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【完結】左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ
第二章 古代防衛機構編

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第六十八話 赤い眼

 銀色の巨体が、大きく傾ぐ。


 砕けた膝部装甲から、青白い火花が激しく散った。


「効いてる!」


 エルナが声を上げる。


 だが。


 次の瞬間だった。


 自律兵器の赤い眼光が、不規則に点滅を始める。


 ギギ……ギ……と。


 軋むような異音。


 ユリオンの表情が険しくなった。


「……まずい」


「何がだ!」


 マックスが叫ぶ。


「制御競合を起こしている!」


 ユリオンが制御核を睨みつけた。


「施設側制御と、自律戦闘制御が衝突してる!」


「このままだと暴走形態へ移行するぞ!」


「そんな段階があるのかよ!?」


 マックスが顔を引きつらせる。


 その時だった。


 黒衣の人物の一人が、僅かに顔を上げる。


「……侵食率、危険域へ到達」


 淡々とした声。


「対象個体、自己保存制御を喪失しかけています」


「だから侵食ってなんなんだ!」


 ユリオンが苛立ちを露わにする。


 だが、黒衣の人物は答えない。


 その代わり。


 制御核を見つめながら、低く呟いた。


「同期崩壊が早すぎる……」


 その言葉に、カイは僅かに目を細めた。


 知っている。


 この状況を。


 しかも、予想していた口ぶりだ。


 だが追及する暇はなかった。


 自律兵器の全身から、青白い光が噴き出し始めたからだ。


「うおっ!?」


 マックスが飛び退く。


 銀色装甲の隙間。


 関節部。


 眼部。


 全身の導力線が異常発光している。


 まるで暴走寸前の炉心だった。


 イリスが即座に測定器へ視線を落とす。


「内部魔力圧力、急上昇」


「臨界値を超えます」


「自爆でもする気か、あれ!?」


 グレンが叫ぶ。


 ユリオンが即答した。


「違う!」


「制御核へ強制接続するつもりだ!」


 その瞬間。


 自律兵器が動いた。


 これまでとは比較にならない速度。


 床を砕きながら、一気に制御核へ突進する。


「速ッ!?」


 ヴァレリアが迎撃へ出る。


 剣閃。


 だが。


 自律兵器は、片腕を犠牲に強引に突破した。


 銀色装甲が砕ける。


 それでも止まらない。


「止めろ!」


 カイが叫ぶ。


 マックスが真正面からぶつかった。


 轟音。


 衝撃。


 巨体同士が激突する。


「ぐっ……!」


 押し切れない。


 異常な出力だった。


 床が砕け、マックスの足が沈む。


 靴底が石床を削り、火花が散る。


「こいつ……!」


 マックスの腕が軋む。


 筋肉が悲鳴を上げる。


 それでも、自律兵器は止まらなかった。


 赤い眼光だけが、狂ったように制御核を見つめている。


 まるで。


 そこへ到達することだけが存在理由であるかのように。


 その時だった。


 黒衣の人物が、静かに前へ出た。


 外套が揺れる。


 そして。


 初めて、その人物が両手を広げた。


 空中へ展開される、巨大な古代文字列。


 幾重にも重なる青白い術式環。


 複雑すぎる。


 人間の魔術体系とは、明らかに構造が違っていた。


 ユリオンが目を見開く。


「……そんな規模の制御式を!?」


 黒衣の人物が、感情のない声で告げる。


「強制同期を実行」


「対象制御権、一時接収を試みます」


 次の瞬間。


 広間全体の光が変わった。


 暴走していた導力回路が、一瞬だけ静止する。


 自律兵器の赤い眼光も、僅かに揺らいだ。


 ギギ……と。


 軋むように動きが鈍る。


「今です」


 淡々とした声。


 その瞬間。


 カイが即座に叫ぶ。


「ヴァレリアさん!」


「マックスさん!」


 二人が同時に動く。


 左右からの挟撃。


 剣閃。


 大剣。


 重い衝撃音。


 そして。


 自律兵器の胸部装甲へ、ついに大きな亀裂が走った。


 内部から、激しい青白い光が漏れ出す。


「核が見えた!」


 ユリオンが叫ぶ。


「そこを叩け!」


 だが、その直後だった。


 赤い眼光が、再び激しく明滅する。


 ギィィィィ――!!


 耳障りな警告音。


 黒衣の人物の術式環が、不安定に揺らいだ。


「制御抵抗を確認」


「保持限界まで、残り数秒」


 空気が凍る。


 そして。


 自律兵器の胸部が、ゆっくりと開き始めた。


 内部で、巨大な赤い光が脈動していた。


 それは、心臓のようにも見えた。

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