第二十五話 兄の逆襲
「ハジメ様。そろそろ袋もいっぱいになりますよ」
あれから二日、つまり初日併せて三日で砂鉄は集まり切ってしまった。
これなら指定より、早く戻れるな。
「おお。やっぱり磁石使ったら楽勝だったな」
「楽勝なんて何言ってるんですか!ハジメ様むち打ちがきついからってほとんど私一人で集めたんですよ!?」
だって仕方ないじゃん。
ラグナロクのぐるぐるマジできつかったんだから。
「そのおかげでほら、もう調子もいいからさ」
「ならいいですけど……」
それにしてもアリスの脳筋ぶりはすごいな。
本当に一人で達成してしまった。
「じゃあ、そろそろゲートでニブルに帰るか」
「そうですね。磁石デートが終わるのは悲しいですが、また別のクエストに連れてってくくだされば構いません」
「ま、まぁそれは追々で」
二人と一振りはそうしてニブルに戻るのであった。
ニブルに戻り、冒険者ギルドで無事に納品を終えたのだが、ギルド内部が少し騒がしかった。
「なぁルード。なんか今日うるさくないか?」
「あぁ。お前らが砂鉄掘りに行ってる間に、うちに所属してる冒険者の一人が魔物の卵を手に入れたみたいでな。それもどうやらこの国の露店で売ってるみたいでよ。いま流行り始めてるんだわ」
「魔物の卵?」
「おうよ。魔力を注ぐと魔物が孵るっていうやつでな。対して珍しいものでもないんだが、本来はダンジョンとかで見つけるはずのものが露店で販売されるようになったからよ」
「そういうことか。俺はいまのメンツで手一杯だから変なの増えても困るしパスだな」
「剣に愛される男は言うことがちがうねぇ」
「ちゃかすなよな」
そういって俺たちはギルドを後にしたのだが、卵卵と言われると、どうしても日本食の主力、卵かけご飯が食べたくなってしまう。
「アリスさ、この国って生で食べられる卵って売ってる?」
「生食用ですか?あるにはありますが、貴族でも上流しか手の届かない高級品でめったに市場には出ないですよ?」
「マジか。まぁ日本の生卵って世界的に見ればレアだったからなぁ」
「何とか取り寄せましょうか?」
「いや、いいや。いつか手に入ったらの楽しみにしておくよ」
そういって、いつになることやらと思う俺は、アリスと解散しヘパさんのところへ向かった。
「ちゃーんと達成してきたぞ」
「あんたなかなかやるねぇ。それに聞いたよ。魔族とやり合ったんだって?」
「へパさん嘘つくんだもんなぁ。なぁにが問題無いだよ。思いっきり血を見る羽目になったっての」
「そんなこと起きないはずなんだけどねぇ。それかあいつらがよっぽど興味を惹かれるようなものをアンタが持っていたか……。まぁこれは無いね。アンタ見るからに貧乏っぽいし」
けたけた笑いながらさらっと酷いこと言うな。
てかロキとつながってるなら実は知ってんじゃねーのか?
「それはそうとアンタ、首のそれどうしたんだい?まるで縄で締められたみたいな跡がついてるけど」
「これは……。触れないでくれ。思い出すと吐き気が……」
「なんだい。だらしないねぇ」
「うるせぇよ」
「なら気分転換に、その娘と散歩でも行って来たらどうだい?」
「俺らは今帰ってきたのだが?」
「固いこと言うんじゃないよ。この手紙を門番ところの転送装置に投げ込んできてくれればそれでいいから」
「パシリかよ」
「そうともいうわね」
人使いの荒い。
「そのまま俺帰るからな?」
「いいよ。またなんかあったらその娘連れてきな。安くしとくよ」
「しばらくこねーよ!!」
俺は勢いよくドアを閉めて店を後にした。
門番門番、あーこれか。
「すいません。これ出したいんですけど」
「あーはいはい。手紙ですねこちらで受け取ります。神界行きなので到着は明後日ですね」
神界?あいつロキへの手紙だったのか。
てかこの世界、神界まで割とちけーなおい。
「じゃぁお願いします」
「はい。かしこまりました。ヘパイストスさんによろしくお伝えください」
「あれ、差出人書いてないのにわかるんですか?」
「この国で神界に手紙を出すのはヘパイストスさんだけなので」
専用便かよ。
「あーそういうことですか。わかりました、暇見て伝えておきます」
「お願いします」
ここまで平和だった。
本当に平和だった。
だが突然街中が慌ただしくなる。
町中で何だこの音はとざわついている。
確かにどこからともなく、風をきるというか、ジェットエンジンみたいな音がしている。
首元のラグナロクが必死に文字を書いている。
「「ハジメ。危ない。離れて」」
「危ないってお前、何が」
次の瞬間だった。
ラグナロクがいきなり俺の前に割って入って何かを弾き飛ばした。
その何かは開いている門のはるかその先から飛んできたものだったようだ。
鈍い音をさせながらラグナロクが弾いたそれは光の玉のようなものだった。
すかさずラグナロクが文字を書く。
「「一度、剣に戻る。ハジメ。ラグを使って」」
するとラグナロクの腕が引っ込み見た目が普通の剣に戻ったのである。
吸いつくように手になじむその感じは長年使い込んだという感じがするほどだった。
まるで体が操られるかのようにラグナロクに引っ張られて移動を開始するハジメ。
「おっ、ちょっ。おま、どこいくんだよ!?」
そこに一人の魔族が現れる。
「お前だなぁ??俺の弟イジメるやつは」




