ひっ……!」

 ノボルが小さく悲鳴を上げる。

 目の前に、俺からすれば懐かしさすら感じる、カエルが半分だけ姿を残したスープ。

 そしてドラゴンの頭の丸焼き。

 メニューまであの時と同じか。


「味は食べられないことはないんです。むしろ美味しい可能性もあるのですが、見た目とのギャップがすごいんですよね」

 アリスが俺とノボルに過去の体験談を言う。


「くぁああ!スゲー出汁だ!なぁハジメ!これって、おかわりできたりするのか??」

「兄ちゃん、もう人間じゃなくなっちゃってるみたいだよ……」

 マサルは一瞬にしてスープを摂取しつくし、ドラゴンの頭の丸焼きに手をつけていた。

 エクスカリバーとランスロットもそろそろスープが終わるころである。


「ハジメ様。ノボルさん。これはもう逃げるという選択肢は断たれました。死なばもろともです!!」

 アリスはそういって先陣を切った。


「うっぷ……。前よりひどくなってるかもしれないです……」

 アリスは目に涙を溜めて食べ進めている。

 涙が美しいとかじゃない。

 その涙はもう恐怖の象徴なのよ。


「俺たちも、行くしかない」

「わかりました。もとはと言えばこちらが発端。いきます!」

 多分ノボルのいきますは、逝きますだろうなと思ってしまう。

 俺たちも地獄への扉を開けたのだった。

 人外チームは満足そうな顔で完食し、俺たちは瀕死の重傷を負ったかのような顔で命からがら完食した。

 店を出て、マサルはいたくここの味を気に入ったようだった。


「なぁ!またここ来ようぜ!最高だったわ」

「それも悪くないであるな!むむ?お館様はなぜそんな青い顔をしているのである?」

「そういやノボルまで。具合悪くなっちゃったのか?」

 こちらとしても嫌がらせでしたとは口が裂けても言えない。

 しかもその結果、仕掛けた側が返り討ちにあいましたなんて言えるわけない。

 よく考えると、ノボルだけが完全な被害者だ。

 マサルに連れてこられた挙句にゾンビ定食食わされてるんだしな。

 その後俺たちはニブル王城に戻ることにしたが、人外チームはずっと次の来店日の相談をしていて、まるでオフ会日をでも決めているかのようだった。


「悪いことは、するもんじゃねぇな」

「見事に返り討ち。ですね……」

 俺とアリスは後悔を全身に抱えており、足取りはすこぶる重かった。

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