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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
聖剣ラグナロク編

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第百二話 簡単なお仕事とこのままじゃ駄目

 ビューレイストは淡々と話し始めた。


「ハジメはニブル国王と親しかったな?」

「親しいといいますか何と言いますか、のちの義父と言いますか」

「それなら話も早い。ヴァルに意識を戻したら、ニブルに帰ってニブル国王に教会を作るよう言ってほしい」

「教会ですか? ロキを崇める教会なら一応もうありますけど」

「愚妹のじゃなく俺のだ」

 この人が自分のことを俺というのは初めて聞いた気がする。


「びゅ、びゅーれいすと様、の?」

「言いにくいなら、ビューさんでいい」

 まさかのそれかよ。

 言えねーよ。

 相手、ガチの神様だぞ?

 ロキとは段違いに上位神だぞ?

 そんな飲み屋のおっちゃんに言うみたいないい方したら絶対罰当たるって。


「罰なんか当たらんよ」

 この神様も頭の中覗いてくるタイプか。

 いや、ロキができるんだから兄貴ができないわけないか。


「その通りだ」

「なんか、頭の中と会話されてるみたいで落ち着かないですね」

「そういうものか?」

「はい、だいぶ」

「で、教会はどうにかなるのか?」

「国王に言えば建ててもらえると思いますけど、なんでロキの世界に、ビューさんの教会を?」

 ビューレイストはニヤっと笑う。

 その顔がどことなくロキに似ていて、あぁ兄貴なんだなぁと感じる。


「俺が干渉するためだ」

「他所の神は現界用の身体を使ったとしても、そのうえで制約付きの現界だろう? 教会があればその制約を少しだけ緩めることと、アクセスするまでのタイムラグを消すことができる」

「じゃあ、カーリーがすぐ攻めてこなかったりってのは」

「そういうことだ。どの神であろうと、他所の神の世界においそれと通過できるほどの気軽さでは入れないんだ。幾重にも神力を編み込んだ魔術を重ねて時間をかけてアクセスする」

「なるほど。では、戻ったら教会を建てるように掛け合ってみます」

「よろしく頼む。これは前払いの報酬だ」

 そういってビューレイストは俺に何か金属のようなものを投げてよこした。


「これ、は」

 おいおい、見慣れたやつじゃねぇか。

 ちょっと違うのは、模られてるのがロキではなく目の前のビューレイストであることだ。


「教会が建って俺という存在があの世界に理解されたら使えるようになる。困った時は俺を呼べ。言ってなかったが、俺は愚妹なんて半端なものじゃないぞ? 本気の神の力を見せてやる」

 チートコインゲットしちゃったよ。

 これって、あれか?

 巨神兵! 薙ぎ払え! とか言えちゃうのか?

 さすがにそれはないか。


「あぁそれと、カリスマだけどな。使えていないのはハジメが悪い」

「俺、ですか?」

「そうだ。そもそもカリスマは、この人について行こうと思わせる力だが、逆にその力に応じてついてくるものを強化する力。つまり王としての力だ。今ハジメは、自身が戦えるようになればと思っているかもしれないがそれは違う。適材適所。自身に出来ることを伸ばせ。ハジメにはどのような状況でも冷静に物を見れる頭脳があるだろ? 話はここまでだ。愚妹と愚弟のところに送るからそちらで話すといい。いいか? 自分の役割をもう一度見つめ直せ。ハジメは鉾ではなく頭脳だということをな。ではな。教会頼んだぞ」

「ああ! ちょ、ちょっとまだ聞きたいことが!」

 俺が話しかけているのに、俺の言葉は聞かずに転送してしまうあたり、やっぱりロキの兄貴だ。

 転送された先では、ラグナロクとロキが言い争い、ヘルがあたふたしているところだった。


「いい加減認めなさいよ! エレーナは見事聖剣になれました。パチパチパチ。それでいいじゃない!」

「神様良くない!だって天邪鬼と戦った時に全然戦えなかった!!」

「それは、ハジメがうまく立ち回れてなかったからでしょうが!」

「ハジメを悪く言わないで!!!」

 なんでなんで?

 いきなり俺罵倒されるところから始まるの?


「お、おい」

 俺は声をかけてみるがロキとラグナロクには全く声が届いていない。

 俺の姿に気づいたヘルが俺に寄ってくる。


「すみません。せっかく来ていただいたのに」

「あ、いや、ヘルさんが悪い訳じゃないんで……」

「えっ!? ハジメ様その手のコインは!?」

「あーこれですか? ビューさんがくれたんですよ。困ったら呼べって」

「兄上が!? それにその呼び方は兄上が許可されたのですか」

 ヘルは目を白黒させている。


「は、はい。呼びにくければって」

「驚天動地です。今までその呼び方をして許された人間はいないんです。転生していただく際に、兄上が対面した方もいらっしゃいましたが、様ではなく、さん付けで呼んだ瞬間乱心したように暴れて、地獄に送り返したりしてたので」

 おいおい、俺かなりやばかったんじゃねーか?


「そのうえコインまで」

「チートコインですもんね」

「それだけじゃないんです。これは一定以上に神が認めた相手しか渡してはいけない規約になっているんです。その条件は神の与えた仕事を全うすることなんですが」

「あーだから俺に教会建てろって言ってきたのか」

「教会!? 本当にですか!?」

「え、ええ。これは前払いの報酬だそうです」

「あ、兄上、何をお考えなのですか……? 教会を建てるレベルでの報酬としては破格なのですが……」

 ヘルは頭を抱えて悩んでいる。

 そんなにヤバイもんなのか。

 ヘルが悩みまくっているなか、女性陣の言い争いはヒートアップしていく。


「エレーナあんた、感情戻ってからアタシに対する態度悪くない!?」

「神様だって、もっと早くハジメを助けてよ!!」

「いまその話してないでしょ!! そんなんだから、天邪鬼に手も足も出ないのよ!」

「くっ……。気にしてることを!」

 俺は何を聞かされてるんだ?


「だぁかぁらぁ! いい加減聖剣になりましたってのを認めなさいよ!!」

「嫌だ! 認めない! ハジメを守れてない!」

「だからそれはハジメが悪いんだって!」

「またそういうこと言う!!」

 やめてくれ。

 ハジメさんちょっと、吐き気してきた。

 でも、俺が悪いってのはあながち間違いでもないよな。

 さっきビューレイストに言われたカリスマが使えてないってやつ。

 俺がもっとうまく立ち回れば、ラグナロクやアリスの戦闘力をあげてやれる?

 ……いや待て。

 今、ラグナロクが聖剣になったって言ったか?


「ラグナロク! ロキ! いい加減俺に気づけ!!」

「うっさわね! 気づいてるわよ!」

「ハジメ! 聞いて! 神様が、ラグがもう聖剣になってるって嘘つくの!」

「嘘じゃないわよ!!!」

 そう、それだ。

 俺も気になってたんだ。


「ロキ、なんでラグちゃんがもう聖剣なんだ? 条件満たさなきゃなんだろ?」

「ハジメ!? 条件って、ラグが聖剣になる方法知ってたの!?」

 あ、ヤベ。

 これは失言だ。


「満たしてんのよ。アンタらがユグドラでいちゃこらしてる時にね」

「見てたのか?」

「見てたも何も、アンタの家族ならもういる~みたいな鳥肌もののセリフはちゃんと録画済みよ」

「ふぁっ!?」

「今編集してるところなんだから」

 お前はどこの動画配信者なんだ。

 つか、人の恥ずかしいセリフを録画するな。


「ハジメ? 帰ったらお話があります」

「お、お手柔らかに……」

 し、死んでも後悔はないぞ……。


「神様。その条件って何だったの!? 教えて!」

「まぁ今ならいいか。アンタが、自身の存在理由を自分で見つけることよ」

「存在理由?」

「そうよ。エレーナ。アンタ家族を守るって心に刻んだんでしょ?」

「う、うん」

「それが条件よ。しかもそれは他人から条件を聞いたら一生聖剣にはなれないっていう初見殺しの条件付きでね。だからハジメは言いたくても言えなかったのよ。ハジメに感謝しなさい」

 まさかのロキが俺を庇うとは。

 ラグナロクが俺に向き直る。


「そうだったの? 疑ってごめんね?」

「き、気にするな! 無問題だ」

 しかし、ラグナロクに見えないように後ろからロキが俺に口パクしてくる。


 ーーーーか・し・に・し・て・お・く・わ。


 図々しい悪魔幼女め。

 するとロキが何かに気づく。


「ハジメ。そのポケットの手紙は何?」

 俺も気づかないうちに封筒が俺のポケットに入っていた。


「なんだこれ?」

 手に取ってみるが、俺はすぐに差出人に気づく。

 なぜならさっきもらったコインと同じ模様で蝋の封印がされていたからだ。


「お前の兄貴からだ」

「ビュー兄さまから?」

 ロキは手紙を受け取り、中をみると、不敵な笑みを浮かべた。


「ふふふ。言われるまでもない」

「なんて書いてあったんだ?」

 するとロキは俺に見えるように手紙の文面を見せてくる。


 ーーーー負けは許さん。


 直接言えばいいものを。

 恥ずかしがり屋の兄貴め。


「全面戦争よ。あのおばさんを完膚なきまでに叩きのめしてやるわ!!」

 ロキはノリノリだ。


「っと、ハジメ、その手に持ってるのは?」

「あぁこれか?」

 さっきヘルに見せていたコインをロキにも見せる。


「ビュー兄さまのコイン……。アンタなんの仕事を請け負ったの……?」

「ニブルにビューさんの教会を建てろってさ」

「ニブルに、ビュー兄さまの教会……?……あっ、眩暈が……」

 ロキは白目を剥いて倒れてしまった。


「あああ、姉上!」

 ヘルがあたふたしながらロキに駆け寄る。

 教会ってそんなに大それたことなのか?


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