第二十一話 我の秘策ここにあり
俺はアリスのもとへ急いだ。
ドアをノックするとなんだか不機嫌そうな声が返ってくる。
「どーぞー」
「邪魔するぞアリス」
「ハジメ様!」
一気に顔が明るくなるがまた少し不機嫌になってしまう。
「またハジメ様は私を置いてへパイスト様のところに行きましたね。やっぱり私のような女はお嫌いなのですねぇぇえ」
顔を横にブンブン振りながら唸っている。
「悪かったって。そこでアリスに助けてほしいことがあるんだわ」
「私にですか!?そんな!もっと早く言ってくださればすぐにでもハジメ様のベッドにお伺いを」
「あー違うそういうのじゃない」
「あれ、違うのですか?ハジメ様は御遣い様ですからやはり無欲なのでしょうか」
「それも違う。てか俺を変な人格にするな」
「では何の用でしょう?」
アリスは頭の上にはてなマークを浮かばせている。
この国の王族、ほんと大丈夫かよ。
「実はなこれをお願いしたいんだけどさ」
そういって俺は例の四角柱を取り出す。
「ハジメ様。いくら何でもこれで殴られるとかそういう痛みを伴うのはちょっと……」
「待て、帰ってこいアリス。どうしてお前はすぐそっちに行くんだ。とにかくこの四角柱の加工を手伝ってほしいんだ」
「加工ですか?それならヘパイストスとかがよいのでは?これ金属ですよね?」
「そう金属。それも鉄鉱石から作られる鉄だな。しかもこれはアリスにしか頼めない。アリス、雷魔法使えるたよな?」
「はい使えますが、ちょっと待ってください。もう一度お願いできますか?」
「ん?だから雷魔法を」
「そこじゃないです。私にしか頼めないの部分です」
「あー、これはアリスにしか頼めない」
努めて棒読みで言ってやった。
「きゃぁぁあああああああ!もうさすがハジメ様!私の扱いを心得ていらっしゃる!!」
なんかめんどくせーなこの王女。
「まぁ落ち着け。これにな、最上級に強い雷撃魔法を落としてほしいんだわ」
「それだけですか?」
「それだけだ」
「それでそれをどうするのです?」
「砂鉄とりに使う」
「その採集には私の同行は?」
「要らないな」
まるでガラスが割れた音がしそうな表情で床にうなだれるアリス。
「また、またそうやって私をないがしろに……。私は都合のいい女ですか」
ハンカチの端を嚙みながら言う王女ってどうなのよ。
「わかりました。でも条件があります」
「条件?」
「その採集、私も連れてってください」
「うえっ!?なんで???」
「寂しいからに決まってます!そりゃラグナロクさんは常にハジメ様にべったりですし、いいかもしれませんが、私はあの後残骸撤去以来ハジメ様に構ってもらってません!これでは私は枯れてしまいます」
枯れるって。
なんか言い方が昭和なんだよな。
あと、ラグナロク。
俺にべったりとか言われて舞い上がるんじゃありません。
だが俺の頭にひらめきが生まれる。
あれ?これってもしかして脳筋系のアリスが来れば作業が捗るんじゃね?
「くっ。仕方ない、アリスも連れて行こう」
努めて苦しい判断をしたかのように見せかけて、俺は承諾、いや快諾した。
俺はアリスともう一本四角柱を入手し、城の訓練場に移動することにした。
「ここなら超級までの魔法が使えます。とにかく強力なものをとのことですのでこちらで行いましょう」
「それは助かる。じゃあ早速」
俺は地面に一本の四角柱を突き刺した。
「ここに強力なやつを頼む」
すると静かにアリスが静かに詠唱を始める。
この世界は詠唱魔法系ですか。
「わが愛しきハジメ様の伴侶にして道しるべたるアリス・ニブルが命じる」
おや?
思ている詠唱からはかけ離れてるのだが?
「今ここに力を顕現し、ハジメ様の好感度を高めるための力を与えたまえ。サンダーストライク!!!!」
やっぱり詠唱おかしいよね?
これなんかおかしいよね?
すると空が一瞬にして曇り一筋の稲光が四角柱に落ちる。
もはや豪音と言えるほどの迫力で俺はその場に尻もちをついてしまった。
「いかがです??これで合ってます??」
アリスの顔は百点を取った子供のようだ。
その後も、まるでポエムな詠唱でもう一本にも稲妻を落とした。
さすがに温度も高温なのでそのまま冷めるまで待つ間に俺はアリスに詠唱について聞いてみた。
「アリスさ、さっきの詠唱なんだけど」
「しっかり聞いてくださいました?」
「いや、聞いたんだけどさ。なんか俺の思ってる詠唱とは違うというかなんというか」
「ハジメ様はどんなものを想像されたのですか?」
「何と言うかこう、雷の聖霊よみたいなそういうやつ」
「雷の聖霊???あははハジメ様面白いですね。そんなものに力を借りられるならだれも苦労しませんよ。そもそも詠唱は上級から必要になるのですが、詠唱の理由は術者のテンションがいかに上がるかしか意味がないので」
テンション??
テンションでやってるの???
俺の異世界感が崩れていくのだが。
「テンション上げたらなんで上級以上が打てるんだよ」
「それはですね。実際上級以上だと必要魔力も跳ね上がります。そのため自身に気合いを入れる必要があるのですが、そのための気合いが入る言葉が必要なわけです」
あっちゃー。これ脳みそ筋肉の発想ですよ。
力こそパワー的な。
「その時に、上級なら一節、超級なら二節、帝級なら三節という感じで増えていくんです。初級と中級にはそんなの必要ないので無詠唱ですね」
確かに、俺がアリスから渡された聖属性魔法の本には詠唱なんて書いてなかったわ。
いや?まてよ。ラグナロクが折れるのってそこそこ強力な聖属性攻撃ってクソ幼女が言ってたな。
てことはなにか?上級とか超級とかじゃないと効かないってか?
俺、無駄な努力じゃねーかよ。
なんだがどっと疲れた気がした。
「それはそうと、この二本の四角柱どうするのですか?」
「そろそろ冷えただろうし、試してみるか」
俺はおもむろに二本を引き抜き近づけてみる。




