第三十話 ラグちゃんは言うことを聞かない
ーー神界ーー
「姉上!!、ら、らら、ラグナロク様が呼んでいます!!」
「何ですってぇ!?あの娘、折れたんじゃなかったの!?」
「姉上が不貞腐れてる間に何かあったんですよきっと!それより、姉上が呼び出されているんです!すぐにでもご対応を!!」
「いやよ!あの娘、ちょっと怖いんだもの……」
「そんなこと言ってないで、いいですから、早く!!」
「……あーもう、仕方ないわね!!!」
ーーハジメ達の動向に戻るーーー
『……はい。ロキです』
うぁわ、スゲー機嫌悪そう……。
「ロキ姉さま聞こえますか?」
『……。聞こえないわ』
「聞こえているじゃありませんか。いいですか?今日は私のハジメのことについてお聞かせいただきたいのです」
ラグナロクって普通に話せるのね。
『だから、聞こえないって言ってるじゃない』
それは聞こえちゃってるのよ。
「ロキ姉さまのことはどうでもいいのです。ロキ姉さま。あの時私のハジメを見捨てましたね?」
『見捨ててなんかいないわ!あんただって知ってるでしょ。神界からリアルタイムで干渉するなんてルール違反なのよ』
「そんなこと関係ありません。そのせいで私のハジメが傷ついたこと。どう落とし前つけてくれるんですか?」
『落とし前って……。アタシ悪くないもん。そもそもあんたが折れずに戦ってればよかったじゃない』
ピキっという音がする。
またラグナロクが!?と思ったが、実際はラグナロクの額に浮かぶありありとした怒りの青筋の音のようだ。
てか音がするほどってどんなんよ。
「ハジメ、ごめんね。ちょっと怖いかもしれないけど、ラグのこと嫌いにならないでね」
そう言うと、ラグナロクは両手を俺の頭の左右に添える。
「おいラグちゃん何する気、う、うぁ気持ち悪ぃいい!」
ラグナロクの両手がみるみる俺の頭に入っていくのだ。
痛くは無いのだが、なんとも言えない気持ち悪さが体中を駆け巡る。
『やっ、ちょっ、ちょっとあんた腕だけ神界に来るとか何!?キモっ!!!てかアタシの服掴まないで!その右手の握りこぶしもしまって!!!!』
『ラグナロク様!お怒りをお鎮めください!姉上の胸倉を掴んで何をなさるおつもりですか!?!?」
えっ、ラグちゃんそんなことできるの!?
てか胸倉掴むってどういう状況よ!?
『きゃぁぁああ!ラグナロク!やめて!もう許して!!』
『ああああ、そんなに姉上を振り回さないでください!!』
「ロキ姉さま。誰が悪いのか仰ってください」
『私は悪くなんか、悪くなんか……。私が悪かったです。ごめんなさい……」
「最初からそう言えばいいんです」
するとラグナロクは俺の頭からパッと両手を引き抜くと、両腕を俺の背中に回して正面から抱きしめる状態になった。
俺の身体には気持ち悪さだけが残った。
でもよく考えたら人の頭に腕突っ込んで、神界の女神の胸倉掴むって、ホラーすぎるだろ。
「ハジメ、痛くなかった?大丈夫?ごめんね。でももうちょっと待っててね」
「う、うん……」
としか言えねーよ畜生。
「ロキ姉さまのせいで、ハジメが苦しい思いをしてしまいました。謝ってください」
『それはアンタのせいでしょ』
「まだわからないのですか?」
『私が悪かったです。ごめんなさい』
「誰に対して言っているのですか?もちろん私にではないですよね?」
『くっ……。あんた覚えてなさいよ。ハジメ。悪かったわ』
「まぁいいでしょう。それでですロキ姉さま」
そこはラグナロクが判断するのね。
『何よ』
「ハジメに悪いことをしたと思っているなら、仕事してください」
『はぁ!?なんでアタシがそんなことしなきゃいけないのよ』
あれ、この話どこ向かってんの?
「ロキ姉さまがしたくないとか、そういうことは関係ないのです」
『アンタほんと人の言うこと聞かないわね。だからあの戦争の時だって扱いきれなくておもちゃ箱に放り込んだってのに、どうしてこうもハジメには懐くんだか』
『姉上、それはおそらく+99の運と豪運とカリスマのせいだと思います……』
『ったく、ほんとたまったもんじゃないわ。で、アタシに何しろってのよ?』
あーそういうこと。
俺のチートな設定がラグナロクがこんなに懐いた原因なのね。
「ロキ姉さま。ハジメは私の王子様です。そんなパラメーターで私の王子様を語らないでください」
『あーはいはい。もういいわ。なんか疲れた。で、さっきも聞いたけどアタシに何させたいのよ』
「ハジメは生卵を欲しがっています」
『はっ?生卵??』
いや、俺もはっ!?だよ。
「そうです。ハジメは元居た世界で食べていた生卵を欲しがっています。妻として手に入れる義務があります。最速で手に入れられる方法を調べてください」
『アンタそんなのアタシにだってわかるわけ、いや、そういえばアンタらが魔族をミンチにしたとこからさらに魔族領のヨトンに近づいたところにヴァルって街があるんだけど』
「そのヴァルに生卵があるんですね?」
『話は最後まで聞きなさいよ……。そのヴァルで武闘大会があるのね』
「誰が戦いたいって言ったのですか?」
あー、ラグちゃん話進まないのよ。
『だから!最後まで話聞きなさいって!!!』
「ラグちゃん、ちょっと話最後まで聞いてみよ、な?」
「ハジメが言うならそうするぅ」
『うわ、キモっ。ラグナロクが懐いてるとか正気の沙汰じゃないわね。で、そのヴァルで開かれる武闘大会の優勝賞品が生卵だった気がするわ』
は?優勝賞品??
「ちょっとまてロキ、優勝賞品が生卵なわけねーだろ。食料品だぞ?」
『ハジメわかってないわね。そっちの世界では生卵なんて貴重中の貴重品。貴族の上流階級がやっと手に入るかどうかのしろものよ。金額にしたら家が建つぐらいなんだから』
マジかよ。
異世界産生卵、舐めてたわ。
「じゃあロキ姉さま、そこで優勝すれば私はハジメに生卵を貢げるということですね?」
はいそこ貢ぐとかいう言い方しない。
『簡単に言えばそういうことね。ただ、アンタが急かすから、簡単にしか調べられてないわ。生卵があるということしかわからなかったから、その辺勘違いするんじゃないわよ?』
「それは構いません。手に入らなければまたロキ姉さまに聞きますので、それじゃ」
そういうとラグナロクは俺から額を離し、トロンとした目で俺を見ている。
「ハジメと、密着」
とろけてるところ悪いんだが、未だに俺の頭の中でロキが悪態ついて騒いでるんだが……。
まぁいいか。
さすがにもう疲れた。
「ロキ悪いが俺はもう寝る。なんかあったら次はラグちゃんに話してもらうからその辺よろしく。じゃあな」
今回は俺からガチャ切りしてやった。
ざまぁみろ。
そう思って俺は眠りに落ちていった。




