第六十六話 エクスカリバーの迎え
玉藻が店を出て行ってしまい、俺は後を追おうとした。
するとへパさんに首根っこを掴まれる。
「なぁにやってんだよこの鈍感!」
「なになになに、なによ!?」
「ここでそのまま追っかけてどうすんのよ!?断れてもプレゼントの一つでも買っていくのが男の甲斐性ってもんでしょうが!」
俺は女心の何たるかを、なぜか異世界の神様からレクチャーされた。
「そういうもんなの?」
「当然でしょうが。アンタ、乙女心舐めてると痛い目に遭うからね」
なんか強い意志を感じるぞ……。
「へパさんも前になんかあったの?」
これは爆弾だった。
「あぁッ!?」
何とドスの聞いた声か。
「女性の過去を詮索する男なんて最低だかんね!!」
明かに地雷を踏み抜いてしまったようだ。
「し、失礼しやしたぁ……。じゃ、じゃあ、玉藻とラグちゃんと、アリスに似合いそうなやつ見てみたいなぁ、なんて」
「それでいい」
そういってぷりぷりと怒ったへパさんは俺の前にいくつかアクセサリーを出してくれた。
その中でも見ただけでピンときたものを俺は選ぶことにした。
――――牡丹の花があしらわれた簪。
これは玉藻に。
――――菫の髪飾り。
これはラグナロクに。
――――翡翠のイヤリング。
これはアリスに。
「あら、アンタ割とわかってるじゃない」
俺は何を褒められたのだ?
「こういうの選ぶの初めてなんだ」
「いいのよ。ちゃんと気持ちさえ入ってればなんだって」
そういうもんかね?
へパさんはそれぞれを可愛い紙袋に入れてくれた。
俺は代金を支払いうとへパさんに茶化される。
「早く孫の顔がみたいでちゅ~。ケタケタケタ」
「うるさいわ!!」
俺はニブルでへパさんの店を出たときと同じように、ドアを勢いよく閉めた。
そう。
ニブルでへパさんの店を出たときと同じように……。
「お館様よ!ここにおられたか!」
店の外にはなぜかエクスカリバーだけがいた。
いつのまにうちの可愛い娘がこんな変態に……。
「お館様、何か失礼なことを考えておらぬか?」
「い、いいや?」
俺は気づかれないように三人へのプレゼントを懐にしまうと、エクスカリバーの要件を聞いた。
「ヴァルの入り口に、魔族が詰めかけているのである!勇者を名乗るものが先頭にいるようだ。ご婦人たちとドリトン夫妻は対応に当たられている。お館様もお早く!」
なんでこうもう、この都市は面倒事ばかり振ってくるんだ。
どっかの生産地で面倒事が豊作なのか?
「わかった。とにかく向かおう」
俺とエクスカリバーは走ってヴァルの入り口を目指した。
しかし。
「ぜぇぜぇ。お館様よ、先に行ってくれ」
「なんで聖剣が疲れてんだよ……」
「お館様は先ほどまでの私が受けていたご婦人からのいじめ、いやご指導を知らぬからである」
「な、なにがあった」
「思い出したくもないのである。あれはそう。獅子が我が子を突き落とす谷が、ピクニックに感じるものであった……」
うわぁ。
聞きたくねぇ……。
「それでお館様な、私はご婦人に」
「いや、思い出したくもないんじゃねーのかよ!話すのかよ!」
「まぁあれはあれで悪くない経験であったのである、デュフフ」
やべーよ。
ラグちゃんこいつのスイッチ押しちゃってるよ。
てか思い出したくないのか、悪くないのかどっちだよ。
「てかお前が、剣になって、俺がそれ持って走ればいいんじゃねーか?」
「ん~、男に持たれるのは、私としては……ん~しかしわが主も向かわれた先、身の安全を考えるとぉぉぉぉ」
なぜそこまで悩む。
「仕方あるまい。此度のみ、お館様にも私を使う栄誉を受け取ってもらいたい」
そういってエクスカリバーは剣の姿になった。
「お前さ、お館様~って言ってる俺にその態度は、めっちゃ不敬だからね?」
『男は細かいことを気にしないものである、さあお館様、張り切って参られよ!』
くっ。
駄目だ。
今すぐ叩き折りてぇ。
でも今は、それどころでは……。
「お前!覚えとけよ!」
なんで俺が悪党の捨て台詞を吐かんといけないのだ。
俺はエクスカリバーを握りしめ、ヴァルの入り口にひた走った。
到着すると、総勢百名はいそうな魔族の軍勢と、それに対峙するラグナロク、アリス、玉藻、ドリトンがいた。
あれ?ルナさんは?
俺がキョロキョロすると、ラグナロクとアリスが到着した俺に気づいた。
しかし、衝撃を受けたような顔をしている。
「ハジメ様!そんな汚いものすぐポイしてください!!」
「おおおお!わが主!つかの間の別れからの再会でここまで気持ちの良い罵り、さすがにたまらぬ!!!」
うわ、やっぱキモっ。
俺はエクスカリバーを放り投げると、エクスカリバーは人型に戻った。
「ハジメ、ばっちいの触っちゃだめだよ」
そういってハンカチで俺の手を必死に拭くラグナロク。
「ご婦人もまた、なんと破壊力のある!!」
お前ラグナロクもいける口になっちゃったの!?
俺の手をラグナロクが拭くと、そのハンカチをつまんだ。
「これはもう使用不能」
そういってハンカチを炎魔法で燃やした。
「ご婦人!また高度な責めを!このエクスカリバー、もう腰が砕けそうだ」
だぁめだこいつ。
早く何とかしないと……。
「アリス、ルナさんは大丈夫なのか?」
「それですが、今魔族と会話しているのがルナ様です……」
何ですと?




