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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ
第二章 古代防衛機構編

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第七十話 増殖

 暗闇の奥で。


 赤い光が、一つ、また一つと灯っていく。


 ギィ……ギ……と。


 低い駆動音。


 金属同士が擦れる不快な音が、広間へ響き始めた。


 グレンが顔を引きつらせる。


「……冗談だろ」


 壁面奥。


 待機格納庫のような空間に、複数の銀色機体が並んでいた。


 その眼部が、次々に赤く発光していく。


 エルナが青ざめた。


「まだこんな数が……!」


 ユリオンが舌打ちする。


「防衛機構群だ!」


「中継施設単独防衛用の予備兵装だろう!」


「いや、今それ説明してる場合か!?」


 マックスが叫ぶ。


 だが、その叫びすら掻き消すように。


 最初の自律兵器が再び暴れた。


 轟音。


 黒衣の人物が、片膝をつく。


 制御鍵を押し込んだ腕へ、赤い光がさらに侵食していた。


 外套の袖口から覗く皮膚。


 そこへ、血管のような赤い亀裂が走っている。


 人間のものではない。


 そんな異様さがあった。


 カイが低く問う。


「あとどれくらい保ちますか」


「……七秒」


 初めてだった。


 黒衣の人物の声へ、僅かな乱れが混じる。


 その瞬間。


 待機格納庫側の兵器群が、一斉に起動した。


 赤い眼光。


 重低音。


 銀色の巨体が、ゆっくりと歩き出す。


「いやいやいや!」


 マックスが後退る。


「増えすぎだろ!」


 ヴァレリアが剣を構え直した。


「数を止める手段は!」


 ユリオンが即座に答える。


「無い!」


「だから今、同期遮断をやってる!」


「最悪だな!」


 その時だった。


 カイが広間全体へ視線を巡らせる。


 導力回路。


 制御核。


 待機格納庫。


 そして。


 兵器群の起動順。


「……違う」


 カイが小さく呟く。


 ユリオンが反応した。


「何がだ」


「全部が同時起動していない」


 一瞬。


 ユリオンの目つきが変わる。


「……起動優先順位か?」


「恐らく」


 カイは即座に続ける。


「制御核から近い個体ほど反応が早い」


「つまり、完全起動前なら動きは鈍いはずです」


 ユリオンが制御波形を睨みつける。


 そして。


「……あるな」


 口元が歪む。


「起動同期に時間差がある!」


 カイは即座に判断した。


「グレンさん」


「ああ」


「格納庫入口を潰せますか」


 グレンが銀色機体群を見据える。


 狭い。


 通路幅は限られている。


「崩落誘発なら可能だ」


「十分です」


 カイは即答した。


「時間を稼いでください」


「了解!」


 グレンが即座に走る。


 その横を、リリアが追う。


「援護します!」


 魔法陣展開。


 火球が通路奥へ叩き込まれる。


 轟音。


 崩落。


 格納庫入口付近の天井が崩れ落ちた。


 だが。


 それでも銀色機体は止まらない。


 瓦礫を押し退けながら進んでくる。


「硬すぎるだろこいつら!」


 リリアが叫ぶ。


 一方。


 ユリオンは制御盤へ術式を書き込み続けていた。


「あと五秒!」


 イリスが補助波形を展開する。


「同期固定維持中」


「ですが、侵食反応が急速に増大しています」


 視線は、黒衣の人物へ向いていた。


 赤い亀裂。


 すでに首元近くまで達している。


 それでも。


 黒衣の人物は制御鍵を離さない。


 まるで、自分が壊れることなど問題ではないかのように。


 その時だった。


 最前列の銀色機体が、崩落瓦礫を突破する。


 赤い眼光。


 戦闘姿勢。


 マックスが舌打ちした。


「チッ、来るぞ!」


 だが次の瞬間。


 黒衣の人物が、僅かに顔を上げた。


 そして。


 初めて、感情のようなものを滲ませる。


「……そろそろ、タイムリミットです」


 小さな声だった。


ちなみに今朝、

『【完結】【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う』

第二部が完結しました。


こちらは宗教国家編、温泉街、登山鉄道、黒たまご、粉塵爆発などを経て、最後は「魂送りの夜」で締めくくっています。


完結済み長編を読みたい方は、よろしければこちらもどうぞ!

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