第六十五話 迎撃戦
銀色の人型機構が、一瞬で間合いを詰めた。
速い。
巨体とは思えない踏み込みだった。
「散れ!」
カイの声が飛ぶ。
直後。
自律兵器の腕が横薙ぎに振るわれる。
轟音。
空気そのものを叩き潰したような衝撃が広間を走った。
ヴァレリアが即座に前へ出る。
「ッ!」
抜き放った剣で受け流す。
だが、完全には殺しきれない。
凄まじい重量。
床を滑りながら、ヴァレリアが歯を食いしばる。
「……力が重い!」
その横を、マックスが飛び込んだ。
「なら、こっちも力勝負だ!」
大剣が唸る。
全力の斬撃。
だが。
ガギィン――!!
金属音。
浅い。
刃が装甲表面で止められる。
「硬っ!?」
「外装強度、通常鋼材を大きく上回っています!」
イリスが即座に測定器を確認する。
「古代導力金属の可能性」
「正面突破は非効率です」
「早く言え!」
マックスが叫ぶ。
その瞬間。
自律兵器の赤い眼光がマックスへ向いた。
「マックスさん、下がって!」
エルナが即座に魔法を展開する。
淡い光。
防御障壁。
直後、自律兵器の拳が叩き込まれた。
衝撃。
障壁表面へ亀裂が走る。
エルナの表情が強張った。
「一撃が重すぎます……!」
その隙に、グレンが側面へ回り込む。
「関節は――」
短剣が閃く。
狙いは膝部。
だが。
キィン!
火花。
「……こっちも硬いか!」
自律兵器がグレンへ反応する。
腕部が変形。
内部から細い砲口のようなものが露出した。
ユリオンの顔色が変わる。
「伏せろ!」
次の瞬間。
青白い閃光が走った。
轟ッ――!!
熱線。
床が抉れ、石材が赤熱する。
「うおっ!?」
マックスが飛び退く。
グレンも転がるように回避した。
「なんだ今の!」
「古代術式兵装だ!」
ユリオンが怒鳴る。
「対人戦闘用じゃない!」
「本気で防衛兵器だぞ!」
その時だった。
黒衣の人物が、静かに制御核を見上げる。
「制御権喪失率上昇」
「自律戦闘モードへ移行しています」
「他人事みてえに言うな!」
マックスが怒鳴った。
だが、黒衣の人物は反応しない。
代わりに、広間全体へ視線を巡らせる。
その動きに、カイは気づいた。
探している。
何かを。
「……ユリオンさん」
カイが低く声をかける。
「止める方法は?」
ユリオンは高速で制御核を見ていた。
光輪回転。
導力回路。
同期波形。
額には汗が浮かんでいる。
「核そのものを壊すのは不味い!」
「連鎖暴走の危険がある!」
「なら?」
「制御波を落とす!」
ユリオンが広間外周を指差した。
「外周導力回路!」
「あれが暴走増幅してる!」
「遮断できれば、出力を落とせるはずだ!」
カイは即座に判断した。
「ヴァレリアさん、マックスさん」
「敵を引きつけてください」
「グレンさんは回路確認」
「リリアさん、援護魔法」
「エルナさんは防御維持を」
短く、的確な指示。
全員が即座に動く。
マックスが笑った。
「ようやくいつもの感じだな!」
「死ぬ気で頼みます」
「軽いなぁ!?」
言いながらも、マックスは再び踏み込む。
大剣が火花を散らす。
ヴァレリアも左右から連撃を叩き込む。
二人の連携で、ようやく自律兵器の動きが鈍った。
その隙に、グレンが壁面回路へ飛びつく。
「これか!」
青白く脈動する導力線。
だが、触れた瞬間。
「っ!?」
強烈な反発。
グレンが舌打ちする。
「魔力流が暴れてる!」
「迂闊に切れば誘爆するぞ!」
ユリオンが叫ぶ。
「だから調整しろと言ってる!」
「簡単に言うな!」
その時だった。
静かだったイリスが、一歩前へ出る。
「……私が補助します」
測定器を回路へ向ける。
無数の光線が空中へ展開された。
「流量偏差を計測」
「安全域を算出します」
ユリオンが一瞬だけ目を見開く。
そして、すぐに頷いた。
「やれ」
イリスは淡々と操作を続ける。
その横顔を、マックスが戦いながらちらりと見る。
「戦ってる時まで冷静かよ……」
だが次の瞬間。
自律兵器が、突然動きを変えた。
赤い視線が。
今度は、制御核へ近づいていた黒衣の人物たちへ向く。
広間の空気が、さらに張り詰めた。




