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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣エクスカリバー編

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第七十話 つまらないものですが

 空気がもう懐かしさを感じさせてくる。

 ヴァルとは違った平和な空気、国民の雰囲気。

 どこかしらで殴り合いでもしてるのか?というほどの喧騒もない。


「すげー久しぶりに感じるわ」

「そうですね。何年もここを離れていたように感じます」

 アリスも同じように感じているみたいだ。

 

「ここがお館様と我が主の拠点であるか。感慨深いのである」

 何が感慨深いだ。

 お前仲間になってから数日だろ。


「それでは魔王様がお待ちですのでこちらへ」

 マサルが公務モードになって俺達を連れて行く。

 やはり魔族と人間が戦争中というのはその通りなようで、行き交う人たちの厳しい視線がマサルたちに浴びせられている。

 少し不安そうな顔をマサルがしていて、こいつもそういう感情があるのかと思った。


「勇者様も、こういう視線にさらされるとやっぱきついか?」

 俺は気遣い半分、社交辞令半分でマサルに声をかける。


「俺?いや、全然?」

 あっけらかんとした顔でそう答えるマサルの顔は、本当に何も気にしていないという表情だ。


「あれ、今さっきなんか暗くなかった?沈んでんなら、テンション上げてこーぜイェーイとか言ってやろうと思ったんだけど」

「お前、そんなパーティーピーポーだったか?」

 じゃあさっきの顔は何だったんだ?


「ノボルが……。こんな空気だろ?ノボルがいじめられてたりしないか不安でよー……」

 あー例のランちゃんより可愛いとご自慢の弟君ですか。

 このブラコンめ。


「俺、聞いてなかったと思うんだけど、その自慢の弟君も魔族なんだろ?今回は一緒じゃねーの?」

「んぁ?何いってんだ?これから向かう先にいるじゃねーか」

「……先?」

「魔王だよ。俺の可愛いノボルは今代の魔王様だ」

「なんですと!?」

 するってーと俺達は今マサルの弟君とおしゃべりキメようぜって歩いてるわけ!?

 冗談きついよ。

 

「そういうことは先に言えよ」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「言ってねーよ!!!」

 ということは、マサルが日本人確定となると、魔王も日本人ってことか?

 いや、転生した先で弟になったとか考えたら、単純異世界人ってこともあるか。

 なんにせよ俺の頭を混乱させるには十分な情報量だ。


「ハジメ。後でギルドにいこ!久しぶりにエルマに会いたい!」

 マジか。

 ラグナロクが自分から俺に近寄ってくる女に会いたいだなんて。

 成長したなぁ……いや?何企んでる?


「ラグちゃん珍しいな。エルマさんに会いたいの?」

「うん。これ見せて煽りに行きたい」

 そう言ってラグナロクは自身の頭の髪飾りを指差す。

 うわぁ……。

 性格悪りぃ……。


「ハジメ様!あれ見てください!!」

 アリスが血相変えて俺に話しかけてくる。

 その顔はおばけでも見たような顔をしている。


「なんだなんだ?おばけでもいましたかーって、おおお!」

 俺の目に映ったのは、できれば見たくなかった文字。


 ――――「怪我も回復!薬膳フルコース!はじめました!」


「始めないでくれ」

「きっとあの店の二号店ですよこれ」

 アリスは怯えている。

 ここでもゾンビ定食が製造されているのか……。


「マサル!」

「どうした?」

「あとで美味い飯屋連れてくわ」

「ハジメ様!?」

「お、おお。じゃあ楽しみにしておくわ」

 ふっ。

 せいぜい苦しめばいいさ。

 俺の顔は今、きっと悪魔のそれだ。


「お館様。おしゃべりはそのへんで。どうやら着くようだぞ?」

 俺達は目の前の大きな城門を見上げた。

 

「ここでラグちゃんポキーッだもんなぁ」

「まだ引っ張るのかよ!そろそろ頼むぜ……」

「ラグはまだ根に持ってるからね」

 俺の後ろからラグナロクがジトッとマサルを見る。


「やめてくれ、その目で見られるとヴァルの決勝を思い出す……」

『俺も思い出したくない』

 マサルと剣のランちゃんが身震いしている。

 ラグナロクのトラウマパネェな。

 俺達は城門をくぐり、近衛兵に案内されて、応接室に入る。


「おー久しぶりだなハジメ君!!!」

 流石に今日は公式な場だからだろう。

 しっかりとした服装のこの国の王であるトールが出迎えてくれた。

 部屋の中にはもう一人いるようだ。

 トールも、もう一人もそれぞれ護衛をつけた状態で会話が進んでいたらしい。

 もう一人がすっと立ち上がる。

 このもう一人が魔王なんだろうよ。


「オトン。気ぃつけや。血ぃ見るかもしれん」

 おや。

 玉藻がこれを言ってくるってことは結構好戦的な敵なのか?


「あの勇者が言うとった可愛い弟や。下手すると鼻血でるで……」

 え、そっち?

 そうだよね。

 玉藻ちゃんランちゃんにデレデレだったもんね。

 どうやら、マサル基準での可愛いは玉藻にとっては小動物可愛いと同じ感じらしく、あの食事でランちゃんが大泣きしていた後から玉藻はランちゃんにデレデレだった。

 すると俺の前に歩み出て俺の目をまっすぐ見る。

 確かに、中性的な顔立ちと華奢な体に、少し幼そうな顔。

 マサルの言うこともあながち間違いではなさそうだ。

 だが、男だ。

 警戒を怠ってはいけないな。

 ひとまず俺から、何が目的だとでも聞いてみるか。


「この度は、家の兄が本当に……」

「娘はやらん」

 俺は魔王の言葉を遮って発言する。


「オトン!なにいうてんねん!!!」

「あ、すまん。本音と建前が裏返ってまった」

「キモい訛り方すんなや!」

 玉藻がキーキーいう。

 魔王はポカンとした顔で見ている。

 俺は一つ咳払いをして、魔王にいう。


「すまん。もう一度頼む」

 きっと、俺達への報復についての宣戦布告とかだ。

 しかし、娘はやらん。

 エク君なら、まぁ最悪くれてやろうかな。

 頭にハテナをたくさん浮かべる魔王は悩みながら、声を出す。


「この度は、私の兄が、大変失礼をいたしました。付きましては、つまらぬものですがこちらをお納めください」

 そう言って魔王は、日本でならよく見る謝罪の定番菓子折りを俺に突き出している。

 俺は言われたことを全く理解できてなかった。

 完全に宣戦布告とかそういうシリアスなものが飛び出てくると思ってたからだ。


「あ、ごめんちょっと何言ってるかわからない……」

 今度は俺の頭に大量のハテナが浮かんでしまった。

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