第六十七話 同期遮断
グレンの短剣が、青白く脈動する導力回路へ叩き込まれる。
瞬間。
広間全体へ、耳障りな高音が響いた。
キィィィィン――!
「っ!?」
グレンが咄嗟に飛び退く。
切断された回路から、暴れるように魔力光が噴き出した。
だが。
次の瞬間。
自律兵器の動きが、明らかに鈍る。
赤い眼光が、不安定に点滅した。
ユリオンが叫ぶ。
「出力低下確認!」
「効いてるぞ!」
マックスが笑った。
「ようやくだ!」
大剣が唸る。
今度の一撃は違った。
ガギィン――!!
重い衝突音。
自律兵器の装甲表面へ、初めて明確な亀裂が走る。
「通った!」
ヴァレリアも即座に追撃へ入る。
鋭い連撃。
関節部へ集中する斬撃。
火花が散り、銀色装甲が軋んだ。
だが。
自律兵器は止まらない。
赤い眼光が再び強く発光する。
ユリオンの顔色が変わった。
「まだ核接続を続けている!」
「完全には落ちてない!」
その時だった。
広間中央の制御核が、大きく脈動する。
ゴォン――!
重低音。
床全体が揺れた。
エルナが息を呑む。
「……魔力流が逆流してます!」
イリスが即座に測定器を確認する。
「制御波形、再上昇傾向」
「外周回路だけでは不足しています」
「中枢側で増幅が継続中です」
ユリオンが舌打ちした。
「制御核そのものが暴走しかけてる……!」
その横で。
黒衣の人物が、静かに制御核を見上げていた。
まるで、何かを確認するように。
カイが、その視線に気づく。
「……何を見ている」
問いかけに、黒衣の人物は僅かに沈黙した。
そして。
「侵食進行率を確認しています」
「この施設は、既に正常状態から大きく逸脱しています」
「侵食とは何ですか」
カイがさらに問う。
だが。
「現在、説明優先度は低い」
淡々とした返答だった。
マックスが叫ぶ。
「いや絶対大事だろそれ!」
しかし次の瞬間。
自律兵器が再び動いた。
今度は、明確だった。
狙いは制御核。
一直線に突進する。
「まずい!」
ユリオンが顔色を変える。
「核へ直接接続される!」
「接続されたらどうなる!」
「この施設ごと暴走する可能性がある!」
広間の空気が凍る。
カイは即座に判断した。
「ヴァレリアさん、進路を止めてください!」
「マックスさんは右側から押し込む!」
「グレンさん、第二回路を探してください!」
「了解!」
全員が同時に動く。
ヴァレリアが真正面から踏み込む。
剣圧。
衝撃。
だが、自律兵器は強引に押し返してくる。
「止まれ……ッ!」
床が砕ける。
ヴァレリアの足元が沈む。
そこへ、マックスが横殴りの一撃を叩き込んだ。
「オラァァッ!!」
轟音。
二人がかりで、ようやく自律兵器の進行が僅かに逸れる。
だが、完全には止まらない。
その時だった。
黒衣の人物の一人が、静かに前へ出る。
そして。
制御核へ向け、掌をかざした。
空中へ広がる古代文字列。
青白い術式光。
ユリオンが目を見開く。
「また制御式を……!」
黒衣の人物が、淡々と告げる。
「補助同期を実行」
「制御波形、一時固定を試みます」
次の瞬間。
制御核の脈動が、僅かに安定した。
暴走していた光輪回転が、一瞬だけ減速する。
「今だ!」
ユリオンが叫ぶ。
「出力が落ちてる間に叩け!」
マックスとヴァレリアが同時に踏み込む。
一閃。
重い金属音。
そして。
自律兵器の膝部装甲が、ついに砕けた。
銀色の巨体が、大きく体勢を崩す。
その瞬間。
赤い眼光が、激しく点滅した。
不規則に。
まるで苦しむように。




