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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ
第二章 古代防衛機構編

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第六十四話 黒衣の来訪者

 広間に、緊張が走った。


 黒い外套を纏った三つの人影。


 顔は深くフードに隠れ、表情は見えない。


 だが。


 その場に立った瞬間、空気が変わった。


 マックスが低く呟く。


「……ただ者じゃねえな」


「ああ」


 ヴァレリアも短く同意する。


 殺気は薄い。


 だが、妙な威圧感があった。


 まるで空間そのものがズレているような感覚。


 グレンが静かに距離を測る。


「足音が軽すぎる」


「気配も妙だ」


 イリスが測定器へ視線を落としたまま、小さく目を細める。


「魔力反応、通常人類と差異があります」


「差異?」


 リリアが反応する。


「波長が不安定です」


 イリスは測定器を見つめたまま続けた。


「……うまく説明できませんが、揺らいでいます」


 その時だった。


 三人の中央に立つ黒衣の人物が、一歩前へ出る。


 低い声だった。


「その施設への干渉を中止していただきたい」


 共通語。


 だが、僅かに発音が違う。


 ユリオンが鋭く目を細める。


「……何者だ」


 黒衣の人物は、わずかに沈黙した。


 そして。


「管理者代理とでも言っておきましょう」


 淡々とした声が返る。


「良く聞いてください」


「現在、当該中継施設は不安定状態にあります」


「外部干渉は推奨できません」


 機械のように抑揚の薄い口調だった。


 マックスが眉を寄せる。


「質問に答えてねえぞ」


「所属を聞いてる」


 だが、黒衣の人物は答えない。


 代わりに、広間中央の制御核へ視線を向けた。


「同期率低下を確認」


「補助制御は継続中」


「だが限界が近い」


 その言葉に、ユリオンの表情が変わった。


「……待て」


「お前たち、この施設を理解しているのか?」


 黒衣の人物は、僅かに制御核へ視線を向ける。


「完全ではありませんが」


 感情の読めない声だった。


 カイは黙って相手を観察していた。


 戦う気配は薄い。


 だが、警戒はしている。


 こちらを敵視しているというより――


 測っている。


 そんな印象だった。


「目的は?」


 カイが問う。


 黒衣の人物は、一拍置いて答えた。


「防衛網の維持です」


「つまり、王国結界機能の継続ということです」


 空気が止まる。


 ユリオンが思わず声を漏らした。


「……王国結界だと?」


 その言葉に、リリアとエルナも顔を見合わせる。


 王国結界。


 そんな単語は、一般の冒険者には馴染みがない。


 だが、ユリオンの反応を見る限り、単なる比喩ではない。


 カイが静かに問う。


「それが、この防衛網の本来の役割ですか」


 黒衣の人物は否定しなかった。


「当該施設群は、広域結界維持機構の一部です」


「現在、複数拠点で同期不全が発生しています」


 ユリオンが険しい顔で呟く。


「……やはり全国規模か」


 その時だった。


 制御核の光が大きく脈動した。


 ゴォン――!


 重低音。


 広間全体が震える。


 イリスが即座に測定器へ視線を落とす。


「制御波形急変!」


「同期率さらに低下!」


 ユリオンが舌打ちした。


「まずいな……!」


 中央装置の光輪回転が加速する。


 青白い光が暴走するように空間を走った。


 壁面の導力回路が、一斉に明滅する。


 空気が焼けるような魔力臭。


 エルナが顔をしかめた。


「……魔力が溢れてる」


「制御しきれていません!」


 その瞬間。


 広間外周の壁面が、次々に発光を始めた。


 エルナが顔を上げる。


「――起動反応!」


 次の瞬間。


 壁面の一部が開いた。


 中から現れたのは。


 銀色の人型機構。


 全身を古代金属で覆われた、自律兵器だった。


「防衛機構か!」


 ヴァレリアが即座に剣を抜く。


 だが。


 中央の黒衣の人物が、静かに口を開いた。


「本来なら停止状態のはずでした」


「制御悪化が予測以上です」


 マックスが顔を引きつらせる。


「……おい」


「つまり、お前らも想定外ってことか?」


 黒衣の人物は、淡々と答えた。


「言ったはずです」


「完全に理解している訳ではありません」


 その直後。


 自律兵器の目が、赤く発光した。


 ギィン――と金属音が響く。


 次の瞬間。


 床を砕く勢いで、高速踏み込み。


「速――ッ!」


 グレンが叫ぶ。


 銀色の巨体が、一瞬で間合いを詰めてきた。


「来るぞ!」


 その声と同時。


 戦闘が始まった。


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