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【完結】左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ
第二章 古代防衛機構編

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第六十九話 暴走核

 赤い光が、脈動する。


 ドクン――と。


 まるで生き物の心臓のようだった。


 広間全体へ、不快な振動が広がっていく。


 エルナが顔を青くする。


「……魔力圧が上がってる」


「このままだと危険です!」


 イリスも即座に測定器へ視線を落とした。


「内部反応、急激に増大」


「制御限界を突破します」


 ユリオンが舌打ちする。


「核が暴走寸前だ!」


「破壊は!?」


 ヴァレリアが叫ぶ。


「下手に壊せば連鎖暴走だ!」


 ユリオンが怒鳴り返した。


「施設ごと吹き飛ぶ可能性がある!」


「じゃあどうしろってんだ!」


 マックスが自律兵器を押さえ込みながら叫ぶ。


 その時だった。


 黒衣の人物が、初めてカイへ視線を向けた。


「提案があります」


 淡々とした声。


「対象核の一時停止を実施します」


「その間に、中枢同期を遮断してください」


 ユリオンが即座に反応する。


「待て!」


「そんなことが可能なのか!?」


「成功率は高くありません」


 さらりと言った。


 マックスが顔を引きつらせる。


「今さらっと怖えこと言ったぞ」


 だが、カイは即座に問う。


「遮断まで、どれくらい時間が必要ですか」


 ユリオンが制御核を睨みつけながら答える。


「最低でも十五秒!」


「それ以下じゃ制御波形を切り離せない!」


「了解しました」


 黒衣の人物は、静かに前へ出た。


 そして。


 胸元から、細い金属片のようなものを取り出す。


 短剣にも見える。


 だが、表面には複雑な古代文字が刻まれていた。


 ユリオンが息を呑む。


「……制御鍵?」


 黒衣の人物は答えない。


 そのまま、自律兵器へ向けて歩き出す。


 赤い眼光が反応した。


 次の瞬間。


 自律兵器が黒衣の人物へ腕を振り下ろす。


 轟音。


 だが。


 黒衣の人物は、紙一重で回避した。


 動きが異様に滑らかだった。


 まるで重力が違う。


 ヴァレリアが目を細める。


「……人間の動きじゃないな」


 黒衣の人物は、そのまま懐へ潜り込む。


 そして。


 胸部装甲の亀裂へ、制御鍵を突き立てた。


 瞬間。


 赤い光が激しく明滅する。


 ギィィィィィッ――!!


 耳を裂くような警告音。


 広間全体の導力回路が暴れ始めた。


 ユリオンが叫ぶ。


「今だ!」


「同期を切る!」


 イリスが即座に補助術式を展開する。


 空中へ無数の光線。


「流量偏差固定」


「波形安定化を補助します」


 ユリオンが高速で制御盤へ術式を書き込む。


 額には汗。


 顔色も悪い。


「クソッ、古代術式の癖が強すぎる……!」


 一方。


 黒衣の人物は、自律兵器へ制御鍵を押し込んだまま動かない。


 いや。


 動けない。


 赤い光が、逆流するように黒衣の人物の腕を走っていた。


 外套の内側。


 腕部へ、赤い亀裂のような光が広がっていく。


 カイが気づく。


「……侵食か」


 黒衣の人物は否定しなかった。


「許容範囲内です」


 だが。


 声が僅かに乱れていた。


 次の瞬間。


 自律兵器が暴れた。


 凄まじい衝撃。


 マックスとヴァレリアが同時に吹き飛ばされる。


「ぐぁっ!?」


「ッ……!」


 広間の床へ叩きつけられる二人。


 それでも。


 黒衣の人物は離れない。


 赤い光を浴びながら、制御鍵を押さえ込んでいる。


 ユリオンが叫ぶ。


「あと十秒!」


 長い。


 あまりにも長い。


 その時だった。


 広間外周で、新たな発光反応が走る。


 イリスの顔色が変わった。


「追加起動反応!」


「まだいるのかよ!?」


 グレンが振り向く。


 壁面の奥。


 暗闇の中で。


 赤い光が、一つ、また一つと灯り始めていた。


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