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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
素敵な生卵編

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第四十一話 お前はここにいるべきではない

 控室に戻ると、アリスは治療を受けていた。

 ルール上治療は禁止。

 治療ができるのは、決勝直前まで進んだ場合のみ。

 つまり、アリスは棄権となってしまった。

 折れた腕ではさすがに戦うことができない。

 切り傷などの直接作用できるものについてはポーションという手もあるが、今回のような外からのアプローチが効かないものについては回復魔法一択になってしまう。

 脂汗を流しながら治療を受けるアリスはどこか申し訳なさそうに、俺にペコリと頭を下げた。


「アリス。よく頑張った」

「ありがとうございます。でも、先には進めませんでした。実質一回戦敗退です」

「それでも頑張った。でも、ハジメに卵を持ってくるのはラグ」

 そういってちょっと煽るような言い方をするラグナロクだが、これも優しさの一つなのかもしれない。


「ハジメ様、申し訳ございません」

「何言ってるんだ。怪我しないようにって言ったのに、ここまでボロボロになるまで頑張ったんだ。結果なんて気にするな」

「いえ。結果がすべてです。あの程度の変態、一撃で沈められなければハジメ様の隣に立つには不足なんです」

 あれ?俺ちょっと感動しそうなこと言ったよね?

 あまり響かなかった感じなの?


「骨折なので回復魔法を併用しても、この大会の決勝が終わるころまでは自由が利かないのが口惜しいです」

 地球出身の俺からすれば、数日で治る骨折ってのは異常なんだけどな。


「きっとあの時もラグちゃんさんが貸してくださったこれが無ければ、私は腕を落とされていたかもしれません」

 そういって右手で俺たちの目の前に差し出されたものを見るとやはりそれはメリケンサックだった。

 なんという美女に似合わない鈍い銀色か。


「ヒビが入ってる?」

 ラグナロクがすぐに気付いた。


「はい。あの変態の鎧は見た目通りの硬さで、身体強化で無理やり突き刺しましたが、その代償にお借りしたこれが壊れてしまいました」

「いい。武器なんてその都度用意すればいい」

 剣のお前が言うんかい。


「そういやアリス。なんか最後の方あのイケメン騎士となんか話してなかったか?」

「イケメン騎士!?違いますハジメ様!あれは変態そのものです!!!」

 おう。

 急に声が大きくなったな。


「変態??なんだよなんかセクハラでもされたのか?」

「セクハラと言いますか、いや、あれはセクハラですね。私の右手が刺さったあと、その……」

「その?」

「気持ちいいいと……。次会ったら躾けてほしいと……。最後は私を主様と呼んできました」

「ひっ……」

 つい、変な声が出てしまう。


「気持ちわりぃなおい。アリスがイヤイヤしてたのはそれだったのか」

「それは。すごく気持ち悪い」

「ラグちゃん。ラグちゃんだけはそれ言っちゃ駄目」

 ラグナロクは、なぜ?という顔をこちらに向けているがわざわざ説明してなるものか。


「アリス、いいか?」

「……はい?」

「今後その変態には二度と近づくな。いいな?」

「そ、それはもうプロポーズと受け取っても!?!?」

「ちっがーーーう!!!変な誤解をするな!」

「……チッ」

 今舌打ちしたよ。

 お前一応王女だよ?

 それはまずいんじゃないの?


「ラグちゃん。俺は一応このままアリスについてようと思う。残りの試合見てやれないけどいいか?」

「かまわない。アリスについててあげて」

 おや、意外に聞き分けがいいな。

 だが、そのあとのラグナロクは初戦よりひどかった。

 多分だけど、俺から離れるのが嫌だったんだろう。

 次の試合もその次の試合も開始と同時に特攻して、相手に名乗らせる暇すら与えず瞬殺。

 行ってくると出て行ったかと思えば数分で控室に戻ってくるのだ。

 対戦相手よ。

 ほんと無念だろうに。


「ラグちゃん早くない?というか早すぎない?」

「そんなことない。普通」

 普通ねぇ。信じねーぞ俺は。

 そのままパパっと相手を片付けてBブロックの覇者になって帰ってくるラグナロクだったが、ほとんど無双状態であるがために、アリスについているというより、アリスについている間にちょっとトイレ行ってきましたぐらいしか離れていないのが何とも言えない気持ちになった。

 まぁこれで残すは決勝だけってことではあるのだが、ラグちゃんほんと卵ゲットに関しては心強さしかないね。

 ただ、面倒なのが、勝って帰ってくるたびに頭を俺に向けて撫でててとアピールしてくるのがちょっと面倒臭いが、剣モードで暴れまわることに比べれば可愛いものよ。

 その間にも俺は治療してくれてる職員や、そのほかの負けた参加者の付き添いと会話して情報収集も怠らなかった。


「本当に、あっさりでしたね」

「だな。聞くところによると、アリスみたいな治療じゃなくてベッドに横にならないといけない人は医務室に行くらしいけど、ラグちゃん無双で対戦相手は一人残らずベッドの住人にされたらしい」

「そ、それは……」

「あと、一人うるさいのがいるって聞いたな」

「うるさい人ですか?」

「なんか、これは躾けを味わっている最中だから治療するなと治療拒否してベッドを占拠しているやつがいるらしい」

「それ!そいつです!きっとそれが私の対戦相手だった変態です!!」

「やっぱりそうだよな。ぜったい近づかないようにしよう」

「うん。アリスが危ない。変態には近づいちゃ駄目」

「だからラグちゃんだけはそれ言っちゃ駄目」

 俺たちはいつもの空気に戻った感覚で闘技場を後にした。

 なんやかんやと一日朝以外なにも口にしていなかった俺たちは食事でもしようと都市の中心に出ることにした。


「ほんとここは栄えてますね」

「だなぁ。ただ、どこを見てもなんとなく血の気の多そうなやつしかいないような気がするのがここらしい気がするけどな」

「ハジメ」

「どうした?」

「他の道がいい」

「どうして?」

 ラグナロクは俺たちの目の前を指さす。

 そこにいるのは目深なフードに体をすっぽり覆うローブ。

 あの不審者だ。

 まっすぐこちらに近づいてくる。

 だが、不審者の目線は明らかにラグナロクに向いている。

 そのまま声がギリギリ届くところまで近づいてくると何かを言っている。


「お前は、ここにいる事象ではない。回収。楔を排除。本体に実行を申請」

 そういうと周囲から音の一切が消え、吐息が白くなるほどの寒さを感じた。

 そして次に瞬きしたときには、すでに姿を消していた。


「ラグちゃん、知り合いなのか?」

「知らない。でも。嫌い」

 ラグナロクがここまで嫌がるなんて、どうも気になる。

 このことは忘れてはいけないと俺の直観が告げている気がした。


「は、ハジメ様!」

 アリスが空気を変えようと話しかけてくる。


「せっかくです。ギルドに行ってどこかおいしいお店や宿泊先を聞いてみましょう!」

「そ、そうだな。ほらラグちゃんもそれでいいだろ?」

「……うん」

 変なことが起きなければいいんだけど、この何とも言えない嫌な感じは、どうも拭えそうになかった。


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