第二十三話 ひき肉でミートパテ
「えっとぉどちら様でらっしゃいましょうかぁ??」
どっからどう見ても魔族なのだが、へパさん曰く大丈夫なはず、だよな?
「兄ちゃんらの使ってるそれ、貸してくんねーか?」
「これですか?」
「そうそれだ、それ」
「いやこれはちょっとぉ」
持ってかれたら困るのだ。
幾ら効率がいいからって初日で集まり切るものでもないのに、ここで磁石を失ったらお先真っ暗だ。
「あんだよ。いいからよこせよ」
魔族が無理やり奪おうとしてくる。
ちなみに魔族の特徴として角が生えている以外は人間とほぼ同じ外見であるが、総じてチンピラ感が強い。
俺の手から磁石を奪おうとするその手をアリスがガッと掴んだ。
「ここは争いごとが起きる場ではないだろう。お互いの為ださっさと去れ!」
えっ、アリスさん超かっこいいんだけど。
てか口調まで男前になっちゃって。
ちなみに魔族とは常に血で血を洗うような戦争をしているので、小競り合いから命のやり取りというのは珍しいものではないらしい。
「いいからよこせって言ってんだよ姉ちゃん。おたくら二人でこの人数相手にどうこうできないのはわかってんだろ?」
耐性があるから耐えられるけど、高々磁石でこんなことになるとは恐ろしい世界だ。
「話し合いに応じないというのならこちらも手を出すぞ」
そういうとアリスは腰の剣を抜く。
「抜いたな?いいんだぜこっちは遊んでやってもよ」
「なめるなよ。こっちも引くわけにいかない理由がある」
えっそんなのあるの?
俺聞かされてないよ?
「面白い姉ちゃんだ。じゃあしっかり遊んでやるよ。姉ちゃんと遊んだら次はそっちの兄ちゃんだな。見たところちょっと見た目は気持ち悪いが高そうな剣も背負ってるみたいだ、ん?おいお前ら見ろこれ!!この腕!これ魔剣だぞ!」
あーバレちゃったよ。
てか、魔族もラグナロクは気持ち悪いのね。
「魔剣がいるなら話は別だ。まず兄ちゃんから殺すしかねーな!!!!」
そういって魔族が俺に切りかかってくる瞬間。
「ハジメ様!」
アリスの声は聞こえるが間に合わないそう思った。のだが。
カシュッ。
ラグナロクが自らの鞘を抜き捨てた。
「えっ!えっ!ちょっと待ってラグナロク!これそういう感じになるの???」
説明しよう。
想像していただきたい。
ラグナロクが腕を俺の首に回したまま、俺の首を軸にしてコマのように超高速回転しているのだ。
こっちは四方八方から来る横Gに涙と鼻水が溢れるなか、ラグナロクの遠心力でグングン魔族に突っ込んでいくのだ。
「ちょっと待って!あ、血が付いた!うぁああ!口に入った!!お、おぅぇぇええ」
吐き気がくる。
そりゃそうだ。超強力なぐるぐるバットの中心にいるのだから。
瞬く間に魔族は切り刻まれ、残り数人というところまで減ると、魔族は怯えて撤収していった。
その姿は必死の逃走劇に見えた。
一通りの戦闘が済むと、俺は精神的なものではなく物理的な衝撃で嘔吐を繰り返していた。
俺の背中をさすってくれるアリスだが、完全に何が起こったのか?という表情である。
少なくとも絡んできた魔族の大半はラグナロクという名のフードプロセッサーにかけられ見事ミンチに姿を変えている。
『きゃははははは!やっぱアンタ最高よハジメ』
クソ幼女、この状況見てやがんなちくしょう。
言い返したいのは山々なんだけど。
「うおおえええ」
嘔吐が止まらない。
ちなみに最後の敵を切った直後ラグナロクは俺の首からすっぽ抜けて遠くの砂地に突き刺さっていた。
『アンタ最高!!この調子でもっともっと苦しんでちょうだい!あははは。ほんとお腹痛い。じゃね』
ほんとあのクソ幼女……。
ふとラグナロクの方を見ると、忘れていたがラグナロクの移動方法はGそのもの。
カサカサと俺に近づいてくる。
「ちょ、めっちゃ気持ちわ、うおおえええ」
ラグナロクのカサカサのせいでさらに吐き気がました。
落ち着くまでかなりの時間がかかってしまったが、また俺の背中に納まったラグナロクは、なんだか上機嫌である。
「「ハジメの。敵。切れた!ラグ、偉い?」」
あー超サイコパスだよこいつ。
「そうだな……」
言い返す力もねーよ。
てか一人称ラグなのね。
「ハジメ様、一旦今日は野営地に戻って休みましょう」
「そうだな。メンタルというよりラグナロクにやられたフィジカルダメージがキツイ。もう夕飯もいらん。俺は寝る」
そういって俺はテントに戻るとすぐに寝てしまった。
翌朝には回復していたが、強度なむち打ち症状が残ってしまった。
なんだよあのクソ迷惑な攻撃。
あと気になったのは途中ロキが話しかけてきたこと。
あいつ俺のことどのあたりから見ていたんだ?
知ってたなら多少は教えろよ。
「ハジメ様。朝食の準備が整いました、召し上がれそうですか?」
なんかもうアリスのとんでも性格とかあるのに、今はこの普通のやさしさが女神に見える。
「食べる。アリスたんマジ女神……」
「えっ、女神!?!?そんな、ハジメ様ったらもう!」
そういって俺はアリスにバシっと叩かれ、背中からの黒いオーラをまた感じていた。




