第六十六話 制御干渉
赤い眼光が、黒衣の人物たちを捉える。
次の瞬間。
自律兵器が床を砕きながら突進した。
「っ!」
ヴァレリアが即座に割り込む。
轟音。
激突。
剣と金属腕がぶつかり合い、火花が散った。
だが、押し切れない。
凄まじい出力だった。
「マックス!」
「おう!」
横合いから大剣が叩き込まれる。
重い一撃。
さすがに自律兵器の体勢が僅かに崩れた。
その隙に、黒衣の人物たちが後退する。
だが。
三人とも慌てる様子がない。
むしろ、冷静に兵器の動作を観察していた。
「……おい」
マックスが顔をしかめる。
「こいつら、本当に怖がってねえな」
「感情反応が薄いです」
イリスが測定器を見ながら答える。
「少なくとも通常人類より変動幅が小さい」
「分析してる場合か!」
その瞬間。
自律兵器の腕部が再び変形した。
内部から、青白い光が収束していく。
ユリオンが即座に叫ぶ。
「熱線が来るぞ!」
「散開!」
直後。
閃光。
轟ッ――!!
青白い熱線が広間を薙ぎ払った。
床が溶ける。
石壁が赤熱する。
凄まじい熱量。
エルナが咄嗟に障壁を展開した。
「防御します!」
淡い光膜。
だが、障壁表面が激しく軋む。
「……っ!」
エルナの顔が苦痛に歪んだ。
押し切られる。
その瞬間。
黒衣の人物の一人が、静かに前へ出た。
外套の内側から、細い金属杖のようなものを取り出す。
そして。
空中へ、奇妙な古代文字列が展開された。
青白い光。
複雑な紋様。
ユリオンが息を呑む。
「……古代制御式!?」
黒衣の人物は、感情のない声で呟く。
「制御権限を確認」
「戦闘モード一時停止を申請します」
直後。
自律兵器の動きが、一瞬だけ止まった。
赤い眼光が激しく点滅する。
ギギギ――と軋むような音。
マックスが目を見開く。
「止まった!?」
「完全停止ではありません!」
ユリオンが叫ぶ。
「制御を奪い切れてない!」
その通りだった。
次の瞬間。
自律兵器が強引に動きを再開する。
空中の術式が砕け散った。
黒衣の人物が、僅かによろめく。
「制御拒否を確認」
「侵食率が想定以上です」
「侵食?」
カイが反応する。
だが、その問いに答える余裕はなかった。
自律兵器が、今度は制御核方向へ向き直る。
赤い光が、さらに強く脈動していた。
「まずい!」
ユリオンが顔色を変える。
「核へ接続される!」
「接続されるとどうなる!」
「暴走出力がさらに上がる!」
嫌な沈黙。
つまり。
もっと強くなる。
「最悪じゃねえか!」
マックスが叫びながら踏み込む。
ヴァレリアも左右から斬撃を重ねる。
火花。
衝撃。
だが、自律兵器は止まらない。
その時だった。
「カイさん!」
イリスが声を上げた。
「外周回路の一部に負荷集中を確認!」
「恐らく、ここが増幅点です!」
空中へ投影された光線図。
その一角だけ、異常なほど光が集中している。
ユリオンが即座に理解する。
「そこを落とせば出力を削げる!」
「グレンさん!」
「ああ、見えてる!」
グレンが壁面へ走る。
だが。
途中で、自律兵器の赤い視線が向いた。
「チッ!」
迎撃が来る。
そう思った瞬間だった。
黒衣の人物が、再び前へ出る。
静かに片手を上げる。
空中へ展開される古代文字列。
次の瞬間。
自律兵器の動きが、再び僅かに鈍った。
「今です」
感情のない声だった。
グレンが一気に踏み込む。
短剣が閃く。
狙いは、脈動する導力回路。
「――切るぞ!」
刃が振り下ろされた。




