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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
魔剣ラグナロク編

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第二十六話 さよならラグナロク

 一瞬のことだった。

 まさに閃光とでも言えばいいんだろうか。

 俺の鼻先をかすめて剣が空を切った。

 なぜだろう。

 手からラグナロクからの熱が伝わってくる気がする。

 俺はラグナロクに引っ張られていたおかげでギリギリ剣を避けることができた。


「んな、なんだぁ!?」

 目の前には白銀の鎧に、角が生えた明らかな日本人顔がこちらに恨みのこもった視線を向けている。


「俺は魔王軍所属の勇者だ。お前が俺の弟をイジメてる悪いやつだな??」

 魔王軍所属の勇者ってなんだよその冗談……。


「あんた誰だよ!弟とか言われても誰かも知らないし、そもそもあんた誰なんだって??」

「だから!魔王軍所属の勇者だって言ってんだろうが!ったく話聞いてなかったのかよ!」

 いや、そういうこと聞いてるんじゃないんだわ。


 ピシッ……。


 嫌な音がした。

 俺はちらりとラグナロクに目を向ける。

 よく見ると、刀身の根元に小さなヒビ?が入っている気がする。

 すぐにラグナロクにまた引っ張られて俺は走り出すことになった。


「ちょっ!待てこらぁああ!!!」

 完全にチンピラじゃねーか。


「ラグナロク!お前スゲー熱いぞ!それにこれどこ向かってんだ!?」

 俺には闇雲に走っているようにしか感じなかったが、ラグナロクが向かっていたのはアリスの元だった。

 先ほど冒険者ギルドで別れたアリスはそのまま王城に戻っているはずだと考えたラグナロクは、明らかな危険人物を引き連れ魔王城へ俺を引っ張っていた。

 そのさなかにも先ほどの勇者は俺に向かって光の玉を放ち続け、その都度ラグナロクが俺を誘導して撃退という攻防を繰り返していた。

 次第にラグナロクのヒビ?が明らかな亀裂になってくる。


「やばいって!このままじゃおまえ折れちまうぞ!!!」

 あんなに折るの折られるのをやっていたはずなのに、こんなタイミングで心配することになるだなんてな。

 逃げる俺をなおも追跡する勇者から命からがらというか感じで王城の門まで走ると、そこにはアリスの後ろ姿が見えた。


「アリス!!!!!」

 俺の叫び声に、振り返ったアリスの目つきが一瞬で変わるのが見えた。


「ハジメ様っ!!!」

 アリスが俺を呼ぶ声が聞こえた時にはすでにアリスは俺を通り過ぎ勇者に切りかかっていた。


「貴様!ハジメ様に何をしたぁあ!?」

 アリスは完全に戦闘モード入り、勇者と激しい剣戟を繰り返している。


「んだよ!お前、女に守られて恥ずかしくねーのかよ」

 勇者は俺を煽ってくるが、俺としては抵抗しようにもそれだけの力が無いのだ。

 これほど無力を感じることは無いという状況ではあるが俺は驚くほど冷静だった。


「ラグナロク……」


 ガリ……。

「「これで大丈夫。アリス強い。ハジメ死なない」」


 これは涙腺も緩みそうな状況だ。


『アンタ。このままじゃこの娘折れるわよ』

「ロキ!?」

『アタシ言ったわよね。聖属性攻撃を刀身で受けたら折れるって』

「あの光の玉、聖属性だったのか。なぁロキ。どうしたらいい?」

『どうにもならないわね。魔剣はそもそも多少の破損は自己治癒できるから鍛冶屋でどうのってのは必要ないけど、折れたら元の子もないわ。折れたところから魔素が抜け出ちゃう。魔素が抜けきればただの鉄くずよ』

「じゃあ、もうダメージ与えないようにして、逃げ切ればいいってことか?」

『それができるならね』

 その間にもみるみるラグナロクの亀裂は広がっていく。


「ぐっ。ぐぁぁっ」

 アリスのくぐもった声が聞こえ、剣戟が止んだ。

 俺はふと見上げると、勇者はゆっくりと俺に近づき俺の首に剣を突き立てようとしている。


『はぁ。まぁ今回のおもちゃはこんなもんか。さすがに勇者が出てきたんじゃ運も強靭もどうにもならないわね。楽しかったわハジメ』

 そういって、ロキの声は聞こえなくなった。

 あっ。俺また死ぬやつだこれ。


「まぁ悪く思うな。そもそもお前が俺の弟にちょっかいかけるからいけないんだぜ?もらったちょっかいのおつりだと思ってくれや」

 そういって勇者は剣を振り下ろした。


「ぐっ……」

 なぜだろう。

 俺の手は必死に勇者の両手を掴み、剣を肩で受けて血は出てるが骨で刃が止まっている。

 なぜここまで動けたんだろう。

 その間にラグナロクがカタカタを震えている。

 怯えているというより、怒りで震えているように感じた。

 いや、そうだったらいいなという俺の願望かな。


「いぃぃってぇぇぇえええ!!!てめぇ、これは笑えねーぞ」

「なんだこいつ、抵抗すんじゃねーよ、うっとうしいな」

 もしかしたら、あんなに気持ち悪かったラグナロクが折れるのを俺は嫌ったのかもしれない。


「いいから離れろよ!!!」

「ぐふっ……」

 俺は腹を蹴られ引きはがされた。


「もう許さねぇからな。これでも喰らえやぁあ!」

 そういって光る刀身が俺に再度振り下ろされた。

 キィィィインッ

 金属が折れる音がする。

 ラグナロクが庇った?

 違う。

 敵の刀身が別のものに当たった?

 違う。


「あ、ラグナロク、マジごめん。ほんとに折れてもうた……」

 俺はヒビが入ってたラグナロクで敵の斬撃を受けていたのだった。

 何が「もしかしたら、あんなに気持ち悪かったラグナロクが折れるのを俺は嫌ったのかもしれない」だ。

 しっかり折っとるやないかい。

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